東京都中央区にある築地市場の移転予定地とされる江東区豊洲の土壌汚染が、粘性土層にまで浸透していることがわかった。都はこれまでこの土層について「水をほとんど通さないため、下に向かって汚染が進む可能性は低い」として調査をせず、汚染を認めていたのはこの土層の上の土壌までだった。粘性土層への汚染の発覚で、汚染対策や移転計画の議論に影響を及ぼす可能性がある。
朝日新聞の取材に対し、都は粘性土層への汚染を認めながらも新たな調査を否定。汚染対策の工法などを近く発表し、14年度の豊洲での開業を目指す方針を変えていない。
築地市場の移転先は豊洲地区の埋め立て地。約40ヘクタールの予定地は東京ガスの工場跡地で、土壌から最大で環境基準の4万3千倍のベンゼンや930倍のシアン化合物などが検出され、化学物質による汚染が問題になっている。
朝日新聞の取材で新たに汚染が確認されたのは有楽町層と呼ばれる沖積層。都は、この地層の上部について「水をほとんど通さない粘性土が連続している不透水層で、汚染が最上部より下に進む可能性は低い」として調べてこなかった。
ところが、東京ガスが02年まで実施した汚染状況調査で環境基準を超えるベンゼンなどが検出された地点の深さと、都が想定する粘性土層の最上部の深さなどを比較してみると、複数の地点で最上部より深い位置から汚染物質が検出されていたことが判明。この比較について確認を求めたところ、都も2地点で「粘性土層の最上部より深い位置も汚染されている」と認めた。
移転予定地の汚染対策を検討するために都が設置した専門家会議は昨年7月、(1)予定地の土壌をガス工場操業時の地表から地下2メートルまですべて入れ替える(2)地下2メートルより下も、さらに下の粘性土層の最上部まで調査して土壌汚染を環境基準以下に処理する、などと提言している。新たに汚染が確認された粘性土層について、都は「今でも汚染の可能性は低いと認識しており、調査するつもりはない。2地点は汚染対策の際に環境基準以下に処理することが考えられる」としている。
汚染物質をほとんど浸透させないとされる粘性土層について、都は公開された専門家会議や都議会で「予定地全体に連続している」と説明してきたが、粘性土層が確認できなかった地点もあることを公表していなかった。(香川直樹)
〈NPO法人日本地質汚染審査機構理事長を務める楡井久・茨城大名誉教授の話〉 汚染物質が粘性土層上端より下に深く進んでいるか調査することは技術的に可能だ。その必要があるかも含め、都は推進、反対にかかわらず、すべての立場の人に参加してもらい、多くが納得するまで十分に調査結果などのデータを出し、科学的な議論をすべきだ。