現在位置:
  1. 朝日新聞デジタル
  2. 環境
  3. 記事
2012年10月10日11時14分
このエントリーをはてなブックマークに追加

山崎亮 シアワセをデザインする

(18)「Yes,And」が発想を生む

写真:いかに参加者の声をポジティブに広げるか。山崎亮は心を砕く拡大いかに参加者の声をポジティブに広げるか。山崎亮は心を砕く

写真:「yes,and」で話を続けれると、自然と笑顔がこぼれる拡大「yes,and」で話を続けれると、自然と笑顔がこぼれる

写真:だれの意見も肯定する。それができれば、アイディアは自然と膨らむ拡大だれの意見も肯定する。それができれば、アイディアは自然と膨らむ

写真:ワークショップで採り入れられた「ええなあ!」シール。シールが増えると、気持ちもぐんぐん前向きになる拡大ワークショップで採り入れられた「ええなあ!」シール。シールが増えると、気持ちもぐんぐん前向きになる

写真:「ええなあ!」シールが積み重なるところに進むべき道が見える拡大「ええなあ!」シールが積み重なるところに進むべき道が見える

 それはワークショップを成功に導くために欠かせない仕掛けと言えるかもしれない。参加者を2人1組にして、話し合いの作法を授ける「Yes,And」ゲームである。

 最初は、相手から話しかけられたら、かならず「No」と答えなければならない。たとえば、「食事に行きましょう」と誘われても、行かないと断る。「おいしい和食があるから」と言われても、やっぱり首を横に振る。そうして断りつづけていくと、当然のことながら話はつづかない。

 そのあとで、なにを言われても「No」ではなく、かならず「Yes」と答えるようにする。しかも、ただの「Yes」ではなく、「Yes,and」で応じなければならない。たとえば、こんなふうになる。

「映画にいきませんか」「いいですね。じゃあ、なにを見ましょうか」

「『スター・ウォーズ』なんてどうですか」「はい、面白そうですね。せっかくだから、そのあと食事でもしませんか」

「じゃあ、フレンチでも食べますか」「いいですね。せっかくなら本場のパリで食べたいですね」……

 このように「Yes,and」を繰り返すことで会話はどんどん膨らみ、しまいには月で食事する約束を結んでしまう、ということもあったという。

 ポジティブな反応とネガティブな反応とでどれほど結論が異なるのかを知ることで、相手の意見を肯定するのがいかに大切かを理解してもらう。そうした意識づけがその後にはじまるディスカッションの「エンジン」になるという。

「かつては僕も、つい『No,but』と答えがちだったんです。なにかを肯定するつもりなのに『でもね……』と切り出してしまうことがありました。でもそれでは、知らず知らずのうちに会話のトーンが落ち、前向きな話には発展しにくいんですよね」

 山崎は「Yes,And」話法が新たな発想や意欲をかきたてるのにいかに重要かを知るにつけ、否定的な言葉をほとんど使わなくなった。だからいまは、どんなことを言われても、まずは「そうですね」と答える。

 まちづくりをテーマにしたワークショップで、公共施設がほしいという声が出てきたことがあった。旧態依然としたハコモノ信仰に思えたが、それでも山崎は頭ごなしに否定はしない。

「やっぱり、公民館がいいかなあ」」「そうですね、公民館があるといいですね。で、そこではなにをしたいですか?」

「そうだなあ、囲碁サークルで集まったりできないかなあ」「いいですね。それって公民館でなくてもできませんかね」

「別に広場みたいなところがあって、机とベンチがあればできるなあ」「そうですね。青空の下だと気持ちよさそうですね」

 相手の意見を肯定しながら、こんなふうに話を進めていくと、かならずしも公民館はいらないということに相手が自然と気づいていったという。

「私たちがやったらいいと考えていることを初めから持ちだしてしまうと、『それは、あんたたちがやりたいことじゃないか』とか、『言われたからやる』ということになってしまう。そうなると長続きしないんです。それに、住民の人たちも燃えてきませんよね」

 相手を変えるのではなく、相手が変わるのを待つ。そのためには結論を押し付けられたと感じさせることなく、みずから気づいたと思えるように導いていく。

 そうやって胸襟を開かせた後は、どうすればいいのだろう。=敬称略 (諸永裕司)

プロフィール

山崎 亮(やまざき りょう)

 1973年生まれ。studio−L代表、京都造形芸術大学教授。地域が抱える課題を、地域に住む人々が解決するコミュニティデザインの第一人者。「海士町総合振興計画」「マルヤガーデンズ」でグッドデザイン賞を受賞。

 著書に『コミュニティデザインの時代』(中央公論新社)、『ソーシャルデザイン・アトラス 社会が輝くプロジェクトとヒント』(鹿島出版会)、『コミュニティデザイン――人がつながるしくみをつくる』『つくること、つくらないこと』(以上、学芸出版社)、『コミュニティデザインの仕事』(BIOCITY50号記念増刊号)、『まちの幸福論』(NHK出版)、『地域を変えるデザイン』『海士人』(英治出版)など。

ホームページ 「studio−L」

検索フォーム


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内 事業・サービス紹介
環境ガジェット