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【戸田拓】小中学生の時に「ゆとり教育」を受け、批判や冷やかしを込めて「ゆとり世代」と呼ばれる学生らが6日、アンケートを通じて自分たちの性格や行動様式を検証した意識調査を発表した。この世代にも様々なタイプがいると説き、「ゆとり教育は新しい価値観も与えてくれた」と再評価を求めた。
広告やマーケティングを学ぶ首都圏の5大学(駒沢・上智・専修・東洋・日本)の3年生有志による「大学生意識調査プロジェクト(FUTURE2013)」。各校160人ずつ計800人のアンケート回答を分析し、「『ゆとり』の現実 『さとり』の真実」と題した報告書をまとめた。
それによると、「ゆとり教育」への評価は半々に割れた。この世代はネット上などではしばしばからかいの対象として「ゆとり」と呼ばれるが、「自身を『ゆとり』と思うか」という問いには「そう思う」「ややそう思う」の合計が7割に上った。
調査では「ゆとり」の自覚、呼ばれた時の抵抗感のあるなしを軸に学生を4タイプに分類。自らを「ゆとり」と認めて抵抗を感じない学生が3分の1を超える285人に上った。報告書ではこの層を「真性ゆとり層」と名付け、「自分に甘く、競い合って努力する気もない無気力な性格」「現実から目をそらす怠惰な面がある」と厳しい目で分析した。
一方で、自覚しつつも抵抗感がある「あせり層」、自分がそうだとは思わないが言われると抵抗を感じる「きっちり層」、「ゆとり」呼ばわりを気にかけない「つっぱしり層」も存在するとし、「ゆとり世代」の多様性を強調した。
上智大の新美有加さんは発表で「ゆとり教育は自分と向き合うための時間も与えてくれた」と述べた。また、「『失われた20年』で世間の悪い面を見たゆとり世代は考えが現実的。行動が誤解されがちなのは、従来の価値観や評価基準ではかりきれなくなっているから」とも分析し、この世代に理解を求めた。
指導にあたった専修大経営学部の石崎徹教授は「本来いい言葉であるはずの『ゆとり』が、悪い意味で使われて学生をひとくくりにしている。4層化した分析は非常に面白い」と評価。上智大経済学部の杉谷陽子准教授は「『ゆとり』とラベリングされて自分がそうだと思いこんでしまう学生もいると思う。自信の有無が『ゆとり』の自覚にかかわっているのではないか」と指摘した。
2002年度に施行された国の学習指導要領は、経験重視型の教育方針、いわゆる「ゆとり教育」を提唱して学習時間と内容を削減したが、「学力低下につながる」といった批判もあって社会問題化。11年度からは再び学習内容を増やす方向に転じた。