長崎県五島列島で見つかった枝状サンゴ「スギノキミドリイシ」=国立環境研究所提供
海水温の上昇により日本周辺で起きているサンゴの北上が、最大で年間14キロのペースで進んでいることが国立環境研究所などの調査で分かった。千葉県館山市沖など、過去にサンゴが見られなかった海域でダイバーが目撃する例が増えているが、分布拡大の実態はつかめていなかった。
日本近海の冬季の海水温は過去100年間で1.1〜1.6度上昇した。地球温暖化の影響とみられる。
同研究所の山野博哉主任研究員らは、水深10メートルより浅い海底に分布する9種類のサンゴを選び、館山市沖や長崎県五島列島など10地域で分布状況を調査した。さらに、過去80年分の学術論文を精査し、各地域での分布の変化を調べた。
その結果、4種類のサンゴで、分布域の北上が確認できた。最も北上の速度が速かった熱帯性の枝状サンゴ「スギノキミドリイシ」は、鹿児島県種子島で1988年に確認後、2008年に北に約280キロ離れた五島列島にまで広がった。年間14キロのペースで北上した計算になる。
このまま海水温の上昇が続けば、熱帯性のサンゴが日本近海の温帯域に進出し、生態系が大きく変わる可能性がある。同研究所は新年度から、日本周辺8地域の60以上の地点で、10年間かけてサンゴの分布の変化を調べる予定だ。(中村浩彦)