2008年6月19日
子どもや犬と一緒に散歩をしていると、初めて会った人たちなのにお互いの子どもや犬のことで話が弾み、すぐに友だちになったりすることがある。
5年前の夏、NY(ニューヨーク)から名古屋の実家に一時帰国しているとき、こんな風にして知り合い、以来ずっと仲良くしてもらっているS家族もそうだ。
この家には、うちの息子(現在12歳)と同じ年の男の子と2つ下の男の子がいる。
うちは柴犬が1匹だが、彼らの家にはラブラドールレトリバーが3匹いる。
初めて出会ったのは近所の公園。
お互い子どもと犬と一緒で、あらー、こんにちわー、なんて言いながらすぐに友だちになった。
以来、夏に一時帰国するたびに連絡を取り合い、子どもたちは互いの家を行き来して遊んでいる。
お父さんはサラリーマン、お母さんは薬剤師で二人とも仕事を持っているのだが、交代で朝夕、犬の散歩を欠かさない。
子どもたちが一緒に行けるときは、彼らも手伝う。
ラブラドールレトリバーは柴犬と比べると、2倍くらい大きい。
うちは柴犬1匹でも大変だと思っているのに、3匹には頭が下がる。
長男(お兄ちゃん)が小学校1年生のときに最初の犬、「くう」が彼らの家にやってきた。
お兄ちゃんは慎重派で、物事をよーく観察し、考えて行動するタイプだとお母さんは言う。
小さい頃から、衝動的にあれが欲しい、これが欲しいと言ったり、行動したりはしなかったそうだ。
そんなお兄ちゃんは犬が大好きだった。
近所のペットショップに行っては犬を抱っこしたりしていたのだが、当時は社宅に住んでいたので犬を飼うことはできなかった。
一戸建てに引っ越して間もなくの頃、いつものようにペットショップに行くと、お兄ちゃんはまだ子犬だったくうを抱っこして、
「この子は僕の犬だ」
と言ったのだそうだ。
「それまでどんな犬を見てもそんなことを言わなかったお兄ちゃんが、直感なんでしょうかねえ、くうを抱いて離さなかったんですよ。慎重派のお兄ちゃんがそこまで言うのなら、ということでくうを飼うことにしたんです。丁度彼が1年生に上がるときでしたね」 そう言うお母さんは子どもの頃から結婚するまで、柴犬、コリー、シェパードなど、常に2匹くらいの犬を家で飼っていたそうだ。
お父さんは小学校1年生の頃に1年間ほど犬を飼ったことがあるそうだが、すぐに死んでしまい、それからは飼ったことがないそうだ。
だから最初くうを飼う話をお父さんに持ちかけたら、えー、っと驚いていたそうだが、飼うようになってからは一生懸命やってくれているという。
「お兄ちゃんもさすが自分で飼いたいと言っただけのことはあり、そりゃあ一生懸命くうの面倒を見ましたよ。まだ小学校1年生だったけど、学校から帰ってきたら、まずくうの犬小屋に行ってウンチをかたづけたり、小屋の中を掃除したり、私たちが言わなくてもちゃんとやってましたよ」
お母さんはうれしそうにそう話してくれた。
くうがこの家の子になってから10カ月ほど経った頃、くうは犬の訓練所に行くことになった。
初めは子犬だったくうも、10カ月もすれば立派な成犬。
お兄ちゃんが散歩に連れて行くにも、くうにちゃんと躾ができていないと危ないことが起きるかもしれない。
訓練所はお母さんが結婚前に飼っていた犬たちも世話になったところだし、家からも車で30分ほどのところにあるのでお兄ちゃんも納得した。
でも、くうは訓練所に家から通うのではなく、預けられることになる。
それも3カ月。
はたしてお兄ちゃん、その寂しさに耐えられるのだろうか…。
(次回に続く)
◇
〈編集部から〉兵藤ゆきさんの最新刊『子どもがのびのび育つ理由(わけ)』(発行=マガジンハウス)が好評発売中です。当コラムの書名部分をクリックしてもお求めいただけることが出来ます。
名古屋市出身。血液型O型。東京・名古屋・大阪で深夜ラジオのパーソナリティーを皮切りに個性的なキャラクターでテレビ番組に登場し、その後エッセー、脚本、作詞、歌手、小説等ジャンルを超えて幅広く活躍。1996年に長男誕生後、ニューヨークにで11年余り生活。2007年に日本に帰国。
主な著書に、「子どもがのびのび育つ理由」(2008年4月 マガジンハウス)、(対談集)「頑張りのつぼ」(05年7月 角川書店)…ニューヨークで活躍する日本人8人の方との書き下ろし対談集(宮本亜門・千住博・宮本やこ・野村尚宏・平久保仲人・河崎克彦・高橋克明・小池良介)、(翻訳本)「こどもを守る101の方法」(06年7月 ビジネス社)などがある。