パネル討論「社員食堂から広げるSDGsムーブメント」|2019講演記録|朝日地球会議2019|朝日新聞

パネル討論
「社員食堂から広げるSDGsムーブメント」
パナソニック ブランドコミュニケーション本部 CSR・社会文化部 事業推進課課長 喜納 厚介
水産会社勤務 片野 歩
Chefs for the Blue代表理事 佐々木 ひろこ
コーディネーター 朝日新聞大阪本社経済部長 多賀谷 克彦

海の資源 永遠でないからこそ

片野 歩さん

国連の持続可能な開発目標(SDGs)の一つ「海の豊かさを守ろう」は、豊かな海の恵みを受け継ぐ私たちにとって重要なテーマだ。サンマなど身近な魚種の不漁が伝えられるなか、「次世代にも海の恵みを残すために、私たちは何をすべきか」を語り合った。

水産会社に勤める片野歩さんは、統計から日本海域の現状を説明した。


喜納 厚介さん

日本の水揚げ量は最盛期の1980年代半ばの3分の1に激減している。一方、全世界では養殖魚の伸びに支えられ、同時期の2倍に増え、成長が続く。世界銀行による20年後の水揚げ予測でも、日本海域はマイナス9%だが、全世界では23%増えるという。

片野さんは「欧米諸国のように、科学的手法によって水産資源を把握し、それぞれの漁業者がどれだけ取るかを決めるべきだ」と問題提起した。もう「取れるだけ取る」という時代ではない、との主張だ。


佐々木 ひろこさん

フードライターの佐々木ひろこさんは、この問題の深刻さに気づき、一流の若手シェフ約30人と海洋資源を考え、活動する団体を設立した。彼らには「年々、魚の質もサイズも落ちている。値上がりも続く。将来、料理する魚がなくなるのではないか」という危機感が広がっているという。

パナソニックの喜納厚介さんは、持続可能な漁法で取られた魚介類を、社員食堂のメニューに加えた。給食会社と連携して、乱獲や違法操業で取られたものではなく、労働者の人権も守られていると国際機関が認定したマークがついた魚介類を選んでいる。喜納さんは「この活動を同じ問題意識を持つ会社にも広げたい」と語った。

3人は「豊かな海を引き継ぐためには、まずは客観的データで、海の資源の現状を把握することが必要」という意見で一致した。

コーディネーターから

先日、百貨店の食品売り場で日本の海の今を感じた。若狭の老舗乾物店に並んだ大ぶりの焼きサバに、大きく「ノルウェー産」と説明書きが添えられていた。鯖(さば)街道で名高い若狭までもか、と思い至った。

ノルウェーの漁業は徹底した資源管理で知られる。漁業者は割り当てられた量しか取らないため、魚価の安い小さな魚は取らない。それによって資源が保たれ、豊漁貧乏にならずに済み、経営が安定して後継者も育つ。欧米やオセアニアの一般的な漁業の姿だ。


海の資源を守るのは、漁業者だけではない。流通には生産・加工から小売り、料理人、消費者まで多くの人が関わる。食べる前、いま一度、私たちの海に思いをはせてはいかがだろう。(コーディネーター・多賀谷克彦)

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