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2012年10月3日12時4分
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山崎亮 シアワセをデザインする

(17)「LOVE」の四原則がカギ

写真:山崎亮さんは参加者の言葉や動きへの目配りを欠かさない。拡大山崎亮さんは参加者の言葉や動きへの目配りを欠かさない。

写真:ポジティブな雰囲気づくりがワークショップを盛り上げる。拡大ポジティブな雰囲気づくりがワークショップを盛り上げる。

写真:ゲームを通して仲間意識が生まれてくる。拡大ゲームを通して仲間意識が生まれてくる。

 さまざまな人々が参加するワークショップをいかに進めるか。そこに山崎亮は知恵を絞る。なぜなら、ワークショップをどうデザインするかで生まれてくるものが大きく変わってくるからだ。

 ワークショップではまず、参加者同士が打ち解けられるように「アイスブレイク」と呼ばれるゲームをする。言葉通り、氷が砕けて溶けるように心をほぐし、場を和ませる。

「当初は、アイスブレイクでいくらか打ち解けた雰囲気になると、『さあ、本題です』とやっていたのですが、それでは一気に場が白けてしまうんです」

 山崎は、ゲームのためのゲームを超えるにはどうしたらいいかに頭をめぐらせた。「高齢者福祉」をテーマにしたとき、「負けるジャンケン」を採り入れることにした。相手より後出しして、ジャンケンで負けるというゲーム。たとえば相手がグーなら、パーではなくチョキを出さなければならない。

 ところが、勝とうという意識が刷り込まれている人ほど反射的にパーを出してしまう。いかに負けるように頭を切り替えるか。思考を転換する柔軟性が求められる。ただ、それは単にゲームのためのものではない。

「福祉では、できる人ではなく、できない人をいかに支えるかを考えなければならないだけに、“負けて勝つ”という発想が重要になります。そうした意識づけと関連づけることで、アイスブレイクからディスカッションに滑らかに移ることができたのです」

 ときには、「喪失体験」ゲームを使うこともある。

 参加者に紙を渡して六つ切りにしたあと、それぞれに「友達」「家族」「健康」「カネ」「役割」「いきがい」と書いてもらう。それから、6枚の紙切れをテーブルの上に並べ、参加者全員が山崎とジャンケンする。負けたら、どれか紙切れを1枚やぶかなければならない。どのカードをどういう順番で捨て、最後にどのカードを手元に残すのか。そこに、参加者それぞれの価値観が映し出され、会話の糸口が生まれる。

 ただ、やはり狙いはそれだけに留まらない。山崎は参加者にこう問いかける。

「人は年を重ねるごとに大切なものを失っていきます。でも、たとえ失ったとしても、増やすことができるものもあります。たとえば『生きがい』や『役割』、あるいは『ともだち』だって、増やせるかもしれないですよね」

 そう言いながら、これからかかわるまちづくりへと視点を移すのだ。

 参加者によっては、職場の人間関係やこどもの学校関係に付き合いが限られている人も少なくない。まちづくりの活動に加わることで仲間が増え、役割も増し、生きがいを感じられるようになれば、結果的に日々が豊かになるかもしれない。そんなふうに考えられれば、プロジェクトをともに進める仲間意識も少しずつ育っていくだろう。

 こうして参加者の気持ちをほぐしながら、次第に本題へと移っていく。話し合いに入る前には、四つの原則を伝える。「Listen=よく聞こう」「Open=心を開こう」「Voice=発言しよう」「Enjoy=楽しもう」。それぞれの頭文字から、「LOVE」のルールと呼ばれている。

 さらに、建設的な議論を導くために、山崎が採り入れるゲームがある。=敬称略 (諸永裕司)

プロフィール

山崎 亮(やまざき りょう)

 1973年生まれ。studio−L代表、京都造形芸術大学教授。地域が抱える課題を、地域に住む人々が解決するコミュニティデザインの第一人者。「海士町総合振興計画」「マルヤガーデンズ」でグッドデザイン賞を受賞。

 著書に『コミュニティデザインの時代』(中央公論新社)、『ソーシャルデザイン・アトラス 社会が輝くプロジェクトとヒント』(鹿島出版会)、『コミュニティデザイン――人がつながるしくみをつくる』『つくること、つくらないこと』(以上、学芸出版社)、『コミュニティデザインの仕事』(BIOCITY50号記念増刊号)、『まちの幸福論』(NHK出版)、『地域を変えるデザイン』『海士人』(英治出版)など。

ホームページ 「studio−L」

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