メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

08月13日朝日新聞デジタル朝刊記事一覧へ(朝5時更新)

新着記事一覧へ

このエントリーをはてなブックマークに追加

電池の未来とナノテクノロジー 京大・内本教授が講演

写真:講演をする内本教授。ともすれば難解な話題をわかりやすく説明していた拡大講演をする内本教授。ともすれば難解な話題をわかりやすく説明していた

写真:集まった聴衆も熱心に耳を傾けていた拡大集まった聴衆も熱心に耳を傾けていた

写真:奥の円形の建物が、内本教授らが解析に使った大型施設「スプリング8」。手前はX線自由電子レーザー施設「SACLA(さくら)」=兵庫県佐用町、2010年9月撮影拡大奥の円形の建物が、内本教授らが解析に使った大型施設「スプリング8」。手前はX線自由電子レーザー施設「SACLA(さくら)」=兵庫県佐用町、2010年9月撮影

 京都大学が東京・品川の「京大東京オフィス」で開く連続講座「東京で学ぶ 京大の知」(朝日新聞社後援)のシリーズ9「身近なナノテクノロジーの世界」。

 2012年12月13日は、「燃料電池の実用化のためのナノテクノロジーの世界」と題して、京都大学大学院人間・環境学研究科の内本喜晴教授が講演した。エネルギー利用をより効率化できるよう、燃料電池、蓄電池の研究が世界的に進んでいる。京大も2011年、電気自動車に載せる次世代電池などの開発を目指し、産官学共同の研究拠点をつくった。内本教授は研究メンバーの1人。燃料電池や蓄電池の開発・研究の現状と、ナノテクノロジーが果たす役割について語った。

●燃料電池と蓄電池の仕組み

 「中学校の理科で、『水の電気分解』について学びますよね。ガラス装置に水を入れて電気を流すと、水素と酸素に分かれるという実験をしたと思います。燃料電池は、その逆の原理です。水素と酸素を反応させて電気をつくり、電気エネルギーを取り出します」

 内本教授はそう話しはじめた。燃料電池では、化学変化でできる物質は水だけだ。地球に優しい電源として、自動車などへの利用が期待されている。

 一方、蓄電池(バッテリー)は、電気をつくるのではなく、ためる。正確には、電気エネルギー自体をためることはできないので、化学エネルギーに変えて蓄える。充電すれば繰り返し使える。

 そもそも電池は、プラスとマイナスの電極の間をイオンが移動して電子の流れが生まれることで機能を発揮する。イオンの移動を仲立ちするのが「電解質」で、簡単に言えば、水に溶かしたときに電流が流れる物質だ。食塩は電解質だが、砂糖は違う。「水の電気分解」の実験では、電解質として水酸化ナトリウムをよく使う。

 今までのさまざまな研究で、蓄電池に適した電解質が開発されてきた。蓄電池の現在の主流は、リチウムイオン電池である。

●燃料電池と蓄電池が地球を救う

 東日本大震災以降、風力・太陽光・バイオマスなど、再生可能エネルギーの普及に向けた努力が続いている。しかし、現時点では、化学エネルギーに変えても、つくった電気を長時間ためることはできない。今後、再生可能エネルギーでつくった電気を安心して使うには、貯蔵技術を高めることが必要になる。そこで求められるのが、電池のさらなる高性能化だ。

 内本教授によると、燃料電池はハイブリッド自動車の開発をきっかけに市場が広がり、蓄電池の技術は、パソコンや携帯電話の普及にともなって大きく進歩した。しかし、実用面ではまだ十分ではない。

 たとえば蓄電池を利用する電気自動車の場合、常につきまとうのが、「すぐに電気を使い切ってしまうのではないか」という不安、「長距離走ることが出来ない」という不満だ。

 蓄電池は、1990年代は日本のメーカーが世界市場の約9割を占めたが、2000年代に韓国や中国のメーカーが徐々にシェアをのばしてきた。こうした状況への危機感も、日本で次世代電池の開発が急がれる背景にある。

 「だからこそ、京大では、企業や経済産業省などと協力して、利用者の希望に応えられ、国際競争力にも耐えられる次世代の燃料電池、蓄電池の開発を進めているのです」と内本教授は言う。

 ここで、開発の基礎となるのが、電池のなかで起きている現象を詳しく探ること。ナノテクノロジーの登場だ。

●「はやぶさ」が持ち帰った微粒子を分析した施設を活用

 内本教授の現在のテーマは、「蓄電池の中で何か起きているのか」を詳しく解明すること。特に、電極と電解質の境界面の動きを明らかにすることだ。

 内本教授によると、蓄電池の改良では、電極、電解質に加えて、境界面で起きる現象の解明が大切になる。蓄電池を長い間使った「劣化」には、近年の研究で、電極や電解質の劣化よりも、境界面における電気の通りが悪くなっていることによる影響が大きいことがわかってきた。

 「境界面で何が起きているか」を調べるのはとても難しい。ナノメートル(ナノは10億分の1)という極小の世界の現象だ。しかし、内本教授らは、「10年間持つような寿命の長い蓄電池を作るには、境界面の現象を解明することが重要」と考え、研究を進めた。

 内本教授らは、物質の性質を原子レベルで調べることができる国の実験施設「スプリング8」を使うことにした。小惑星「イトカワ」から探査機「はやぶさ」が持ち帰った微粒子を分析したことなどでも知られる施設だ。

 内本教授らは、電池が動いている状態で、境界面の様子を世界最高レベルの設備で解析。電池が機能する中で境界面がどのような反応をするのか、これまで分からなかった現象を捉えようとしており、電池を劣化しにくくするメカニズムの発見に期待が持てるかもしれない。

●ナノテクが電池を変える

 今後、よりエネルギー効率がよい電池を作るのにも、ナノレベルの技術が貢献するかもしれない。

 内本教授が紹介したのは、たとえばマグネシウムやアルミニウムを電解質に用いた蓄電池だ。リチウムイオン電池の、マグネシウムなら2倍、アルミニウムなら3倍の電気をためることができる。

 あるいは、境界面にだけプラチナを使った電極。プラチナは、金と並んで性質が変化しにくく、ハイテク製品の製造に不可欠なレアメタルの一つだ。ほかの物質の化学反応を速めるため、自動車の排ガス浄化や燃料電池などに使われている。

 しかし、1年間の生産量が世界で約205トン。地球上の埋蔵量はわずか7万1210トンと言われている。南アフリカなどに産出国が限られ高価なため、燃料電池の開発では、代替物質の開発も進む。内本教授らは、プラチナの使用量を、現在自動車1台の燃料電池に必要な量の10分の1にまでおさえて、同じ性能を発揮できる技術の開発を目指す。

 内本教授は最後に、「燃料電池、蓄電池の技術は、エネルギーと環境の問題に対処する有力な分野。グリーンイノベーションの中核を担う。今後も、使い道にあった蓄電池、燃料電池の開発を目指し、幅広い技術を結集させていきたい」と、抱負を語った。

検索フォーム

注目コンテンツ

  • 写真

    【&M】「カツカレー」発祥の店

    口福のカレー

  • 写真

    【&Travel】香港のイメージ通りの場所で

    永瀬正敏フォト・ワークス

  • 写真

    【&TRAVEL】気になるピンクのハート

    上から撮るか、下から撮るか

  • 写真

    【&M】僕に大切にされてね。

    ドキドキを提供する歌

  • 写真

    【&w】希望を灯したのは妻の言葉

    花のない花屋

  • 写真

    好書好日実家じまいに1800万円!

    松本明子が語る「しくじり」

  • 写真

    論座元首相銃撃 残った課題(上)

    今日の編集長おすすめ記事

  • 写真

    アエラスタイルマガジン環境に配慮した素材を用いた

    メレルのスニーカー

  • 写真

    Aging Gracefully更年期の対処法とは

    スペシャル対談 Vol.4〈前編〉

  • 写真

    GLOBE+「肥満の警官は加われない」

    警察が太りすぎ対策に乗り出す

  • 写真

    sippo犬は留守番が苦手

    少しでもストレスを減らすには

  • 働き方・就活

  • 転職情報 朝日求人ウェブ

学校最新情報