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愛にあふれたアーティスト林世宝さん(1)

2008年2月14日

  • 筆者 兵藤ゆき

 ニューヨーク(NY)のブルックリンにアトリエがあるアーティストの林世宝(りん・せいほう)さん。

 1962年に台湾で生まれた彼は、16歳になった頃にはもう画家を志していたのだそうだ。

 まず水墨画を学んだ彼は、高校3年生のときに早くもその才能を認められ、台湾国内の美術大会で最優秀賞を受賞。その後も、様々な大会で入賞していったのだそうだ。

 23歳になった林さんは、今度は日本画の技法を学ぼうと日本への留学を決意。留学先は名古屋芸術大学。そう、私の地元、名古屋の学校である。

 NYで共通の友人を介して2年ほど前に知り合った私たちは、

 「名古屋なら、私の地元ですがね」

 「そうですか、今でも名古屋には友だちがぎょうさんおるよ(たくさんいるよ、の意味)」

 「わー、名古屋弁、知ってるんですねえ」

 「もちろんですよ。今は大丈夫ですが、名古屋に来たばかりのときは、まったく名古屋弁がわからなくてどうしようかと思いましたがね」

 と、会った早々、名古屋弁で話が盛り上がった。

 実は林さん、日本に留学した当初は、まず東京で日本語を勉強したのだそうだ。

 その後、名古屋短期大学に入学し、さらに四大の名古屋芸術大学に編入。

 しかし、東京での日本語の勉強がまったく役に立たないのではないかと思うほど、最初は名古屋弁にびっくりしたのだそうだ。

 「小牧に下宿先があったんですけど、最初の日、大家のおばさんが、『デャーコンデー、ウミャーデ、タベニャーカー』って声かけてくれたんです。でも、“デャーコン”ってなんのことだかさっぱりわからなくて…」

 「ああ、デャーコンは大根ですね」

 「おー、さすが、わかりますね」

 「もちろんですとも。デャーコンデー、ウミャーデ、タベニャーカーは、大根を煮たよ、美味しいから食べないか、という意味の名古屋弁ですね」

 「そうです、そうです、わー、うれしいなあ、名古屋弁がわかる人とNYで会えるなんて」

 「こちらこそ、名古屋に留学してきて、名古屋弁を覚えてNYで活躍しているアーティストに会えるなんて、ものすごく、うれしいでかんてー」

 今は難なく名古屋弁をあやつる林さんだが、最初一番心配したのは、大学での勉強も名古屋弁だったらどうしよう、だったそうだ。

 でも、幸い授業は標準語だったので一安心したそうだ。

 さて、それからはもうなんだか林さんとは大の仲良しになってしまって、ときどき息子を連れて林さんのアトリエに遊びに行って、息子も私も、画用紙や和紙、Tシャツなどにたくさん絵を描かせてもらった。

 林さんは今や世界的なアーティスト(日本への留学後も、日仏現代美術展入賞、現代美術展入賞、日展・日本画部門初出品で初入選、日本現代文化芸術大賞受賞などと、日本でも入選を続け、台湾時代も含め入賞経験20数回にも及ぶ。2005年には、「愛・地球博」に、30万本ものペンを集めて平和の大切さを訴える、「平和行進曲II 知恵の門」を制作、出展。2006年には、愛の原点、お母さんの乳首を連想させるおしゃぶりを世界中から20数万個寄付してもらい(ちなみにそのうちの1個はうちの息子のもの)、「平和行進曲III クリスマス LOVE ツリー」を制作。福岡市役所前にクリスマス・シーズンに展示され、バレンタイン・シーズンには小倉のデパートにも展示。丁度今は、NYのクイーンズ・クロッシング・モール(QUEENS CROSSING MALL)の屋外広場に、「天時・地利・人和」というステンレスの彫刻が設置され、モール内のギャラリーでは1月18日から2月16日まで個展が開催されている)なのに、ものすごく気さくで、自分の絵の技法をどんどん私たちに教えてくれた。

 今や2児のパパでもある林さんだが、なんと彼は、小学校5年生から家族と離れ、下宿で1人暮らしを始めたという。

 林さん、11歳だったあなたに、いったい何が起きたんだ?

(次回に続く)

兵藤ゆき プロフィール

兵藤ゆき

兵藤ゆき(ひょうどう・ゆき)

名古屋市出身。血液型O型。東京・名古屋・大阪で深夜ラジオのパーソナリティーを皮切りに個性的なキャラクターでテレビ番組に登場し、その後エッセー、脚本、作詞、歌手、小説等ジャンルを超えて幅広く活躍。1996年に長男誕生後、ニューヨークにで11年余り生活。2007年に日本に帰国。

主な著書に、「子どもがのびのび育つ理由」(2008年4月 マガジンハウス)(対談集)「頑張りのつぼ」(05年7月 角川書店)…ニューヨークで活躍する日本人8人の方との書き下ろし対談集(宮本亜門・千住博・宮本やこ・野村尚宏・平久保仲人・河崎克彦・高橋克明・小池良介)、(翻訳本)「こどもを守る101の方法」(06年7月 ビジネス社)などがある。

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