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2012年5月8日
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地球ギャラリー

「乳と蜜の流れる土地」の未来は パレスチナ

[掲載]「JICA's World」2011年10月号

写真:「嘆きの壁」の前で、トーラー(律法)を読むユダヤ教超正統派。拡大「嘆きの壁」の前で、トーラー(律法)を読むユダヤ教超正統派。

写真:ベツレヘムの「聖誕教会」。イエスが生まれた地とされ、クリスマスには世界中から巡礼者が集う。拡大ベツレヘムの「聖誕教会」。イエスが生まれた地とされ、クリスマスには世界中から巡礼者が集う。

写真:キリストが十字架にかけられたとされる場所に建つ「聖墳墓教会」。教会内は荘厳な雰囲気に包まれている。拡大キリストが十字架にかけられたとされる場所に建つ「聖墳墓教会」。教会内は荘厳な雰囲気に包まれている。

写真:モスクでのイスラム教徒。昼寝をする人もいれば、メッカに向かって祈る人もいる。拡大モスクでのイスラム教徒。昼寝をする人もいれば、メッカに向かって祈る人もいる。

写真:東エルサレムで出会ったパレスチナ人の少女。拡大東エルサレムで出会ったパレスチナ人の少女。

写真:陽光に光るイスラム美術。拡大陽光に光るイスラム美術。

写真:エルサレムにある「岩のドーム」の前を歩くパレスチナ人。イスラム教では、ここで預言者ムハンマドが天に昇ったといわれている。拡大エルサレムにある「岩のドーム」の前を歩くパレスチナ人。イスラム教では、ここで預言者ムハンマドが天に昇ったといわれている。

 「アッサラーム・アレイクム」

 アラビア語で「こんにちは」という意味のこの言葉は、「サラーム(Peace)+アレイ(on)+クム(you)」という単語から成り、直訳すると「平和をあなたの上に」となる。パレスチナをはじめ、エジプトやヨルダンなどのアラブ諸国を訪れると、このあいさつに必ずであう。

 一方、パレスチナと紛争関係にあるイスラエルのあいさつは、ヘブライ語で「シャローム」。実はこの「シャローム」の語源が、アラビア語の「サラーム」と同じ意味の「平和」。両者には、語源や宗教上の決まりごとなど、多くの共通点がある。

 さらにパレスチナとイスラエルには、イスラム教・キリスト教・ユダヤ教の聖地があるエルサレムをはじめ、それぞれの宗教にゆかりのある史跡が数多く存在する。エルサレムの旧市街を歩けば、三つの宗教の多様性が交差する光景にであう。モスクから礼拝を呼びかけるアッザーンとともに祈りを始めるイスラム教徒、イエスが十字架を背負って歩いた「悲しみの道」を讃美歌を歌いながら進むキリスト教徒。そして、ユダヤ教徒はユダヤ教の聖地である「嘆きの壁」に向かって一心に祈りを捧げる。

 パレスチナ(および周辺のアラブ諸国)―イスラエル間の対立は最も長く続く地域紛争の一つで、中東全体の対立構造の根幹にある。この紛争の解決と中東の安定化は、石油の約9割を中東からの輸入に依存する日本にとっても重要だ。

 1993年のオスロ合意に基づき、パレスチナの暫定自治区は「西岸地区」と「ガザ地区」の二つの地域に定められた。「西岸地区」は三重県、「ガザ地区」は東京都23区の6割ほどの面積に相当し、合計すると茨城県ほどの大きさ。ここに約394万人のパレスチナ人が暮らしている。

 オスロ合意当初は和平の機運が高まったものの、現在はパレスチナとイスラエルの交渉が暗礁に乗り上げており、中東和平は先行きが不透明な状況にある。中東和平の中核的問題である「国境」「難民の帰還」「エルサレムの帰属」「入植地」。時の経過により論点が複雑化しており、解決は容易ではない。国際政治が生み落とした最も難解な問題の解決が一刻も早く望まれる。

 旧約聖書に「乳と蜜の流れる土地」と記されたパレスチナ。悠久の歴史の中、神の名のもとに、あるいは民族の誇りをかけた戦いが繰り広げられてきた。今も二つの民族がそれぞれの正当性を争い、対立を続けるこの地に、平和が訪れ、過去の対立を超えて共存できる日が来ることを切に願う。

 写真・文=中岡裕策(JICA中東・欧州部)

本コラムは、独立行政法人国際協力機構(JICA)の広報誌「JICA’s World」に掲載されたものです。記事内容は掲載時のものです。記事の無断転用を禁じます。

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