主催者あいさつ
[ 第1日 12:30 〜 12:40 ]

朝日新聞社代表取締役社長 渡辺 雅隆

 本日は「朝日地球会議2020」にご参加いただき、誠にありがとうございます。例年は大きな会場にみなさまをお招きして開催してきましたが、今年は新型コロナウイルスの収束がまだみえないということで、こうして初めてオンラインでの開催となりました。朝日新聞社内にスタジオを設け、アメリカやドイツなど海外とも中継で結んでお届けしてまいります。テーマは「新しい未来のための5日間」です。瞬く間に世界中を巻き込んだ新型コロナの感染拡大のなかで浮かび上がってきた新たな課題や、環境破壊、気候危機とSDGsなど、これまでこの会議で取り組んできた地球規模のさまざまな課題について、みなさまと議論していきたいと思います。

 さて、新型コロナウイルスは、私たちの暮らしを大きく変えました。感染者数は世界で3500万人を超え、死者は100万人を超えました。まさに人類への脅威で、国際社会が一致して立ち向かわなければならない大きな課題です。しかし、世界のリーダーたちは自国の利益や自身の政治的立場を守ることばかりに目が向き、対立や分断を加速させているように見えます。アメリカのトランプ大統領は感染拡大の責任をめぐって中国を厳しく批判し、国際協力の枠組みであるWHOからの離脱も決めてしまいました。コロナ禍を「戦争」と表現し、強権を振りかざす指導者が多くいることも気がかりです。社会に目を転じれば、コロナの犠牲者は貧困層への偏りが目立ち、ここでも貧富の格差を浮き彫りにしています。国内では、あろうことか感染者や医療従事者への差別や、「自粛警察」といった社会分断の動きもみられました。

 民主主義も揺らいでいます。欧米諸国がコロナの対応に苦慮する一方で、権威主義的な中国やベトナムは感染抑制で成果をあげました。政府の強い権限によって都市を封鎖し、人の移動や自由を厳しく規制したうえ、中国では街頭に設置されたカメラやスマートフォン、AIなどの技術による「監視」が規制の効果を高めました。日本はこれまで、「強制」ではなく国民一人ひとりの「自粛」によって被害を抑えてきましたが、危機管理の強化を名目に、政府の強制力を強めるべきだという声も聞こえてきます。しかし、危機管理と引き換えに、これまで築き上げてきた自由の価値を簡単に手放してよいものでしょうか。ドイツのメルケル首相は、「自由に旅行し移動する権利を得るのがとても大変だった私のような人間に言わせれば、こうした規制は絶対的な緊急時にしか正当化されません」と語っています。 危機に直面しても冷静さを失わず、歴史的な視座を踏まえながら、健全な未来を見据える——新しい時代の統治のあり方をめぐっては、そうした地に足のついた議論が必要だと思います。もちろん、AIなどのテクノロジーの進化とどう向き合っていくのかも重要なテーマとなるでしょう。

 地球温暖化対策も待ったなしです。アメリカ西海岸では山火事が記録的な規模に広がっています。気候変動による猛暑と乾燥が影響していると指摘されています。日本でも近年、記録的な豪雨が各地で相次ぎ、生活を脅かしています。

 ウイルスと同様、温室効果ガスに国境はありません。各国が協力して対策を進める必要がありますが、ここでもトランプ大統領がパリ協定からの離脱を決めるなど、国際社会は足並みを揃えることができていません。現在、コロナで人の移動や経済活動が制限され、一時的に温室効果ガスの排出が減少しています。コロナは大変な危機ですが、「脱炭素社会」に向けて経済活動やライフスタイルを転換するチャンスでもあると思います。各国は今後、withコロナ、afterコロナに向けて多額の復興予算を投じることになりますが、持続可能な経済活動に投資する「グリーン・リカバリー」の考え方を共有する必要があるでしょう。自国の利益の枠を超え、情報や科学的な知見を国際社会で分かち合い、未来のために知恵を出し合っていくことが大切です。

 これから5日間の朝日地球会議が、その契機になることを強く望んでいます。本日は東京都の小池百合子知事にご講演をいただくほか、メディアアーティストの落合陽一さんや作家の辻仁成さん、女優ののんさん、そのほか多くのゲストにご登場いただきます。明日以降も、世界各国と中継を結び、第一線で活躍されている研究者や作家のみなさんに当社の記者たちも加わって議論を展開していきますので、どうぞご期待ください。 ひとつお知らせがございます。当社は今年4月、「朝日新聞社ジェンダー平等宣言」を公表いたしました。記事でとりあげる人やシンポジウムの登壇者などについて、男女比に偏りがでないよう努めていくというものです。指標の一つとして、この朝日地球会議でも「男女どちらともに40%を下回らない」という数値目標を掲げました。今回、女性の登壇者が41%となり、まずはひとつの目標をクリアいたしました。 ジェンダー平等の実現は、国連が2030年までの達成をめざすSDGsの17の目標のひとつです。性別や障害の有無、国籍や人種、宗教の違いに関係なく、誰もが活躍できる社会、多様な価値観を認め合う社会をめざすSDGsの理念は、「ともに考え、ともにつくる」という朝日新聞社の企業理念と重なります。私たちはこれからも、よりよい明日をつくるために、みなさまと語り合い、手を携えていくメディアであり続けたいと思っています。

 最後になりましたが、今回の朝日地球会議の開催に当たり、特別協賛をいただきました旭硝子財団、アデランス、NTTグループ、サントリーホールディングス、ソーダストリーム、凸版印刷、パナソニックの各社さま、協賛をいただきました住友林業とトヨタ自動車さまに、心より御礼を申し上げます。また、共催のテレビ朝日、特別共催の東京大学未来ビジョン研究センターさま、ご協力、ご後援をいただきました各企業、団体、そして関係各省のみなさまにも、この場をお借りしまして、深く感謝を申し上げます。

 充実した5日間になることを祈念いたしまして、私からの挨拶といたします。ありがとうございました。

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