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美しいが害蝶 県内全市町村でアカボシゴマダラ確認

2010年10月30日0時39分

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写真拡大近江さんが採集したアカボシゴマダラ。左がオス。右は一回り大きいメス

 美しいけれど「害蝶(ちょう)」。タテハの仲間で外来種のアカボシゴマダラが今年9月末までに、県内すべての市町村で確認され、隣接の山梨県と静岡県でも新たな目撃例があったことがわかった。これまで藤沢市を起点に東京都区部と埼玉県南部に生息域が広がっていたのが、西にも広がっている。研究者は「在来種に大きな悪影響を与える公算が大きい。(特定外来生物の)魚のブラックバスと同じ状況が起きている」と危機感を強めている。

 アカボシゴマダラは亜熱帯のベトナムから、中国、冷温帯の朝鮮半島まで広く分布。国内在来種のゴマダラチョウにない鮮やかな赤い斑紋が特徴だ。また大陸アカボシとは斑紋模様の違う固有亜種が奄美諸島にいる。

 1998年に藤沢市辻堂で確認されて以来、徐々に横浜市栄区や戸塚区、鎌倉市、川崎市から多摩川を越え東京都区部、埼玉県南部へと関東で繁殖地が広がる。国外から生体が持ち込まれたというのが研究者の見方で、マニアによる「ゲリラ放虫」らしい。アカボシは繁殖力が強く、今では関東地方ではゴマダラチョウより数が多いとされる。

 各地のメンバーによるアカボシゴマダラの目撃、採取情報をまとめている研究団体の「相模の蝶を語る会」は、昨年まで情報のなかった県西部の南足柄市や箱根、山北町などの目撃、確認が今夏次々寄せられ、生息域が県全域になったことを確認した。

 さらに山梨の山中湖村、静岡では熱海市、小山町、富士山をまわって富士宮市でも。

 語る会の代表で日本大学生物資源科学部教授の岩野秀俊さん(58)は「会員からの速報で中井、開成町も含め、アカボシの神奈川県内での空白がなくなった。西へ繁殖、定着が広がっていることが考えられる」と指摘。

 真鶴町岩の近江澄大さん(81)は見たことのないチョウが庭や自宅前にくるので、9月19日を初めに10月半ばまでに雄雌5匹を採集した。捕らえられなかったが南足柄市の大雄山でも見たという。真鶴、湯河原町の目撃は昨年が初めてだったが、近江さんによって繁殖が確認された。

 外来アカボシは05年に要注意外来生物に指定、法律で輸入が禁止された。この時、共に指定されたのがアゲハの仲間のホソオチョウ(朝鮮半島生息)と魚のブラックバス。

 アカボシと在来ゴマダラの幼虫が食べるのはエノキの葉。国蝶・オオムラサキと食樹が同じ。食樹の取り合いに強いアカボシによってオオムラサキが衰退していく可能性が懸念されている。

 近江さんのチョウを確認した県立生命の星・地球博物館(小田原市)の学芸員で昆虫の分類・分布地理学専門の高桑正敏さん(62)は、「同じ生物が土地によって住んでいたり、いなかったりする『自然史』を尊重してほしい。在来種同士は長い時間をかけて共存共栄している」として、「海外から生きた生物を持ち込んではいけない、放してはいけない。ペットの飼い主は無責任なことはしないで」と訴える。(岡田宙太)

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