新型プリウス
トヨタ自動車は、5月中旬に発売するハイブリッド車、新型プリウスの今年度の国内生産台数を、約50万台とする方針を固めた。トヨタは今年度、全車種合計で275万台程度を国内生産する見通しだが、5台に1台近くがプリウスになる。環境意識が高まり、ハイブリッド車が自動車生産の主流車種になってきた。
新型プリウスの受注は、すでに4万台を超え、一部の販売店では注文の8割を占める。発売時には6万台を超える勢い。2月に発売したホンダのハイブリッド車、インサイトは、発売後1カ月で1万8千台を受注したが、これを大きく上回る。
現行プリウスの08年の国内生産台数は約30万台。トヨタは新型の好調な受注を受け、従来33万4千台だった09年度の生産計画を、49万5千台に引き上げる。現在、部品メーカーに対応が可能か確認中。
08年の車種別の国内生産台数は、トヨタのカローラが53万6千台、ホンダのフィットが約30万台。両車種とも今年度は不況の影響で生産を減らす可能性が高く、プリウスが国内最多生産になる勢いだ。
国内販売では、軽自動車を除く登録車で08年に最も多く売れた車はフィット(約17万5千台)。生産したプリウスのうち、19万5千台は国内に回す予定のため、夏にも1カ月の登録車販売で国内首位が見込まれる。軽の人気車種スズキ・ワゴンRやダイハツ・ムーヴにも迫りそうだ。
トヨタの「強気」を後押しするのは、ハイブリッド車の低価格競争と環境車に対する減税などの優遇政策だ。189万円のインサイトに対抗し、新型プリウスの販売価格は205万円程度。自動車業界には、プリウスとインサイトの「PI戦争」が、低迷する自動車市場の起爆剤になると期待する向きもある。
トヨタは09年後半、新しいハイブリッド専用車「SAI(サイ)」を投入する計画。ホンダもインサイトを月5千台売る目標を掲げており、今年は環境車の普及にとって潮目の年になっている。
ただ、新型プリウスが他の車種の販売を奪う懸念もある。トヨタ幹部は「あくまでも単一車種に対する需要で、業績全体を底上げする効果は限定的」と、慎重な見方を変えていない。(福田直之)