2008年3月6日
先日、息子と一緒に名古屋の実家に帰ってきた。
父の部屋には仏壇がある。
仏壇には、毎日姉がお茶とご飯を供えている。
しかし、ご飯には気をつけなければならない。
隙あらば、犬のアチャが食べようと狙っているからだ。
台所や食卓にも食べ物を出しておいてはいけない。
台所のガスレンジの上にうっかりチキンスープが入った鍋を置いておいたりしたら、たとえ蓋(ふた)がしてあったとしても、アチャは上手にガスレンジの上に飛び乗って蓋を開け、中のスープを飲んでしまう。
誰もいないときにやるので、まだ誰も見ていないが、それは上手に一滴も残さず飲んでしまう。
我が家には私たち姉妹が小さい頃から、ずっと犬や猫などのペットがいた。
どの子もみんないい子で、いつも家族が癒されていた。
現在は15歳になる三毛猫のキティーと、柴犬風で4歳半になるアチャという犬がいる。
両方ともメスなのだが、生まれて1カ月ほどで我が家にやって来たアチャに、先輩のキティーが一発猫パンチを食らわしてから、両者の力関係は決まった。
アチャの方が、体が大きくなった現在でも、アチャはキティーをちょっと怖がっている。
でも、2匹だけにはしておかないことにしている。
アチャはちょっと飛びかかったつもりでも、キティーは大ダメージを食らいかねない。 姉なり私なり、誰か2匹を見ている者がいないときは、キティーは2階の部屋、アチャは1階の部屋と分けておくことにしている。
我が家はみんな動物が大好きだ。
父は初め、あまり動物が好きではないような素振りをしていたのだが、なんのなんの、 猫のトイレのために毎日庭に小さな穴を掘り、猫が用を足したら土をかぶせてやったり、「猫のご飯を人肌に温めてやったほうが、いい匂いが出るし、おいしいだろう」と、毎回温めてやったりと、ちょっと過保護なくらいかわいがっていた。
犬のアチャは、息子が欲しがったのと、そんな父のために、父と散歩に行ったり、縁側で日向ぼっこをしたり、父の友だち兼介護犬になってくれたらいいよねと、姉と相談して飼うことにしたのだ。
でも、我が家にやって来た当初は、なにせ子犬ゆえ、ガチャガチャガチャガチャ落ち着きがなく、とてもじゃないが父と散歩などできる雰囲気ではなかった。
あの調子で外に出たら、まず、父は転んだだろう。
アチャはそんなことはお構いなしに、父の部屋に入るとうれしくて飛び回っていた。が、しまいには、
「まあ、あっちに行っとれ」と、部屋から出される始末。
でも、父がトイレなどで部屋を出るときには、真っ先に駆けつけてその様子を見ていた。
そして、部屋に誰もいなくなったのを見計らって、父の枕元に置いてあったお饅頭を食べちゃったりしていた。
なーんだ、父の様子を気にしてたんじゃなくて、饅頭を気にしてたのかいと、姉と笑ったりしていた。
アチャがまだ子犬の頃は猫パンチを食らうので、キティーとは別々にしていたが、近頃は一緒に1階の部屋にいることが増えた。
でも、2匹とも家の者に可愛がられて育ったので、姉がキティーをひざの上に置いていると、アチャが焼きもちを焼いて、姉のそばで寝転がって自分にはマッサージをしろとせがむ。
その姿はまるで人間の子どもと同じだ。
動物でも、育てたように育つのだなあと思ったりしている。
(次回に続く)
名古屋市出身。血液型O型。東京・名古屋・大阪で深夜ラジオのパーソナリティーを皮切りに個性的なキャラクターでテレビ番組に登場し、その後エッセー、脚本、作詞、歌手、小説等ジャンルを超えて幅広く活躍。1996年に長男誕生後、ニューヨークにで11年余り生活。2007年に日本に帰国。
主な著書に、「子どもがのびのび育つ理由」(2008年4月 マガジンハウス)、(対談集)「頑張りのつぼ」(05年7月 角川書店)…ニューヨークで活躍する日本人8人の方との書き下ろし対談集(宮本亜門・千住博・宮本やこ・野村尚宏・平久保仲人・河崎克彦・高橋克明・小池良介)、(翻訳本)「こどもを守る101の方法」(06年7月 ビジネス社)などがある。