パネル討論
「AI×ビッグデータの衝撃にどう向き合うか」パネリスト 京都大学学際融合教育研究推進センター 特定教授 中小路 久美代
メタデータ代表取締役社長 野村 直之
Preferred Networks 最高戦略責任者 丸山 宏
コーディネーター 朝日新聞科学医療部記者 田中 郁也

丸山 宏 さん

丸山 宏 さん

急速に性能が向上する人工知能(AI)。人々の暮らしをより便利にすると期待される一方で、人類を超えかねない「知性」の誕生には、不安もささやかれる。私たちはどう向き合うべきか。最先端を担うパネリストが意見を交わした。

60年を超えたAIの歴史の中で「機械学習を取り入れたこと」が、今の第3次ブームを引っ張っている、と解説するのは、企業などでAIの研究開発に携わってきた丸山宏さんだ。大量の学習を繰り返した結果、画像認識では人間以上の結果を示すことができるようになったという。

AIによるサービスを企業に提供するベンチャーを創業した野村直之さんは「知識でコンピューターに対抗しようとしても無駄」と断言した。


野村 直之 さん

一方で、研究者らの目に映るAIには限界も多い。

丸山さんが挙げたのは、車同士がぶつからないようAIに自動運転を学習させる例。絶対ぶつからない、と設定すると動かない車になってしまう。だから「安全性と効用のバランスを指定しないといけない」。

ソフトウェア工学が専門の中小路久美代さんは、囲碁のように「正解がある世界でのみ機械学習は可能」だと指摘。人生の選択のように、「この中では一番まし、という解を選ぶようなことをAIは当分の間できないし、難しい」とみる。

それでも、AIが人々の仕事を奪う時代がいつか来るのでは、と多くの人は不安を感じている。

野村さんは、弁護士ですらAIに使われる人と、AIに知識を教えることができる人に二極化するという議論を紹介。一方で「どんなポジションでも『なぜ?』という問いを発して自分から答えられる人は、50年ぐらいAIに負けない」と、人間ならではの知性を磨くことが大切だと訴えた。


中小路 久美代 さん

中小路 久美代 さん

中小路さんは「私たちがいま就いている仕事も50年前、7~8割はなかった」のだから、現存する職業を前提にしてAIを脅威だと感じるべきではない、と呼びかけた。

とはいえ、AIは急速に人々の生活にかかわり始めている。例えば、AIが表示順を決めるサイト。AIがトップニュースに置けば、それが偽のニュースだったとしても、真実であるように受け止められてしまうかもしれない。

3人のパネリストはいずれも、AIがこうした危険もはらむことをよく理解した上で、人間の側を教育することや、対処法を考えていく必要性を強調した。


コーディネーターから

考える主役、あくまで人

自動運転や自動翻訳、あるいは人の目には判別できないがんの発見。AIは今、実現困難だったことを次々と可能にしつつあり、急速な進歩が期待と不安を交錯させる。

3人のパネリストが強調したのは、その可能性と限界を正しく認識し、過度な期待や不安に引っ張られないことだ。AIとビッグデータをどう生かし、何をさせるか。それは人や社会が与えていくことであり、自分たちで主体的に決めていかねばならない。「なぜ」「どんな社会を」。考える主役はあくまで、人である。

(田中郁也)

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