パネル討論 私たちはどうして間違えるのか ― 世界の多様性をデータから理解する|2019講演記録|朝日地球会議2019|朝日新聞

パネル討論
私たちはどうして間違えるのか ― 世界の多様性をデータから理解する
ロンドン大学キングスカレッジ政策研究所長 教授 ボビー・ダッフィー
大阪大学大学院人間科学研究科教授 三浦 麻子
コーディネーター 朝日新聞GLOBE編集長 望月 洋嗣

「都合いい情報、信じやすい」認識を

ボビー・ダッフィーさん

ダッフィー:万里の長城は、宇宙から見えるでしょうか。正解は、見えません。万里の長城は幅が一般の住宅ほどしかなく、見えっこないのです。ところが、世界中でこの質問をすると、半分以上の人が「見える」と答える。なぜでしょうか。

人間はしばしば深く考えず、早とちりをします。「万里の長城は宇宙から見える」とする文献を2度、3度と見せられると、信じ込んでしまいます。

「これが真実であってほしい」という情緒的な理由で人は答えを見誤ります。宇宙から見えるような建造物を人間は造ったのだと思いたいのです。人間の認識は信じられないほど間違っています。どうすればよいでしょうか。

自分が普通であるとは思わないことです。極端な考えや意見に注目し過ぎないことも大切です。人はマイナスな情報に注目しがちですし、過去を美化して未来を悲観する傾向もあります。意識してこうしたフィルターを外しましょう。

一方、バイアスや偏見が全てを支配しているわけではありません。人は認識を改められます。説得によってその人の意見や決定は変わるのです。

三浦 麻子さん

三浦:人々が情報をどうやりとりし、行動にどう影響を与えるのかを研究しています。人間は、自分にとって都合がいい情報を信じやすい。その方が平常心や自己肯定感を保つことができます。デマやフェイクニュースは、自分たちが受け入れやすい情報だから信じているのです。そうした情報の発信者は、意図的に内容を調整して受け入れやすいようにしているのです。

私たちが現実を理解するために入手するマスメディアの情報は「正しい」という前提に立っています。しかし、その正しさでさえ近年は危うい。マスメディアのみならず、政府機関の発表すらニセだと、正しいという前提が崩されてしまいます。マスメディアは、発信する情報が「正しいはず」と受け止められるよう努力していくことが必要ではないでしょうか。

望月:米大統領選で、フェイスブックを利用して有権者への情報操作をした疑いが米国で報じられました。ビッグデータが民主主義を破壊するという問題についてどう見ますか。

ダッフィー:指導者はAI技術によって、特定の個々人にあつらえたメッセージを発信できるようになっています。ほかの有権者は、指導者が彼らに何を言っているか知りようがない。非常に危険です。法律や規制が追いつかないぐらいのペースで技術が進化しています。私たちが合意できる原理原則をどう保護するかが問われています。

三浦:日本人はフェイクに抵抗しにくいかもしれませんが、決めたことを変えるのも苦手なので、欧米と同じようになるかは疑問です。

望月:我々も民主主義社会を支える一員として、大切な心構えを教えていただきました。

<ボビー・ダッフィー> ロンドン大キングスカレッジ政策研究所長・教授。1972年生まれ。ケンブリッジ大院修了。英首相の戦略ユニットのアドバイザー、世論調査会社イプソス・モリのマネジング・ディレクターなどを経て現職。

<三浦麻子> 社会心理学者。コミュニケーションやインタラクションが新しい「何か」を生み出すメカニズムの解明に関心を寄せる。共著に「プロ野球『熱狂』の経営科学」など。

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