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2012年11月21日10時50分
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山崎亮 シアワセをデザインする

(24)「ヨソモノ」「バカモノ」が起爆剤

写真:家島へは船で渡る。学生たちの「目」が求められていた。拡大家島へは船で渡る。学生たちの「目」が求められていた。

写真:魚をどうさばくのか。島の人の実演に釘付けになる。拡大魚をどうさばくのか。島の人の実演に釘付けになる。

写真:「探られる島」と題したフィールドワークの結果、浮かび上がってきた家島の魅力を冊子にまとめた。拡大「探られる島」と題したフィールドワークの結果、浮かび上がってきた家島の魅力を冊子にまとめた。

写真:タコのつくだにやのりなど、持たせたい「土産」の数々。拡大タコのつくだにやのりなど、持たせたい「土産」の数々。

写真:タイ、エビ、カニなど、食べさせたい「料理」の数々。拡大タイ、エビ、カニなど、食べさせたい「料理」の数々。

写真:そして、会わせたい「人」。いずれも学生たちが見つけた魅力だ。拡大そして、会わせたい「人」。いずれも学生たちが見つけた魅力だ。

 学生という存在の価値に気づいたのは、兵庫・姫路沖に浮かぶ家島でのプロジェクトだった。

 あるとき、外の視点から島の魅力を探ろうと、学生たちが島に入った。まず目をひいたのは、日常生活で家の中にある冷蔵庫や流し、椅子などが屋外に置かれていることだった。漁業をしているため、そのほうが便利なのだという。都会では考えられない光景だった。さらに、タイ、メバル、エビ、シャコ、イカ、ワタリガニなど海の幸の豊富さにも驚かされた。島では当たり前と思われているもののなかに、都会から来た若者たちはいくつもの「価値」を見つけだしたのだった。

 交流を深めた学生たちは正月、島の人たちを招いて、ぜんざいを振る舞おうと企画した。あずきの缶詰をいっぱい買ってきたものの、お湯はどれくらいの量を沸かせばいいのか。作り方がわからず、手間取るばかりでなかなかできあがらない。「あんたねえ、こうやるのよ」。結局、たまりかねた住民たちが作り方を教えてくれたのだった。

 ここに学生たちの本領がある、と山崎亮は言う。

「学生たちは、外からきた『ヨソモノ』。島をなんとかしたいと思ってはいても、思いばかりがあふれる『バカモノ』。それなのに、足りないところだらけでなにもできない。でも、完璧でないからいいんです」

 あれもできない、これもできない……。その結果、島の人たち自身が動き出さざるをえなくなる。「ヨソモノ」「バカモノ」であるがゆえ、学生たちはコミュニティデザインを推進力としての可能性を秘めている、という。

 かつて、大阪府の余野川流域に建設が予定されていたダム事業中止をめぐっても、学生の力が解決を導くきっかけとなったことがある。

 事業が止まった以上、ダムの建設費はもちろん、付随する事業関連の予算もなくなる。地元との約束を反故にされるとして、住民説明会は紛糾した。とはいえ、ダム建設中止という結論はどうやっても動かない。

「この状況をなんとか変えられませんか」

 山崎は、事業を主管する国土交通省の担当者からもちかけられた。そこで狙いを定めたのは拳を振り上げる男たちではなく、その妻たちだった。

 地域に入って奥さんたちと仲良くなり、地域の魅力を本音で語り合いながら、本当にダムが必要なのか、道路の拡幅や橋の架け替えが必要なのかを考えていけば、ダムがなくてもいいという結論にたどりつくのではないか。妻たちが建設中止を受け入れれば、最終的には夫たちも同調するだろう。山崎はそう思い描いた。そして、地域の奥さんたちとトモダチになるための専門家として学生に白羽の矢を立てた。

 学生はダム建設による利害とは関係なく、いいと思うことはいい、悪いと思うことは悪いと素直に言える。そのため、次第に地域の人たちとの信頼関係を築いていった。

「結果として、ダム建設を続けるように訴えていた人たちともつながるようになり、最終的には、国交省や大阪府なども一堂に会して、ダム建設予定地の跡地をどう活用するかを考えるワークショップを開けるまでになったのです」

 利害にとらわれず中立の立場がからものごとをとらえられる学生たちが、まちに変化をもたらす。だから、山崎はこう呼びかける。「穴だらけの大風呂敷を広げよう」。穴は後から地域の人たちが埋めてくれるのだから。=敬称略 (諸永裕司)

プロフィール

山崎 亮(やまざき りょう)

 1973年生まれ。studio−L代表、京都造形芸術大学教授。地域が抱える課題を、地域に住む人々が解決するコミュニティデザインの第一人者。「海士町総合振興計画」「マルヤガーデンズ」でグッドデザイン賞を受賞。

 著書に『コミュニティデザインの時代』(中央公論新社)、『ソーシャルデザイン・アトラス 社会が輝くプロジェクトとヒント』(鹿島出版会)、『コミュニティデザイン――人がつながるしくみをつくる』『つくること、つくらないこと』(以上、学芸出版社)、『コミュニティデザインの仕事』(BIOCITY50号記念増刊号)、『まちの幸福論』(NHK出版)、『地域を変えるデザイン』『海士人』(英治出版)など。

ホームページ 「studio−L」

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