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パパイヤ

2008年2月28日

  • 筆者 兵藤ゆき

 ニューヨークに住むアーティストの林さん(前回参照)から、エッセーを読んだよ、とのメールが届いた。

 インターネットで読める新聞は、これだから便利だ。

 コンピューターがあって、インターネットがつながる状態であれば、世界中どこででも読むことができる。

 メールによると林さんは、作品の制作に忙しくて、ブルックリンのアトリエに数日間泊まり込んでいたので、読むのがちょっと遅くなってしまったとか。

 3階建ての民家の3階が、林さんのアトリエ。

 1階と2階にはそれぞれほかの人が住んでいた。

 3階の林さんのアトリエに行く階段には、鍵付きのドアが付いていた。

 鍵を開けて3階に上がって行くと、右手突き当たりに20畳ほどの一つ目の制作室。

 左手突き当たりに同じく20畳ほどの2つ目の制作室。

 正面に10畳ほどの部屋が2つあり、右側の部屋にはベッドがひとつ置いてあった。泊まりがけで制作しているときは、そこで寝ているのだとか。

 あとは、風呂とトイレのある部屋がひとつあった。

 私も随分アトリエにはお邪魔したが、そういえばあそこにはコンピューターはなかった。あるのは、林さんの完成した作品や、制作中のものの数々。画材や釘や廃材や、なんやかや。

 彼の作品は、高価な画材で作るのではなく、文房具屋さんで買ってきた普通の絵の具や、どこの家の中にもあるような台所用品や道端に捨てられていたプラスティックのおもちゃや洋服など、ありとあらゆる物を使って作られているものが多い。

 りっぱな筆じゃなくても、使い終わった歯ブラシでも、ホウキでも、使いようによって、それだからこそ出せる味というものがあるし、なんだってアートに使ってしまうし、アートにしてしまうのだ。

 彼は、アートの技法をたくさん勉強してきたので、応用が利くのだろう。

 だから林さんの作品は面白い。

 さて、前回のエッセイを読んだ林さん、30数年前、11歳の頃の下宿生活が懐かしく思い出されたようで、あの豆腐屋のおじいさんは今どうしているだろう、なんてメールに書いてあった。

 林さんが下宿していた家は、パパイヤを栽培している農家だったのだそうだ。

――以下、林さんのメールから抜粋。

「あの頃、大きなパパイヤを毎日5、6個食べてたんだね。

久し振りに田舎に戻った母が、私の手を見てびっくり。

あまり真っ黄黄色なので、医者に連れて行かれましたよ。

そのお医者さんの質問は、『一日何個パパイヤ食べてるの?』

母は首をかしげて、『何か関係があるんですか?』と聞くと

『ここはパパイヤの産地ですからね」と分かってたんだね。

『そりゃ、パパイヤの食べすぎだべ』ということで、

それからは一日1、2個にしたもんだ。

10代の食べ盛りの思い出だね」

 これを読んで夫の話しを思い出した。

 彼が小学校5、6年生の頃、冬休みが終わって学校に行くと、手のひらがあまりに黄色いのでみんなにびっくりされたのだそうだ。

 本人はまったく気にしていなかったのだが、まわりの反響の大きさにびっくりしていたら、担任の先生が言ったそうだ。

 「冬休み、みかんばっかり食べていなかったか?」

 そう言われれば、確かに田舎から送ってもらった木箱いっぱいのみかんを、ほとんど彼が平らげたのだとか。

 みかんなどの柑橘類をあまりにたくさん食べた場合、皮膚が黄色になることがあるそうだ(柑皮(かんぴ)症)。

 実は私も小学生の頃、同じような経験をしたことがある。

 林さんのメールを読んで、ちょっと笑った。

(次回に続く)

兵藤ゆき プロフィール

兵藤ゆき

兵藤ゆき(ひょうどう・ゆき)

名古屋市出身。血液型O型。東京・名古屋・大阪で深夜ラジオのパーソナリティーを皮切りに個性的なキャラクターでテレビ番組に登場し、その後エッセー、脚本、作詞、歌手、小説等ジャンルを超えて幅広く活躍。1996年に長男誕生後、ニューヨークにで11年余り生活。2007年に日本に帰国。

主な著書に、「子どもがのびのび育つ理由」(2008年4月 マガジンハウス)(対談集)「頑張りのつぼ」(05年7月 角川書店)…ニューヨークで活躍する日本人8人の方との書き下ろし対談集(宮本亜門・千住博・宮本やこ・野村尚宏・平久保仲人・河崎克彦・高橋克明・小池良介)、(翻訳本)「こどもを守る101の方法」(06年7月 ビジネス社)などがある。

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