現在位置:
  1. 朝日新聞デジタル
  2. 環境
  3. 記事
2012年11月8日15時9分
このエントリーをはてなブックマークに追加

山崎亮 シアワセをデザインする

(22)ひとときの熱狂で終わらせない

図:都道府県別の人口増加率の予測地図(1)(2005―2010) 赤く塗られた「増加率−2%以下」は、島根県など6県。(studio−L作製)拡大都道府県別の人口増加率の予測地図(1)(2005―2010) 赤く塗られた「増加率−2%以下」は、島根県など6県。(studio−L作製)

図:都道府県別の人口増加率の予測地図(2)(2015―2020) 日本列島は一挙に赤に染まる(studio−L作製)拡大都道府県別の人口増加率の予測地図(2)(2015―2020) 日本列島は一挙に赤に染まる(studio−L作製)

図:都道府県別の人口増加率の予測地図(3)(2025―2030) 東京など5県をのぞき、「増加率−2%以下」になる。(studio−L作製)拡大都道府県別の人口増加率の予測地図(3)(2025―2030) 東京など5県をのぞき、「増加率−2%以下」になる。(studio−L作製)

写真:海士町(島根県)は高齢化の先進地。拡大海士町(島根県)は高齢化の先進地。

図:建物ごとに居住者の有無などを地図に落とした。(studio−L作製)拡大建物ごとに居住者の有無などを地図に落とした。(studio−L作製)

 プロジェクトにかかわっても、「僕は3年でいなくなりますから」というのが山崎亮の口癖だ。それは、まちの未来を担うのはほかならぬ住民たちである、ということを意味している。

 山崎の仕事のスタイルは、あたかも開発援助を反面教師としているようにも映る。

 途上国に一時的に道路やダムなどを援助しても、維持管理ができないまま放置され無用の長物と化す、という現場は少なくない。そこには、使い手となる現地の人々が一方的に与えられるため、自分たちのものとして使っていくという意識が欠けているためだろう。

 山崎のアプローチはその逆をいく。

 住民こそが主役にならなければ、主役としての自覚をもてるように意識改革ができなければ、どんなに素晴らしいアイディアを掲げてみても絵に描いた餅に終わる可能性が高くなる。それを知っているため、住民が主体的にかかわる仕組みをつくりあげるのだ。

「人と人とのつながりをデザインしている、と言えるかもしれません」

 たとえば、島の総合振興計画づくりを手伝った島根県の離島、海士町は人口約2300人、高齢化率は約38%。世界のなかでも高齢化が著しい日本の平均が約22%(2009年)。日本のなかでも高齢化率の高い島根県が約29%だから、突出している。

 逆に考えれば、世界でも高齢化の先進地ということもできる。

 ここで、高齢化していくまちをいかに衰退させないか。まちとして生き延びるための処方箋を見つけられれば、これから海士町と同じように超高齢化を迎える日本や世界に「解決策」を示すことにもなる。

 海士町から、時代を変える風を吹かせることができるだろうか。

 山崎たちはまず、「病院までの距離」「学校までの距離」「こどもの数」「町営住宅の数」など12の指標に基づいて14の集落を診断。まちのドクターとして集落ごとの特徴をつかんだうえで、「里山をどう維持管理していくか」「竹やぶをどう有効活用するか」「空き家や廃屋をどう扱っていくか」「農産物をいかした加工品をどうやってつくるか」といった、それぞれの課題を浮き彫りにしたのだった。

 そのうえで、総務省の「集落支援員」制度にもとづき、6人の集落支援員を養成した。支援員たちは高齢者宅をたずね、「なにをしてほしいか」を聞いて回った。ある集落で、「倉庫に眠っているタンスを引き取りにきてほしい」という要望があった。ほかにも、「不用品」はたくさん集まった。ただ、昭和の香りの残るような家具をゴミにしてしまうのはもったいない。支援員は空いている保育園を使って古道具屋を開いたところ、1カ月で20万円の利益がでたという。収益は、次なる課題である「買いもの支援」にどういかすかのリサーチに充てている。

 支援員のひとりは、山崎が教鞭をとる京都造形芸術大のゼミで学んでいた。月収は手取り13万円だが、借家の家賃は1万円のため、貯金もできる。米は友達と稲作する田んぼでとれ、野菜なども知り合いが分けてくれる。お返しに、ネットでの買い物を手伝ったり、祭りなどの行事に参加したりする。

「知り合いがたくさんいるので、できないことは助け合えばいい。お金がなくても困りません」

 双方向の関係を築き上げたことで、コミュニティの潜在力が引きだされ、カネに代わる価値が暮らしを支えることとなった。

 もちろん、NPO法人の設立や、準備にかかる資金あつめのための補助金獲得の指南など、具体的なアドバイスも怠らない。ただ、根っこにあるのは単純な思いだ。

「まちの幸福は、まちに住むひとりひとりがかかわることから少しずつ醸成されるもの。そのためには、だれかがやってくれる、行政にまかせておけば、という意識を変え、ひとりひとりが『お客さん』にならないことが重要なのです」=敬称略 (諸永裕司)

プロフィール

山崎 亮(やまざき りょう)

 1973年生まれ。studio−L代表、京都造形芸術大学教授。地域が抱える課題を、地域に住む人々が解決するコミュニティデザインの第一人者。「海士町総合振興計画」「マルヤガーデンズ」でグッドデザイン賞を受賞。

 著書に『コミュニティデザインの時代』(中央公論新社)、『ソーシャルデザイン・アトラス 社会が輝くプロジェクトとヒント』(鹿島出版会)、『コミュニティデザイン――人がつながるしくみをつくる』『つくること、つくらないこと』(以上、学芸出版社)、『コミュニティデザインの仕事』(BIOCITY50号記念増刊号)、『まちの幸福論』(NHK出版)、『地域を変えるデザイン』『海士人』(英治出版)など。

ホームページ 「studio−L」

検索フォーム


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内 事業・サービス紹介
環境ガジェット