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犬と少年(4)―お兄ちゃんの挑戦

2008年7月10日

  • 筆者 兵藤ゆき

 かい(前回参照)の訓練はまだ終わっていなかったが、かいはそれまでにも訓練士さんと一緒にプロの競技会に5回出たことがあった。

 うち1回は優勝をしている。

 犬の競技会には、スタイルを競う「チャンピオン決定審査会」と、服従訓練の習熟度を競う「訓練チャンピオン決定競技会」の大きく2種類があるそうだが、かいが訓練士さんと一緒に出場したのはプロの部の「訓練チャンピオン決定競技会」。お兄ちゃんが訓練所の所長さんからすすめられたのは、そのアマチュアの部の最初の段階で、4部―G1 というものだった。

 アマチュアといっても、競技会に出てくるのはほとんどが大人だという。

 お兄ちゃんは二日ほど悩んだ。

 ぼくにできるだろうか……、プロの訓練士さんと一緒だったから、かいはちゃんと競技会に出られたのだろうし、優勝できたのかもしれない。

 ぼくにできるだろうか……、かいが子犬のときから世話をしてきたし、訓練の途中で骨休めのために家に帰ってきたときには、散歩に連れて行ったり、家の中で遊んだり、夜は一緒に寝たりして、かいとはずっと仲良しだが、競技会となると話は別だ。一定の種目を一緒にクリアーしなければならない。

 ぼくにできるだろうか……、できないかもしれない。

 でも、お兄ちゃんは思った。この一歩が踏み出せなければ、犬の訓練士にはなれない。ぼくの夢は犬の訓練士じゃないか、ここで悩んでいてどうするんだ、そうだ、やるっきゃない。

 お兄ちゃんはとうとう決心した。

 「ぼく、やります」

 お兄ちゃんは早速、訓練所の所長さんに連絡をした。

 「では、5月の末に岐阜県で開かれる、訓練チャンピオン決定競技会を目指して、本格的に練習をしましょう」

 所長さんはうれしそうにそう言った。

 競技会まで、あと1カ月ちょっと、そんなに時間はない。

 お兄ちゃんはどきどきした。

 でも、自分で決めたんだ、やるっきゃない。

 「はい、ではよろしくお願いします」

 さあ、いよいよお兄ちゃんとかいの競技会へ向けての特訓が始まった。

 かいは丁度骨休めのために家に帰っていたので、お兄ちゃんは週末かいと一緒に訓練所に通うことになった。

 家族も、お兄ちゃんの志をバックアップすべく、全面協力体制に入った。

 訓練所は家から車で30分くらいのところにある。

 仕事などの都合でどちらかが行けないときもあったが、競技会までのほとんどの土日、兄弟とかいを車に乗せて、両親は訓練所に出かけて行った。

 訓練所に着くと、お兄ちゃんとかいはすぐに練習。

 4部―G1の競技とは、ざっとこんな感じだ。(お兄ちゃんから聞きました)

 ――まずは、犬にリードをつけた状態でスタートのA地点からまっすぐ歩く。大人の歩幅で10歩ほど行くとB地点。そこを右に直角に曲がり、そこからまた10歩ほどまっすぐ歩く。続いて、左に直角に曲がり、10歩ほどまっすぐ行くとC地点。そこで向きを変え、今来たルートを今度は走ってA地点まで戻る。A地点に戻ったら、A地点とB地点の間に犬を立たせ、犬の回りを人間が2回回る。それを終えると、今度はリードなしで今やったことと同じことをする。最後に、A地点に犬を座らせ、人間は10メートルほど離れたところに行き、そこから犬を呼ぶ。呼ばれた犬は走って人間の前に行き、座る。それから人間の横に犬を移動させ、座らせて終了――。

 さあ、いよいよお兄ちゃんの挑戦が始まった。

(次回に続く)

兵藤ゆき プロフィール

兵藤ゆき

兵藤ゆき(ひょうどう・ゆき)

名古屋市出身。血液型O型。東京・名古屋・大阪で深夜ラジオのパーソナリティーを皮切りに個性的なキャラクターでテレビ番組に登場し、その後エッセー、脚本、作詞、歌手、小説等ジャンルを超えて幅広く活躍。1996年に長男誕生後、ニューヨークにで11年余り生活。2007年に日本に帰国。

主な著書に、「子どもがのびのび育つ理由」(2008年4月 マガジンハウス)(対談集)「頑張りのつぼ」(05年7月 角川書店)…ニューヨークで活躍する日本人8人の方との書き下ろし対談集(宮本亜門・千住博・宮本やこ・野村尚宏・平久保仲人・河崎克彦・高橋克明・小池良介)、(翻訳本)「こどもを守る101の方法」(06年7月 ビジネス社)などがある。

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