現在位置:
  1. asahi.com
  2. ライフ
  3. 教育
  4. 子育て
  5. ゆき姐の子育て応援エッセー
  6. 記事

犬と少年(14)―いよいよ発表!

2008年9月19日

  • 筆者 兵藤ゆき

 いよいよ結果発表の時間になった。(前回参照

 もし、優勝できたら、もう少しモニカと一緒に暮らせる…

 お兄ちゃんも弟くんも優勝できたら、また二人で12月中旬に行われるラブラドールだけの競技会に出ることができる…。

 競技会本部テント前には、表彰台が用意された。

 まずは、弟くんが参加した4部―G1・アマチュアの部の発表だ。

 大会委員長がマイクの前に立った。

 入賞者はゼッケン番号で発表されるとのこと。

 弟くんのゼッケン番号は109番。

 第3位は…、

 残念ながら、弟くんとモニカではなかった。

 続いて第2位…、

 これも違った。

 表彰台には3位と2位の人がすでに登っていて、残るは真ん中の1位のみ。

 弟くんはやっぱりだめだったのかな、と思った。

 途中で持ち直したとはいうものの、出だしのつまずきが響いたかもしれない。

 でも、最初の競技会なんだし、しょうがないや……、

 弟くんは半分もうあきらめていた。

 優勝できなかったら、モニカともこれでお別れ、

 そう思うと切なかったが、しかたない……。

 と、

 「おい、お前だぞ!」

 お兄ちゃんが弟くんに言った。

 「えっ? 何?」

 「お前、呼ばれたぞ、お前のゼッケン番号、109番、今呼ばれたぞ、お前、優勝だぞ!」

 気がつくと、会場に来ていた人たちから大きな拍手が起こっていた。    

 「オレ? 優勝? うそ、って感じで最初は信じられませんでした。でも、お父さんもお母さんもお兄ちゃんも、僕とモニカをニコニコしながら見ているし、あー、優勝したんだってやっと理解できて、表彰台のところへモニカと一緒に行きました。でも、なんだか照れくさくて、僕、きっと下ばかり向いていたと思います……」

 弟くんの点数は100点満点中97.2点。

 これは素晴らしい成績だった。

 弟くんは、表彰台の一番高い所にモニカと一緒に登り、表彰状をもらった。

 一人では抱えきれないほどのドッグ・フードが入った大きな袋の前で、モニカと一緒に記念写真も撮ってもらった。

 「12月のラブラドールの大会、出てくれるかい?」

 訓練所の所長さんも、ニコニコしながらやって来て言った。

 「出ます、出ます、もちろん出ます。それまでモニカは僕のうちに居てもいいんですよね」

 弟くんが言うと、

 「お願いできますか?」

 所長さんは嬉しそうにそう言った。

 あとは、お兄ちゃんの結果を待つばかりだ。

 もし、お兄ちゃんも優勝できたら、二人でまた一緒に競技会に出ることができる。

 お兄ちゃんは、今回はちょっと自信があった。

 もし、ライバルがいるとしたら、お兄ちゃんがとても上手だと思ったあの年配の女性しかいない、とも思っていた。

 さあ、いよいよ3部の発表になった。

 お兄ちゃんのゼッケン番号は82番。

 弟くんの4部のときのように、3位からの発表だ。

 第3位…、

 お兄ちゃんのゼッケン番号ではなかった。

 第2位…、

 あっ、あの年配の女性が呼ばれた、ということは……、

 第1位…、ゼッケン番号、82番!

 おー、お兄ちゃんの番号だ……、それも得点は98.8点という高得点!

 「やったー!って感じでした。今回は本当に頑張ったんで、すごく嬉しかったです。それに、もう一度弟と競技会に出られるのも、もちろんものすごく嬉しかったです」

 お兄ちゃんとかいも、弟くんとモニカのように、表彰台の一番高い所に登り、表彰状をもらった。

 そして、ドッグ・フードが入った大きな袋の前で、記念写真を撮った。

 次の日曜日、家族で焼肉屋に行って優勝のお祝いをした。

 かいとモニカには、違う日に庭でバーベキューをし、いつもはドッグ・フードを食べているのだが、お祝いにお肉をごちそうした。

 もちろん、いつも家でお留守番のくうにも、ごちそうした。

 そして、12月中旬の競技会に向けて、お兄ちゃんと弟くんはまた練習を始めたのだった。

(次回に続く)

    ◇

〈編集部から〉兵藤ゆきさんが公式ブログ「子育ての話を聞かせてください―I‘m proud of you―」を開始しました。読者の方からのお便りも書き込めますので、どうぞご参加ください。もちろん、このエッセーに関するお便りもどうぞ。

兵藤ゆき プロフィール

兵藤ゆき

兵藤ゆき(ひょうどう・ゆき)

名古屋市出身。血液型O型。東京・名古屋・大阪で深夜ラジオのパーソナリティーを皮切りに個性的なキャラクターでテレビ番組に登場し、その後エッセー、脚本、作詞、歌手、小説等ジャンルを超えて幅広く活躍。1996年に長男誕生後、ニューヨークにで11年余り生活。2007年に日本に帰国。

主な著書に、「子どもがのびのび育つ理由」(2008年4月 マガジンハウス)(対談集)「頑張りのつぼ」(05年7月 角川書店)…ニューヨークで活躍する日本人8人の方との書き下ろし対談集(宮本亜門・千住博・宮本やこ・野村尚宏・平久保仲人・河崎克彦・高橋克明・小池良介)、(翻訳本)「こどもを守る101の方法」(06年7月 ビジネス社)などがある。公式ブログは、「子育ての話を聞かせてください―I‘m proud of you―」

検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内

[PR]注目情報

ここから広告です

広告終わり

ジャンル別の最新情報はこちら
  • 大学
  • 中学・高校
  • 専門学校