基調講演
「『グローバル化』と国際国家システムの危機」
社会学教授、マックス・プランク社会研究所名誉所長 ヴォルフガング・シュトレーク

トランプ主義、根付く世界

ヴォルフガング・シュトレークさん

ヴォルフガング・シュトレーク さん

冷戦終結から四半世紀以上が経ち、国際的な国家体制に混乱が起きています。グローバル化の一方で各国で債務が増え、不平等が広がり、成長率が鈍りました。こうして、政治や経済の統治の危機を招いています。各国は市民ではなく、市場に左右されるようになりました。資本主義の世界は予測不可能になり、取って代わる新しい体制がないまま、非常に速いピッチで崩壊が進んでいます。

各国の国内問題を見てみましょう。この20~30年、競争力を高めるための規制改革などで、「負け組」がゆっくりと増え、あるとき分岐点を越えました。彼らが抱える不満は政治的に大きな勢力となり、既成政党、特に中道右派、中道左派が支持を失いました。そして有権者は、ポピュリストと呼ばれる人たちに傾倒するようになりました。

国際的には、覇権的な立場だった米国の衰退で、新たに力の真空が発生していると言えるでしょう。例えば、1970年代に誕生した主要6カ国首脳会議(G6)を2008年以降、20カ国(G20)に広げるといった国際協調の兆しはありました。しかし、17年のG20は、4億ドルをかけた各国の指導者らのPRイベントにしか過ぎず、拘束力のある意思決定は何一つなされませんでした。

ポピュリズムは、恐らく米国を除けば、世界の主流にはなっていません。ただ、トランプ主義は世界の政治経済に根付いています。外国との競争で引き起こされた破壊的な変化から、政府が市民を守る義務を持つ、という考えが支持されるようになりました。

欧州連合(EU)の危機は、近代国家と資本主義、グローバル経済の政治・経済危機が地域レベルで表れたものにほかなりません。欧州は一元化されたスーパー国家として君臨した方が利益が多いのか、それとも、各国で連携しつつより緩いつながりを守るのがいいのか。こうした問いの答えは、非常に高い政治・経済的リスクを伴ったとしても、長い期間、解決できないかもしれません。

ドイツはユーロを使う国々の成長、繁栄の中軸です。最近の総選挙でメルケル首相の続投が決まりましたが、難民に国境を開放したことで、新興右翼政党を予想外に勢いづかせました。ドイツ国内は政治的に不安定な時期になり、欧州やその他の地域から求められる役割も、予測が難しい状況が続くでしょう。

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