パネル討論「北アルプス 森と水の恵み」|2019講演記録|朝日地球会議2019|朝日新聞

パネル討論
「北アルプス 森と水の恵み」
長野県大町市長 牛越 徹
俳優 釈 由美子
コーディネーター 朝日新聞山岳専門記者 近藤 幸夫

癒やしと元気、登山がくれる

牛越 徹さん

国土の7割を森林が占める日本は、清らかで豊富な水資源がある世界でも珍しい国だ。北アルプスがそびえる長野県大町市の市長・牛越徹さんと、山好きの俳優・釈由美子さんが、森林や清流がもたらす恩恵や人との関わりについて語り合った。

大町市は、市街地が標高700~800メートル、最高地点は槍ケ岳の3180メートルという「山のまち」。牛越さんは「北アルプス一番街と自称している」とPR。立山黒部アルペンルートの長野県側の入り口であり、山岳観光の活用例を紹介した。さらに、「北アルプスが巨大な水がめとなっていて、大町の主力の水道水源が四つあり、全て天然の湧水(ゆうすい)」と述べ、農業や工業、発電に豊富な水資源を使っている例を挙げた。

市内には全国でも珍しい山岳専門の市立大町山岳博物館(1951年設立)があり、国の特別天然記念物ライチョウの人工飼育にも取り組んでいる。「山の恵みに感謝して自然と人が共生する地域社会をつくろうと、開館50周年を機に山岳文化都市宣言をした」


釈 由美子さん

釈さんは、登山者の立場から、「森と水の恵み」を語った。最近は「山ガール」に象徴される登山ブームが続いている。「北アルプスの稜線(りょうせん)歩きからの眺めも気持ちがいいが、樹林帯の方が好き」と言い、「森林のにおいや潤いに癒やされ、元気がもらえる」と森の魅力を語った。

登山では、稜線に上がると水場は山小屋などに限られる。樹林帯の湧き水や沢の水について「命の水と思うくらい体にしみてありがたい」。登山者として水源地を守るため、「ゴミは持ち帰る。登山用のストックにキャップをつける。登山道以外に入って行かないなど細かな気遣いをして、山に感謝する気持ちを忘れず登りたい」と提言した。

コーディネーターから

大学は農学部林学科で学んだ。パネル討論をきっかけに、約40年前に受けた講義の記憶がよみがえった。教授の講義は「日本の森林の価値は、木材だけの資産だと他の産業にかなわないが、治山・治水面では膨大だ。保水能力が高い森林に代わってダムだけで治水をすれば、建設費や維持費は計り知れない。森林の価値を見直す時代が、必ず訪れる」という趣旨だった。

大町市を訪れるたび、鹿島槍ケ岳など間近に望む北アルプスの迫力に圧倒される。全国的な人気を集める山岳観光の活用だけでなく水道水に利用される豊かな湧水が住民の生活に直結している。北アルプスは多くの川の水源地でもあり、森の保全の重要性を痛感した。(コーディネーター・近藤幸夫)

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