パネル討論「ブロックチェーン、ビッグデータの技術は医療・健康分野をどう変えるか」|2019講演記録|朝日地球会議2019|朝日新聞

パネル討論
「ブロックチェーン、ビッグデータの技術は医療・健康分野をどう変えるか」
iRespond 副代表(アジア太平洋担当) テキサス・クリスチャン大学客員研究員 ラリー・ドース
京都大学医学部附属病院 医療情報企画部長・病院長補佐 京都大学大学院医学研究科・情報学研究科教授 黒田 知宏
コーディネーター  朝日新聞編集委員 社会福祉士 浜田 陽太郎

AI「先制医療」に光

ラリー・ドースさん

情報技術の発展は、医療・健康分野にも大きな変革を迫る。カギを握るのはデータの活用。病歴や検査結果はセンシティブな個人情報だけに、プライバシー保護が重要になる。「ブロックチェーン、ビッグデータの技術は医療・健康分野をどう変えるか」と題した討論では、課題と最先端の事例が紹介された。

国際NGO「iRespond」は、難民などの社会的弱者に電子的なID(身分証明)を付与する活動をしている。眼球の虹彩(こうさい)パターンという生体情報を12桁の番号に変換し、診療録の管理などに活用する。


黒田 知宏さん

アジア太平洋地区を担当するラリー・ドースさんは「プライバシーの保護をシステムのデザインに組み込むべきだ」と話し、生体情報に個人情報を直接ひもづける危険性を指摘した。

そのうえで、ブロックチェーンの技術を使ってIDを管理し、本人が同意した情報だけにアクセスできる仕組みをつくれば、プライバシーを保護しつつ、第三国に移住した難民がキャンプで受けた検査の結果を活用できると説明。スマートフォンを使い、個人がデータを管理する「デジタル・ウォレット」についても映像を使って紹介した。

日本では、国民皆保険制度で、膨大な医療データが集まっている。京都大学教授の黒田知宏さんは、ビッグデータを活用するため、2017年に施行された次世代医療基盤法について説明。匿名化するなどの手順を経て提供する「情報銀行」の仕組みを紹介した。

こうしたデータを使ってAI(人工知能)を開発すれば、病気の予測に基づく「先制医療」が可能になるという見通しも示した。「データをどこに提供したらどんなサービスが受けられるのか、どんな使い方をしてはいけないのか、法律やルールが必要になる」と強調した。

コーディネーターから

世界では、難民を含めて11億人以上の人が公式なIDを持たないと推計されている。身分証明なしには、法的な保護や公的なサービスから排除されてしまう。

この問題では、指紋や虹彩などの生体情報を使ったID発行システムが解決に資する可能性がある。ただし、膨大な個人情報をひもづけられた状況で、IDが悪用される不安は大きい。

「様々な新技術が誕生し、日々変わりゆく世界で、僕ら一人ひとりが意識しないといけないことは何なのか?」。参加者からは、こんな質問が寄せられた。個人情報の保護と活用のバランスは、今という時代に一人ひとりが考えるべき大切な課題であることが、今回の議論から浮き彫りになったのではないか。(コーディネーター・浜田陽太郎)

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