2008年11月27日
アメリカやカナダ、ヨーロッパなどでは、視力はいいのだが、「ビジョン能力」に問題があり、AD/HD(注意欠落/多動性障害)やLD(学習障害)になっている子どもたちがいることが100年ほど前から認知されているという。
私たちが通常、眼科や学校などで行っている視力検査は、視力表から5メートル離れて、左右片方ずつの視力を測り、表の下の方の小さい目標物がはっきり見えるか見えないかで、視力0.6とか1.5とか、数字が大きいほどよく見えるという認識で、「ビジョン能力」の検査とは違う。
では、「ビジョン能力」とは?
日本語では一般的に「視覚能力」というそうで、簡単にいえば、体を使いこなすのと同じように目を使いこなす能力のことなのだそうだ。
たとえば、眼球が上下左右にしっかり動いて、どれだけ広く見ることができるか、速く動くものをどれだけ正確に目で追って見ていけるかなどの眼球運動能力。
遠くのもの、近くのものにどれだけうまくピントを合わせて見ることができるか、両目でしっかり目標物を見て、立体的にとらえることができるかなどの焦点合わせの力。
目で見たものの情報を脳に伝え、何であるか分析、判断し、行動に移す力。
見たものを正しく映像として脳に記憶し、その情報を整理し、様々なことに効率よく関連付けていける力。
などがあるそうで、「視力」、いわゆる、目標物がどれだけはっきり見えるかというのとは異なるという。
また、視力検査では、5メートル離れたところの目標物を見るという「遠方視力」を検査しているわけだが、実生活では、もっと近い距離、たとえば本を読んだり、ノートに字を書いたりする場合の距離、目から3、40センチくらいの距離、「近方視力」の方が実は重要だったりする。
子どもはまさに学校で本を読んだり、ノートに字を書いたりで、「近方視力」をよく使うし、黒板の字をノートに写す場合は、遠くの字を見て、近くのノートに書くという、遠くのものから近くのものへのピント合わせもスムーズにできないと、字を書くのが遅かったり、写し間違えたりが多くなってしまうこともある。
視力検査で1.5と出て、はっきり目標物が見えていると思っても、視力検査は片方ずつやるので、実は両目で目標物をしっかり捉えているかのビジョン能力の遠近のピント合わせがうまくできているかどうかはわからないわけだ。
また、両目でうまく目標物を捉えられていないと、立体的に物がとらえられなくなる傾向があるし、奥行を測る力、距離感も不足してくるので、運動能力にも響いてくるという。
たとえば、キャッチボール。
フライや、ちょっと変則的に飛んでくるボールがうまくキャッチできない場合、実際はビジョン能力に問題があり距離感がつかめないだけなのに、運動神経が悪いからだと思われてしまうことが多々あるとか。
小学校に上がって、サッカーや野球などの種目、スポーツをやり始めるときに、教える側の大人が、運動神経がいい子、鈍い子でくくってしまう傾向があり、ビジョン能力に着目する指導者はまだまだ日本では少ないとか。
そしてまたビジョン能力に問題があるために、AD/HD(注意欠落/多動性障害)やLD(学習障害)になっている子どもたちがいることも、日本ではまだまだ一般的にはよく知られていないのだとか。
などと、この「ビジョン能力」については、前にここでも紹介した元WBA世界スーパーフライ級チャンピオンの飯田覚士君にいろいろ教えてもらい、とても興味深い話だったし、親が子どもと遊びながらビジョン能力を伸ばす手伝いができるというので、このたび彼と一緒に本を作った。「脳を育てるからだ遊び」(ビジネス社)という本なのだが、この続きまた次回に。
(次回に続く)
名古屋市出身。血液型O型。東京・名古屋・大阪で深夜ラジオのパーソナリティーを皮切りに個性的なキャラクターでテレビ番組に登場し、その後エッセー、脚本、作詞、歌手、小説等ジャンルを超えて幅広く活躍。1996年に長男誕生後、ニューヨークにで11年余り生活。2007年に日本に帰国。
主な著書に、「子どもがのびのび育つ理由」(2008年4月 マガジンハウス)、(対談集)「頑張りのつぼ」(05年7月 角川書店)…ニューヨークで活躍する日本人8人の方との書き下ろし対談集(宮本亜門・千住博・宮本やこ・野村尚宏・平久保仲人・河崎克彦・高橋克明・小池良介)、(翻訳本)「こどもを守る101の方法」(06年7月 ビジネス社)などがある。公式ブログは、「子育ての話を聞かせてください―I‘m proud of you―」
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