不法投棄を阻むため、赤鳥居の「目玉」が道ばたでにらみを利かせる=さいたま市緑区
市民フォーラムがつけた愛称は「鳥目ちゃん」。不法投棄に目を光らせる=さいたま市緑区
製作した本間正博さん(左)ら見沼市民フォーラムのメンバー=さいたま市緑区
大きな一つ目のついた赤鳥居が埼玉県南部の大規模緑地「見沼田んぼ」周辺でにらみを利かせ、散策者をドキリとさせている。実はこれ、ごみの不法投棄防止用だ。人の心理を突く鳥居型が「進化」した珍作だが、実際、ごみの被害も激減しているという。
さいたま市緑区の田園地帯。狭い道ばたに、高さ約1メートルの鳥居のミニチュアが立つ。2本の柱の真ん中で黒い目がギョロリ。同じ物が周辺に50〜60基点在している。そばに説明書きはなく、道行く人の間では「何かのまじない?」「暗闇に浮かび上がり、びっくりする」と話題に。
設置したのは、見沼田んぼ周辺の住民ら約60人でつくる市民団体「見沼市民フォーラム」(新井和芳会長)の人たちだ。
94年に結成。清掃活動やホタルの飼育・観賞会などを続けてきた。しかし、ごみの不法投棄は大きな悩み。家庭ごみだけでなく、家具や建築廃材が毎年、緑区内だけで数十カ所にわたって捨てられた。ダンプカーが、道ばたのくいを壊して空き地に入り込むケースもあったという。
「看板も監視カメラも効果がなかった」と新井会長(67)。そこで3年前、報道で「鳥居」効果を知ったフォーラム幹事で修理工場を営む本間正博さん(66)が目玉つきを手作りし、投棄場所に試しに立てた。すると、撤去と投棄のいたちごっこだったのがなくなったという。
本間さんは「『見ているぞ』と念を込めたらあんな形に。神聖な鳥居には恐れ多いが、相手の良心を刺激する効果があるかも」。昨夏に約100基を作り、メンバーが投棄の定点監視を続ける場所などに取り付けている。
鳥居は、全国の珍妙な風景を紹介するテレビ番組でも取り上げられた。「景観上、本当はない方が良いが、首都圏に残された貴重な緑地を守るため、住民や訪れる人の意識を高めていきたい」と新井さんらは話している。(奈良有祐)