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犬と少年(5)―訓練開始

2008年7月17日

  • 筆者 兵藤ゆき

 最初は、かい(前回参照)なしで、お兄ちゃんと女性の訓練士さんだけの練習だった。

 「訓練チャンピオン決定競技会」の種目を、訓練士さんと一緒に動きながら覚えていくのだ。

 まずは、スタートのA地点から大人の歩幅で10歩ほどまっすぐ歩く。自分の左側にかいがいたらと想像しながら歩く。

 B地点に着いたら、今度は右に直角に曲がる。かいと一緒に、曲がる…。

 「犬は人間と違って、いきなり直角に曲がるのは難しいから、曲がるちょっと前に合図してあげるといいですよ」

 訓練士さんがポイントを教えてくれる。

 またまっすぐ10歩ほど歩いて、今度は左に直角に曲がる。

 自分が曲がるちょっと前に、かいに合図だな。

 お兄ちゃん、ポイントのおさらい。

 そこからまたまっすぐ10歩ほど歩いてC地点。

 Uタ−ンをして、今度は走ってA地点まで戻り、A地点とB地点の間にかいを立たせ、かいの回りを自分が2度回る。

 次はリードなしで今やったことと同じことをして、最後にA地点にかいを座らせ、10メートルほど離れたところから呼び、走って来たかいを自分の前に座らせる。

 最後は自分の横にかいを移動させ、座らせて終了。

 うーん、長い。

 でもお兄ちゃん、最後までちゃんと覚えた。

 「OKです。さて、いろいろポイントを話してきましたが、犬の訓練で一番大切なことは、犬に命令しながらやるのではなく、一緒に遊んでいる感じで、犬をのせて、楽しませながらやることなんですよ」

 そっか、そういえば、かいは訓練士さんたちとやっているときは、楽しそうだもんな、なるほどなあ。

 お兄ちゃんはすごく納得した。

 「じゃあ、今度は弟くんに、かいの役をやってもらって練習しましょう」

 えっ? 弟が、かいに?

 お兄ちゃんはちょっと困った。

 やってくれるかなあ…。

 「いいよ、ぼく、かいね」

 なーんだ、心配することはなかった。

 弟くんはこころよく、かいの役を引き受けてくれたのだった。

 よし、かい、行くぞ!

 お兄ちゃんはそう言うと、A地点からスタートした。

 かい、いや、弟くんは楽しそうについて来てくれる。

 「いいよ、いいよ、その調子」

 訓練士さんも褒めてくれる。

 弟くんがのってやってくれるので、お兄ちゃんも楽しんで練習ができた。

 そして、いよいよ、かいとの練習だ。

 お兄ちゃんはなんだかうれしかった。

 ずっと、訓練士さんがやっているのを見ていたが、今日からは自分でやるのだ。

 お父さんは言う。

 「お母さんが小さい頃から犬を飼っていて、彼女が犬好きなのはよく知っていたけれど、まさか自分の家で犬を飼うことになるなんて、まして、家の中で一緒に暮らして、おまけにベッドで一緒に寝るなんて、独身の頃は想像すらしませんでしたよ。でも、お母さんもお兄ちゃんもほんとによく犬の世話をするし、特にお兄ちゃんは犬に対して特別な思いがあるようで、くうが家に来たときから、言われなくても一生懸命世話をしたり、学校から帰ってくると、まず、くうを抱きしめて、くうがしたいだけ顔をなめさせてやったり、そりゃたいした可愛がりようなんです。そして今度は競技会でしょ、すごいですよねえ、だから家族でできる限りの応援をしようと思ったんですよ」

 そんなわけで、競技会までの間、ウィークデーの夕方はお母さんと弟くん、土日はお父さんと弟くんが、かいとくうを散歩に連れて行きながら、お兄ちゃんとかいの自主トレのサポートをしてくれたのだった。

 そして、いよいよ、競技会当日がやって来た。

(次回に続く)

兵藤ゆき プロフィール

兵藤ゆき

兵藤ゆき(ひょうどう・ゆき)

名古屋市出身。血液型O型。東京・名古屋・大阪で深夜ラジオのパーソナリティーを皮切りに個性的なキャラクターでテレビ番組に登場し、その後エッセー、脚本、作詞、歌手、小説等ジャンルを超えて幅広く活躍。1996年に長男誕生後、ニューヨークにで11年余り生活。2007年に日本に帰国。

主な著書に、「子どもがのびのび育つ理由」(2008年4月 マガジンハウス)(対談集)「頑張りのつぼ」(05年7月 角川書店)…ニューヨークで活躍する日本人8人の方との書き下ろし対談集(宮本亜門・千住博・宮本やこ・野村尚宏・平久保仲人・河崎克彦・高橋克明・小池良介)、(翻訳本)「こどもを守る101の方法」(06年7月 ビジネス社)などがある。

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