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2012年10月17日10時37分
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山崎亮 シアワセをデザインする

(19)「人間関係の星座」をつくる

写真:アイスブレイク中も、山崎亮は参加者の動きに目を配る拡大アイスブレイク中も、山崎亮は参加者の動きに目を配る

写真:「一本の指」というアイスブレイクでは、グループ全員それぞれ指1本で皿を支える拡大「一本の指」というアイスブレイクでは、グループ全員それぞれ指1本で皿を支える

写真:チーム分けで、それぞれが手にしたカードを一斉に見せ合う拡大チーム分けで、それぞれが手にしたカードを一斉に見せ合う

写真:チーム・ビルディングでは、互いに触れ合いながら協力することで一体感を高める拡大チーム・ビルディングでは、互いに触れ合いながら協力することで一体感を高める

 ワークショップで大切なのはチーム分けだ、と山崎亮はいう。そのために人間関係の星座をつくる。

 事前のヒアリングや目の前での振る舞いを観察するなどして蓄えた情報を頭の中で組み合わせる。だれとだれは考えが近いとか、だれはだれに頭が上がらないとか、だれはだれには耳を傾けるといった情報をつなげるのだ。山崎にとって、それは幼少のころから慣れ親しんだ習慣でもあった。

山崎はかつて転校生だった。

 父親の転勤で郊外の社宅を転々とし、幼稚園、小学校、中学校は2校ずつ渡り歩いた。だれも知らないところに放り込まれて、一から自分を知ってもらわなければならなかった。そのため、クラスのなかの人間関係をすばやく見抜くことに神経をとがらせていたという。

 転校して挨拶をすると、最初に寄ってくるのは教室で居場所がない子だ。いじめられていたり、みんなから相手にされていなかったり。その子をないがしろにはしないものの、その子とばかりいるとクラスに溶け込んでいけなくなるため、山崎は、だれがリーダーで、だれとだれは仲がよいのかを見極めることに心を砕いた。

「あるとき、実家にあるアルバムをめくり返してみたら、転校したころは集合写真の端っこに写っていたのが、転校するころには真ん中に立つようになっていたんです」

 人間を観察して関係性を見抜き、いつしか仲間として受け入れられ、気が付けば中心に立っている。摩擦を避ける賢さとそれを裏付ける視線の鋭さは、ワークショップでも生かされている。

 たとえば、たがいに言葉を発せずに誕生日順に並ぶ「バースデー・チェーン」というアイスブレイクの最中、山崎が見ているのは参加者のだれが乗ってくるか、だれが乗ってこないかという点だ。こうして並んだ顔ぶれを見まわしながら、どういう分け方をしたらどんなグループが生まれるか、瞬時に判断を下す。「季節ごとにチームになりましょう」「1、2、3、4、5と順番に言ってください。番号ごとに分かれましょう」などと無作為を装いながら、頭の中ではネガティブな傾向の強い人ばかりが集まらないように計算しているのだ。

 また、似た者同士が同じチームに入れば合意に時間はかからないが、新しいアイディアは出てきにくくなる。逆にあまりに違う人たちが集まると、時間がかかっても合意に至らないかもしれない。年齢や性別も含めて、どんなふうにチームを分けてバランスをとるかがワークショップの成否を握るカギになるという。

「僕の役割は、いってみれば大工の棟梁みたいなものなんです。百年もつ建物をつくろうとしたときに、それぞれの木のクセを見極めて組み合わせるといいます。そのとき、どの木組みにどの大工を当てるかが大切になる。それを僕の仕事に置き換えれば、『人組み』を考えることがとても大事なんだと思います」

 だから、ワークショップではつねにひとところにとどまらない。笑みを浮かべてぶらぶらとテーブルの合間を歩きながら、たわいないやりとりや白熱する議論にさりげなく耳を傾けている。

 途中で席を立つ人がいれば、注意を向ける。たとえトイレといえども、議論の最中に抜けるというのは、あまりやる気がない証拠だからだ。そうした参加者一人ひとりの熱量もさりげなく把握しているという。

「よく、『山崎さんの笑顔が――』なんて言ってもらうんですけど、実際には、笑顔の裏で、参加者たちを観察しているんですよ」

 と、山崎は笑う。

 とはいっても、現実には話し合いがいつもスムーズに進むとは限らない。=敬称略(諸永裕司)

プロフィール

山崎 亮(やまざき りょう)

 1973年生まれ。studio−L代表、京都造形芸術大学教授。地域が抱える課題を、地域に住む人々が解決するコミュニティデザインの第一人者。「海士町総合振興計画」「マルヤガーデンズ」でグッドデザイン賞を受賞。

 著書に『コミュニティデザインの時代』(中央公論新社)、『ソーシャルデザイン・アトラス 社会が輝くプロジェクトとヒント』(鹿島出版会)、『コミュニティデザイン――人がつながるしくみをつくる』『つくること、つくらないこと』(以上、学芸出版社)、『コミュニティデザインの仕事』(BIOCITY50号記念増刊号)、『まちの幸福論』(NHK出版)、『地域を変えるデザイン』『海士人』(英治出版)など。

ホームページ 「studio−L」

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