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「気候の危機、共同で挑戦を」潘基文国連事務総長が寄稿

2009年9月19日22時7分

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写真潘基文・国連事務総長

 ニューヨークで22日から開かれる気候変動ハイレベル会合(気候変動サミット)を前に、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長が朝日新聞に寄稿した。要旨は以下の通り。(原文は英語)

     ◇

 私は北極を訪ね、わずか数年前まで荘厳で巨大な氷の塊だった氷河の残骸(ざんがい)を見た。それは崩れ落ちていた。ゆっくり溶けたのではない。崩れ落ちたのだ。私は世界最北端の居住地から極地の氷の端に到着するため、船で9時間旅した。あと数年もすれば、同じ船が北極点まで航海できてしまうかもしれない。

 私たちにとって北極は炭坑のカナリアだ。その変化は速く、地球の温暖化を加速している。温室効果ガスの排出は増え続けている。

 私たちは今、行動を起こさなければならない。

 9月22日、国連に世界の指導者約100人を集めた気候変動サミットを開く。国家や政府の首脳たちが集う史上最大規模の首脳会合だ。それは、気候の危機を、私たちにとってより安全で、よりクリーンで、持続可能な環境に配慮した成長のための機会に転換しようという共同の挑戦だ。

 鍵は(国連気候変動枠組み条約締約国会議が開かれる)コペンハーゲンが握る。そこで12月、新しい合意に向けた交渉がある。私のメッセージは簡潔だ。世界は公正で、効果的で、志あふれる合意を求めている。それができなければ、何世代にもわたってツケを払うことになるだろう。

 気候変動は私たちの時代にとって、開発、平和、繁栄をめぐるグローバルな方程式を書き換えるほど地政学的な問題だ。それは経済を脅かす。食糧や水の供給を枯渇させたり、紛争や移民を誘発したり、あるいは脆弱(ぜいじゃく)な社会を不安定化させたりする可能性がある。政府さえ転覆させかねない。

 求められているのは、最高レベルでの政治的な意志だ。

 私たちは目先の政治的なご都合主義ではなく、この惑星にとっての長期的な利益を優先しなければいけない。

 コペンハーゲンで、細かなところまですべてを解決する必要はない。しかし、すべての国々が、その能力に見合った共通で長期的な目標に取り組む合意でなければ、成功とはいえない。

 すべての国が排出を減らすため最善を尽くし、先進国は目標を強化、途上国も貧困から脱却する戦略の一環として環境に配慮した成長を加速しなければならない。

 今年のコペンハーゲンは、私たちが歴史の正しい側に立つ力強い機会だ。それは、災厄を避ける機会にとどまらない、世界経済の根本的な転換に着手するための機会でもある。

 今、私たちの帆は、新しい政治の風を受けている。この瞬間をとらえ、私たちは気候変動に果敢な行動をとらなければならない。

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