パネル討論「食品ロス 知恵を持ち寄り削減のために動く」|2019講演記録|朝日地球会議2019|朝日新聞

パネル討論
「食品ロス 知恵を持ち寄り削減のために動く」
ジャーナリスト 食品ロス問題専門家 博士(栄養学) office 3.11代表取締役 井出 留美
料理研究家 おいしいもの研究所代表取締役 土井 善晴
生活協同組合ユーコープ 代表理事理事長 當具 伸一
コーディネーター 朝日新聞編集委員 長澤 美津子

無駄なくす 小さなことから

井出 留美さん

まだ食べられるものが、大量に捨てられている。食品ロスはなぜ生まれるのか。討論はその背景を掘り下げることから始まった。

「食品ロスの削減は、働き方改革でもあります」と、食品ロス問題専門家の井出留美さんは表現する。

食べものの見た目に厳しい日本は、収穫しても規格外で出荷されない一次産品が多くある。消費者の便利のために店は棚から商品を切らさず、より新しいものを求めて賞味期限内であっても撤去してきた。「捨てられるものを最初から作らなければ、働く人はもっと楽だったし、資源も無駄にならなかった」と、井出さんは発想の転換を促す。


土井 善晴さん

料理研究家の土井善晴さんは「食べられないほどのものを、買ってはいませんか」と会場に問いかけた。

食べものにストレスや不安の解消を求めたり、加工食品に頼る暮らしをしたりする人が増えた。「人間が料理をしなくなった影響は大きい」と土井さんは感じている。「子どもも一人暮らしの人も、ご飯とみそ汁が作れれば自分に自信がつく。無駄を出す暮らし方は選ばなくなるでしょう」


當具 伸一さん

討論の後半は、食品ロス削減を前に進めるための新しい技術の活用や、環境づくりへの提案が続いた。

横浜市に本部のある生協「ユーコープ」理事長の當具(とうぐ)伸一さんは、地域の12団体と「フードバンクかながわ」を1年半前に始めた。食品ロスになる前に必要な人に届ける取り組みで、個人が家庭で余ったものを持ち寄る活動を重視する。「社会の一員として役立ちたいという気持ちが集まる。継続には組織も必要だが、互いの顔の見えるネットワークができると強い」

「大きなことは、小さなことから」という井出さんの言葉の通り、だれもが当事者であり、改革者になれるとの考えで3人は一致した。

コーディネーターから

食品ロスと共に失っているのは、人間としての幸せではないか。それが今回の討論を通して発信されたメッセージだと思う。

安全な食べものと水が手に入る日本の状況は貴重な一方で、一瞬の不便さえ感じないように組み上げたフードチェーンが、地球環境と働く人に重い負担を強いている。そのひずみが、食品ロスとして現れている。

「大豆から豆腐を作るには2日かかるが、スーパーの注文から納品までの猶予は半日。だから見込みで動く」という話は示唆的だ。何を中心に考えるのかで、その先の幸せの姿も変わってくる。

10月から食品ロスの削減推進法が施行、国民運動だと位置づけられた。人任せの一時的な動きにしては、私たちの暮らしが終わってしまう。(コーディネーター・長澤美津子)

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