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マルコ・ポーロ

2008年3月13日

  • 筆者 兵藤ゆき

 名古屋の実家に帰ったとき(前回参照)、夕方アチャの散歩に行くと、近所の小学校低学年くらいの子どもたち、5人が鬼ごっこをして遊んでいた。

 その公園は、直径15メートルほどの円形の敷地の中に、ジャングルジム、滑り台、木馬、ブランコなどの遊具も充実しているし、何といっても周りがお花畑で囲んであるのが可愛らしい。

 アチャは真っ先にお花畑に行くと、花の匂いをかぎはじめた。

 「そっか、春だもんね、お花がいい匂いだよね」と、三色スミレや、雛菊の可愛い花を私も眺めていると、あとから来たお散歩犬が、お花畑を囲む杭にマーキングをした。

 なんだ、アチャはほかの犬のマーキングの匂いをかいでいたのか。

 でも、お花畑の杭とはいえ、マーキングはいかんでしょ、花が枯れてしまうでしょ、と、思っていたら、飼い主が、

 「あー、だめだめ、お花が枯れちゃうよ、あっちに行こう」

 と、犬を連れて公園から遠ざかって行った。

 グッドマナーである。

 アチャもマーキングをするといけないので、私も公園をあとにしようとしたら、

 「子どもが遊んでいるのをちょっと見ていかない?」

 というような目つきで、アチャは私を見上げた。

 「じゃあ、見るだけだよ、公園をトイレ代わりにしちゃだめだよ」

 と、アチャに釘を刺し、しばらく公園のベンチに座って、子どもたちを見ることにした。

 アチャは、ベンチの下の柔らかな土の上に寝そべり、春の優しい日差しを浴びながら子どもたちを眺めている。

 子どもたちの鬼ごっこ、公園の遊具が安全地帯のようで、そこの上には10数える間だけ留まっていることができ、鬼になった子はそこにいるほかの子どもにタッチすることができないルールのようだった。

 ニューヨークの子どもたちもよく鬼ごっこをして遊んでいた。

 鬼ごっこは、「Tug(タグ)」

 鬼のことは、「It(イット)」

 逃げる子は、「You can’t catch me,na na na na na(ユー キャント キャッチ ミー ナ ナ ナ ナ ナ)」と言いながら逃げていた。

 鬼が目隠しして、「鬼さんこちら、手のなるほうへ」、という遊びもやっていた。

 これは、鬼になった子(目隠しをしたり、目をつぶったりしている)が、「マルコ」と叫ぶと、ほかの子は、「ポーロー」と言って逃げる。鬼はその声をたよりに捕まえに行く。鬼さんこちら…と同じなわけだ。

 「鬼さんこちら…」が、なぜ、「マルコ・ポーロー」なのか。

 彼らも子どもの頃からこう言い合いながら遊んでいたという、アメリカ人の先生や友だちに聞いたことがある。

 みんな本当のところは知らないと言っていたが、推測はみんな同じだった。

 「マルコ・ポーロは中国など見知らぬ国を旅して、『東方見聞録』を書いた。丁度、目をつぶったときのように、何も見えない、わからないところを手探りで旅をした。その姿から、『マルコ・ポーロー』の遊びができたんじゃないか」

 公園で鬼ごっこをして遊ぶ子どもたちを見ながら、そんなことを思い出していた。

 アチャはというと、うつらうつらと春の日差しに包まれて、うたた寝中でありました。(次回に続く)

兵藤ゆき プロフィール

兵藤ゆき

兵藤ゆき(ひょうどう・ゆき)

名古屋市出身。血液型O型。東京・名古屋・大阪で深夜ラジオのパーソナリティーを皮切りに個性的なキャラクターでテレビ番組に登場し、その後エッセー、脚本、作詞、歌手、小説等ジャンルを超えて幅広く活躍。1996年に長男誕生後、ニューヨークにで11年余り生活。2007年に日本に帰国。

主な著書に、「子どもがのびのび育つ理由」(2008年4月 マガジンハウス)(対談集)「頑張りのつぼ」(05年7月 角川書店)…ニューヨークで活躍する日本人8人の方との書き下ろし対談集(宮本亜門・千住博・宮本やこ・野村尚宏・平久保仲人・河崎克彦・高橋克明・小池良介)、(翻訳本)「こどもを守る101の方法」(06年7月 ビジネス社)などがある。

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