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天才たけしの元気が出るテレビ『ボクシング予備校』その後(2)

2006年08月03日

 飯田覚士選手はその後、WBA世界スーパーフライ級チャンピオンにまで登りつめていった。それは1997年、彼が、“天才たけしの元気が出るテレビ!『ボクシング予備校』”に出演してから7年目のことだった。

 その間に飯田選手は岐阜経済大学を卒業してもいた。WBA世界スーパーフライ級チャンピオンは大学出のチャンピオンでもあったわけだ。

 彼にとって、元気が出るテレビから出たボクサーという立場は、どんな感じだったのだろうか。きっと、いいこともたくさんあったと思う。でもいやなこと、たとえば、やっかみ半分に良からぬことを言うやからがいたとか、そんなこともたくさんあったと思う。

 しかしそれに動ぜず、思い上がることもすねることもなく、学業とボクシングを見事に両立させた彼は、本当にかっこいいと思う。

 それに、ひとたびリングに上がれば的確なパンチを繰り出す素晴らしいボクサーだったが、話し方や表情はいつも穏やかでやさしい人だった。

 顔立ちの良さもさることながら、内面からにじみ出る人柄の良さがしっかり顔に出ているこういう男を、本当の“男前”というのだなと、彼を見ながら私はひそかに合点したりもしていたのだった。

 「元気が出るテレビ」が終了して早10年。

 私は私でニューヨークに行ってしまったので、残念ながら飯田君(いきなり“君”づけになっているが、ずっとこう呼んでいたので、これ以降は君づけにさせてね)とは、その後なかなか会えていない。

 彼は今どうしているのかなあ、会いたいなあと思っていたら、元気が出るテレビのDVDが発売されることになり、その企画で、当時の出演者を“マドマーゼル兵藤(私扮する番組のキャラクター)”が訪ねて行くというのがあり、なんと、飯田君に再会できることになったのだった。

 1999年にプロボクサーを引退した彼は現在、東京都中野区弥生町に「飯田覚士ボクシング塾ボックスファイ」というスポーツジムを主宰しながら、テレビでのスポーツ解説、講演、スポーツイベント出演など、ボクシングは魅力的なスポーツだと思ってくれる人々を少しでも増やしたいと、その底辺拡大を唱える活動を展開中なのだという。

 なんだか飯田君らしくていいなあ。

 中でもこの「ボックスファイ」というジムでは、女性向けのボクシングエクササイズや男性向けの運動不足、体力不足解消のためボクシングの練習メニューを取り入れたトレーニングのほかに、子どもを対象にしたキッズクラスも評判を呼んでいるのだという。

 子どももできて、お父さんになった飯田君らしくていいなあ。

 そんなわけでマドマーゼル兵藤の私、早速、元世界王者おっとこ前の飯田君を訪ねて中野のジムにお邪魔した。

 ワン、ツー、スリー、フォー

 ちょうどキッズクラスの真っ最中。

 子どもたちの前に立って指導しているのは、おー、あれはまさしく飯田君、相変わらずのおっとこ前で、うれしいなあ。

 なんでも、近頃の子どもはテレビゲームや塾通いで、体を動かす機会が極端に少なくなっているため、すばしっこさに欠け、バランス感覚が悪く、うまく転べない子が多くなっているそうだ。その結果、勉強にも集中できない子が増えていることに危惧(きぐ)している飯田君が、子どもたちのために自分が現役時代から続けている練習を基礎にした、“ビジョン(視覚)トレーニング”というものを考案したのだそうだ。それを今やっているのかな? で、“ビジョントレーニング”ってどんなトレーニング?

 その話を詳しく聞くために、練習が終わるのをちょっと待とう。

 (次週に続く)


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兵藤ゆき プロフィール

兵藤ゆき

名古屋市出身。血液型O型。
東京・名古屋・大阪で深夜ラジオのパーソナリティーを皮切りに個性的なキャラクターでテレビ番組に登場し、その後エッセー、脚本、作詞、歌手、小説等ジャンルを超えて幅広く活躍。1996年に長男誕生後、ニューヨークに。
 主な著書に「ぶんちんタマすだれ」「ゆき姐のニューヨーク裏うら散歩」「でこぼこなクラス写真〜子どもたちは黙っちゃいない〜」(いずれもワニブックス)、「ニューヨーク熱血井戸端会議」(集英社be文庫)などがある。

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