「おさかなポスト」に入っていたシクリッドの仲間(アフリカ原産)=川崎市多摩区、竹谷俊之撮影
「おさかなポスト」に入っていたガーパイク(北米原産)=川崎市多摩区、竹谷俊之撮影
「おさかなポスト」に入っていたピラニア(南米原産)=川崎市多摩区、竹谷俊之撮影
「おさかなポスト」に入っていたディスカス(南米原産)=川崎市多摩区、竹谷俊之撮影
多摩川で捕獲されたレッドテールキャット(南米原産)=川崎市多摩区、竹谷俊之撮影
ペット用などで飼われていた外国産の魚が、日本の河川に放され、生態系を脅かしている。アマゾンになぞらえ「タマゾン川」とも呼ばれる首都圏の多摩川は典型例だ。名古屋市の川にも北米原産の大型外来魚が生息する。世界自然遺産をめざす小笠原諸島も例外ではない。国連地球生きもの会議の作業部会は21日、外来種の取引の管理・監視体制を検討する専門家集団の設立で合意した。
「熱帯魚にも命があるのにいらなくなれば捨ててしまう」。多摩川で外来魚の監視を続ける川崎河川漁協の山崎充哲(みつあき)さん(51)はそう嘆く。
外国産のナマズ類、熱帯魚のグッピーやエンゼルフィッシュ――。多摩川でこれまでに見つかった外来魚は、200種を超す。
「下水処理水の影響で、冬でも水温が24度くらいの場所もある。グッピーは越冬して繁殖している」と山崎さん。魚に病気を広げるウイルスや細菌が外来魚と一緒に侵入していないか心配だという。
放流行為を防ごうと、山崎さんらが5年前に川崎市内に設置した「おさかなポスト」という専用水槽には、昨年までに3万匹以上、300種近くの魚が持ち込まれた。
大きくなり飼えないという理由のほか、最近は失職などでお金がなくなり手放す人も目立つという。魚は飼育を希望する「里親」に渡す。
10月中旬の夕刻。「里親」を志望する愛知県内の20歳代の男性が、車で5時間かけて山崎さんの家へやってきた。「ネットでポストを知った。魚には何も罪はない。かわいそうだから引き取ります」
全長が50センチを超す外来魚ガーパイクなど5匹を受け取った。自宅で飼うという。
生きもの会議が開かれている名古屋国際会議場(名古屋市熱田区)。そのすぐ脇を流れる堀川でも、釣り人に人気のオオクチバスや観賞用のアリゲーターガーなど5種の外来魚が確認されている。
名古屋市は今年5月、「外来生物調査隊」を発足させた。30人のボランティアでつくる。ワニガメや外来魚のアリゲーターガーなど、人に危害を与える恐れがある外来種を発見すれば市に連絡し、専門家が捕獲する。7月、堀川でアリゲーターガーを確認したが、捕獲はまだだ。
熱帯魚のグッピーは、太平洋に浮かぶ小笠原諸島の川にも侵入している。小笠原自然文化研究所の佐々木哲朗研究員(34)は「父島ではグッピーが繁殖、川を群れになって泳ぐ姿もみられる」と話す。
神奈川県立生命の星・地球博物館の瀬能宏専門研究員は「各地で続く放流を止めるため、飼育の登録制など法律による規制をすべき時期に来ているのではないか」と言う。
21日の生きもの会議作業部会で、締約国が設立に基本合意した専門家集団は、ネット取引を含め、外来種取引の監視や規制の方法について検討し、結果を次回の締約国会議に報告する。(久土地亮、山本智之)