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子どもの安全地帯

2008年11月6日

  • 筆者 兵藤ゆき

 秋晴れの土曜日の昼下がり、東京、府中にある武蔵野公園に友だち家族と行って来た。 私たちのグループは、子どもが3人(12〜13歳)、大人が3人。

 ここはバーベキューができるところがあるのだが、そこは満員だった。

 木のテーブルと長椅子が2脚セットになったそれぞれのバーベキュー・スペースからは、肉やら野菜やらを焼く良い匂いが漂ってくる。

 私たちは昼ごはんを食べてから公園に行ったのだが、もしバーベキューのご相伴にあずかれるのなら喜んで、という感じだったが、残念ながらどこからもお誘いはなかった。ま、知らない人ばかりだったから当たり前、匂いだけで我慢をした。

 バーベキュー・スペースのすぐそばに、小さい山があった。

 高さは5、6メートル、直径は、10メートルくらいはあったかな。

 ちょっと定かではないが、なんの細工もしていない、ただの小山で、その周りもただ草が生えているだけなのだが、子どもたちがたくさん遊んでいた。

 上から、ダダダダーッと駆け降りてきたり、横向きに寝転がってゴロゴロ転がり降りて来たり、犬のように四つん這いになって駆け登って行ったり、洋服が汚れるなんてことはお構いなしに、キャッキャキャッキャ言いながら遊んでいた。

 遊ぶ道具がなくても、そこに小山があるだけで、子どもはいつまでも遊んでいられるのだなと思える光景だった。

 と、バーベキュー・スペースの方から、3歳くらいの女の子がヒョコヒョコと私たちの方にやって来た。

 そばに大人がいるのかな?

 後ろに、お父さんかお母さんがいるのかな?

 と思って見渡してみたが、誰もいない。

 女の子は一人でやって来たのだ。

 「お父さんやお母さんは?」

 と聞いても女の子は首をかしげるだけ。

 「公園には誰と来たの?」

 と聞いても首をかしげるだけ。

 「バーベキューをしに来たの?」

 と聞いたら、

 こっくり、とうなずいた。

 「じゃあ、あそこでバーベキューをやっていたの?」

 と、10メートルほど離れたバーベキュー・スペースを指さすと、またこっくりとうなずいた。

 「一緒に来たのはお父さんやお母さん?」

 こっくり。

 「お父さんやお母さんと離れて知らない人のところに来て、もしその人が悪い人だったら、どこか知らないところに連れて行かれちゃうかもしれないよ」

 女の子にそう言うと、彼女はちょっとびっくりしたような顔をした。

 「お父さんやお母さんから離れちゃだめだよ、もし、ここにまた来たかったら、ちゃんとお父さんとお母さんに言って、連れてきてもらいましょうね、さ、じゃ、お母さんたちのところに戻ろうか」

 そう私が言うが早いか、女の子は一目散にお母さんたちのところに走って戻って行った。

 どうやら、話を理解してくれて、戻った方がいいと思ったようだ。

 女の子が戻ったのは、バーベキュー・スペースで他の誰かと楽しそうに話しをしている女の人のところだった。

 多分、その人が女の子のお母さんだったのだろう。

 女の子はお母さんの足にしがみついた。

 でも、お母さんは、娘にはお構いなしにまだ楽しそうに他の誰かと話をしていた。

 マンハッタンの国連本部横に、入口に警備員がいるよく整備された公園がある。

 うちの息子がまだ2、3歳のころ、その公園で息子を遊ばせていたら、いきなり警備員が飛んできて、

 「子どもはいつもお母さんの手の届く範囲、つまりあなたという安全地帯の中にいるようにしてください。そうでないと、誘拐犯はあっという間に子どもを連れ去りますよ」

 と言われ、おー、ニューヨークはそんなに物騒なところなのかと再認識し、その後はその言葉を肝に銘じてきたが、日本でも実は似たり寄ったりなところがある。

 でも、親たちの認識は、日本の方がまだまだ甘いところがあるように思う。

 行楽のシーズン、子どもを連れて出かけるときは、ぜひ、気をつけてください。

(次回に続く)

    ◇

〈編集部から〉兵藤ゆきさんが公式ブログ「子育ての話を聞かせてください―I‘m proud of you―」を開始しました。読者の方からのお便りも書き込めますので、どうぞご参加ください。もちろん、このエッセーに関するお便りもどうぞ。

兵藤ゆき プロフィール

兵藤ゆき

兵藤ゆき(ひょうどう・ゆき)

名古屋市出身。血液型O型。東京・名古屋・大阪で深夜ラジオのパーソナリティーを皮切りに個性的なキャラクターでテレビ番組に登場し、その後エッセー、脚本、作詞、歌手、小説等ジャンルを超えて幅広く活躍。1996年に長男誕生後、ニューヨークにで11年余り生活。2007年に日本に帰国。

主な著書に、「子どもがのびのび育つ理由」(2008年4月 マガジンハウス)(対談集)「頑張りのつぼ」(05年7月 角川書店)…ニューヨークで活躍する日本人8人の方との書き下ろし対談集(宮本亜門・千住博・宮本やこ・野村尚宏・平久保仲人・河崎克彦・高橋克明・小池良介)、(翻訳本)「こどもを守る101の方法」(06年7月 ビジネス社)などがある。公式ブログは、「子育ての話を聞かせてください―I‘m proud of you―」

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