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林さんが思う良い教育

2008年6月12日

  • 筆者 兵藤ゆき

 中国語で、「三到(サンタウ)」という言葉も、学校の先生がよく使うと林さん(前回参照)が教えてくれた。

 一は、「眼」、二は、「心(脳)」、三は、「手」、「この三つを、いつも持ってきて」、という意味なのだそうだ。

 それに加えて学校には、「口到(コウタウ)」、すなわち、「口も持ってきて」と言われているそうだ。

 「口を持っていく」ということは、「分からないことがあったら先生に質問する」、ということで、学校に「体」だけ来るのではなく、目も、心も、手も、口も、一緒に持ってきて、見て、考えて、手作業をして、分からないことは先生に質問することが大切ですよ、というわけだ。

 「自分の手で何かを作るためには、この三到がとても大切で、眼と脳と手が共同して動いてくれないとなかなかうまくいきません。面白いことをしていると、更に好奇心が湧いてきて、想像力も膨らみ、子どもの好奇心の欲望をかきたてます。そして、子どもが何かを作っているときには、作ったものを褒めることがとても大切です。褒められるとうれしくなって、また作ろうと思うからです。子どもの才能を生かす、発揮させるというのはこういうことで、これが自然式の教育であり、子どもにとても合っているのではないかと私は思います。春咲く花は、春が来るまで咲きません。春が来るまでの間に大地の栄養分を吸収し、どれだけ養分をしっかり吸収できたかによって、花の美しさが少しずつ違います。子どもの教育も同じように思います。教育ではまず好奇心を養成して、好奇心が知識欲に変わるのを待ちます。好奇心は欲望の一種ですから、欲望の強い人は知識欲も強いのです。でも、欲望ですから間違った方向に行ってしまっては困ります。そこが先生の腕の見せ所なのでしょうね。うまく知識欲を引き出せる先生が良い先生ですね。知識欲は強い方がいいでしょう。その知識をどうやって使うかは、もう少し先にならなければ見えてこないものです。ここでも辛抱強く待たなければなりません。あせっても春は来ないけれど、待っていれば必ず来ます。子どもの春も待っていれば、それぞれ来る時期が早かったり遅かったりしますが、必ず来て、花が咲くはずです」

と林さんは言う。

 「因才施教(インツァイスーチャオ)」という、孔子の言葉も林さんは教えてくれた。

 これは、子どもの才能を見て教育法を考えるという意味だそうで、教育法は一つではなく、百人いたら百通りの教育法があり、その子ども一人ひとりに合った教育をするのが良いという意味。

 「有教無類(ヨウチャウウーレ)」、これも孔子の言葉で、教育は差別なく皆平等に行うという意味だということも、林さんは教えてくれた。

 今アメリカは、孔子が言ったこの言葉を実行しているように感じると、林さんは言う。

 「もちろん、多民族、多文化の大国で、これを行うのは大変難しいことで、皆平等に教育しようとすれば、ある程度、画一的になるのは仕方がないのかもしれません。でも、少なくとも息子が通っているNY(ニューヨーク)の公立小学校のように、違う教育方針の学校があっても認められるというのは、さすが自由の国、アメリカだなあと思います」

林さんが初めてバスに乗ったのは、中学一年生、飛行機は23歳。

林さんの息子が、初めて飛行機に乗ったのはお腹に入っているときで、それ以来6歳になる現在まで十数回も、アメリカ、日本、台湾を飛んでいるそうだ。

 「息子と私では、育った環境も年代もまったく違うけれど、私が田舎で自然と一緒に遊びながら学んだのと同じような自然の教育法を大都会マンハッタンで息子が受けているのを思うと不思議な感じがしますし、良かったなあと思います。夢の中で台湾の田舎での自分の子ども時代を振り返り、NYで生まれ育っている自分の子どもたちの環境とはずいぶん違うけれども、教育の面で不思議と共通する部分があり、結局、良い教育は、場所も問わず、時代も問わずということなのだなあと確信が持てたような気がします」

林さんはうれしそうにそう話してくれた。(次回に続く)

   ◇

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兵藤ゆき プロフィール

兵藤ゆき

兵藤ゆき(ひょうどう・ゆき)

名古屋市出身。血液型O型。東京・名古屋・大阪で深夜ラジオのパーソナリティーを皮切りに個性的なキャラクターでテレビ番組に登場し、その後エッセー、脚本、作詞、歌手、小説等ジャンルを超えて幅広く活躍。1996年に長男誕生後、ニューヨークにで11年余り生活。2007年に日本に帰国。

主な著書に、「子どもがのびのび育つ理由」(2008年4月 マガジンハウス)(対談集)「頑張りのつぼ」(05年7月 角川書店)…ニューヨークで活躍する日本人8人の方との書き下ろし対談集(宮本亜門・千住博・宮本やこ・野村尚宏・平久保仲人・河崎克彦・高橋克明・小池良介)、(翻訳本)「こどもを守る101の方法」(06年7月 ビジネス社)などがある。

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