2008年12月4日
運動神経が鈍いと思われている子どもの中には、体もちゃんと機敏に動けるのに、眼球運動能力が悪かったり、両目を協調して使いこなせていなかったり、ピント合わせがうまくできていなかったりの、「ビジョン能力」(前回参照)に問題があるため、飛んできたサッカーボールをうまく蹴ることができなかったり、野球のボールをうまくキャッチできなかったりする場合もあるという。
また、飛んでくるボールがはっきり見えていないので、どこに取りに行っていいのかわからなかったり、急にそばに飛んで来たので怖くなって逃げてしまうとかもあるわけで、指導者がビジョン能力のことをよくわかっていないと、「臆病だからボールを怖がり、ボールをキャッチできない」と決めつけてしまったりする場合もあるという。
精神的に怖がりではなくて、ただ、ボールに目の焦点がちゃんと合っていなかったり、遠近がきちんと測れなかったりするので怖がったりしている、というように、ビジョン能力に問題があるのかもしれない、というアプローチを親や指導者ができないと、運動神経が鈍いからしょうがないかで済ませてしまい、子どもの運動能力を伸ばすことができなくなる場合もあるというわけだ。
「運動ができない子」と決めつけてしまう前に、その子のビジョン能力はどうかな、とみてあげて、もし、問題があるようなら、ビジョン能力を上げるトレーニングをしてあげることによって、ずいぶん改善される子が出てくるという。
このビジョン能力、本来はトレーニングしなくても成長に伴って自然についてくるものだという。
たとえば、赤ちゃんの頃からいろいろなものをキョロキョロ見たり、外でたくさん体を使って遊んで、遠くのものや近くのものをたくさん見ながら育ったりしていれば、自然にビジョン能力はついてくるものなのだそうだ。
ところが、体を使って外で思いっきり遊んでいなかったり、日常見るものはテレビだったり、携帯ゲーム機の小さい画面だったりすると、目に関しての生活環境が狭まってしまい、普通なら自然についてくるはずのビジョン能力もちゃんとついてこなくなってしまう場合があるという。
ビジョン能力がちゃんとついてこないということは、目の機能が正常に発達してきていないということで、見ているもののピントが合わなかったり、視野が狭かったりで、これは本人にとって、ピントの合わない度のきついメガネを掛けている状態のようだと飯田君(前回参照)は言う。
そんなメガネをかけていたら、運動するにも不便だし、精神的にもなんだか落ち着かなくなり、そのうちイライラしてきて、集中して何かをやったり聞いたりはできないし、授業中、先生の話を最後までちゃんと聞いていられず、ふらふらとどこかに行ってしまう子が出てきてもおかしくないというものだ。
運動能力のほかに、うちの子はどうも落ち着きがない、集中力がないと思っていたら、ビジョン能力を疑ってかかってみることも必要というわけだ。
ビジョン能力にはこのほかにも、見たものを正しく映像として脳に記憶し、その情報を整理し、様々なことに効率よく関連づけていけるかなどの能力も含まれるとのこと。
なんて話を飯田君から聞いたら、「えー、じゃあどうやってうちの子のビジョン能力を調べたらいいの?」、「どうやったらビジョン能力を鍛えてあげられるの?」と思い、おうちで親が子どもと遊び感覚で毎日楽しくできるビジョントレーニングを飯田君から教えてもらい、「脳を育てるからだ遊び」という本(前回参照)を作ったというわけだ。
次回は同じくこの本に収めた、手足の協調運動の大切さについてのお話を。
(次回に続く)
名古屋市出身。血液型O型。東京・名古屋・大阪で深夜ラジオのパーソナリティーを皮切りに個性的なキャラクターでテレビ番組に登場し、その後エッセー、脚本、作詞、歌手、小説等ジャンルを超えて幅広く活躍。1996年に長男誕生後、ニューヨークにで11年余り生活。2007年に日本に帰国。
主な著書に、「子どもがのびのび育つ理由」(2008年4月 マガジンハウス)、(対談集)「頑張りのつぼ」(05年7月 角川書店)…ニューヨークで活躍する日本人8人の方との書き下ろし対談集(宮本亜門・千住博・宮本やこ・野村尚宏・平久保仲人・河崎克彦・高橋克明・小池良介)、(翻訳本)「こどもを守る101の方法」(06年7月 ビジネス社)などがある。公式ブログは、「子育ての話を聞かせてください―I‘m proud of you―」
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