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ニューヨークからの御一行様(2)―恩返し

2009年1月16日

  • 筆者 兵藤ゆき

 ニューヨーク(NY)からの御一行様、ジョージ、ジーン、アレックス(前回参照)が東京の我が家に着いたのは、去年の暮れも押し迫った29日の午後7時過ぎだった。

 我が家に9泊していく予定の彼らの荷物は、中くらいのスーツケース1個、中くらいのキャリーバックが2個と、思ったほど多くはなかった。

 「着る物とか日本でいっぱい買い物をしたいから、NYからの荷物はなるべく少なくしたのよ」

 スーツケースを部屋に運びながらジーン(お母さん)が言った。

 「はい、これはゆきへのお土産!」

 ジーンは嬉しそうに紙袋を私に渡した。

 中には、紅茶とチョコレートが入っていた。

 二つとも私が大好きな銘柄だった。

 そしてもうひとつ和菓子も入っていた。

 「これはゆきがNYにいる頃連れて行ってくれたマンハッタンの和菓子屋さんで買って来たのよ、懐かしいでしょ?」

 これも私が大好きなお菓子だった。

 ジーンはこんなふうに、いつもちょっとお茶目に気を利かせてくれる人なのだ。

 私はそんな彼らに、長旅の疲れを取ってもらおうと野菜がいっぱい入ったチキンスープを作っておいた。

 荷物の整理をした彼らはシャワーを浴びて、食卓についた。

 「ここでこうしてみんなで食事をしているなんて、夢を見ているようだよ」

 スープをすすりながらジョージ(お父さん)が言った。

 アレックス(彼らのひとり息子)は横で、ニコニコ顔でスープをすすりながら、

 「やっぱりゆきの料理は世界で一番美味しいよ」

 と嬉しいことを言ってくれる。

 NYにいた頃も、彼は我が家に遊びに来て、私が作った料理を食べながらこんなことを言ってくれたりしていた。

 彼はライスボール(塩おにぎり)も大好きだったので、それも作っておいた。

 ライスボールを頬張りながら、

 「なんだかまだNYにいるような気さえするけど、でも僕らは今、日本にいるんだよねえ」

 と、アレックスが言った。

 「そうなんだよ、僕らは今、日本にいるんだよ、これは夢じゃないんだ、現実なんだよ、そうだよね、ゆき?」

 ジョージは嬉しそうに私を見た。

 私もなんだかあらためて嬉しい気分になり、

 「ようこそ、日本へ」

 と言った途端に、ちょっと涙がこぼれそうになってしまった。

 NYでの暮らしはジョージやジーンをはじめ、本当にたくさんの人々に助けてもらった。

 そして様々なことを学ばせてもらった。

 うちの息子は日本で生まれた。

 その時には、まさか11歳になるまでNYで彼が暮らすなんて思いもしなかったし、こんなふうにNYでできた友だち家族が日本の我が家に遊びに来るなんてことも、想像すらできなかった。

 でも、確かにNYで11年の月日が流れ、たくさんの友だちができて、その中の家族が今こうして日本の我が家にいる。地球の反対側に暮らす人々が、今こうして我が家にいる。

 私が彼らから様々なことを経験させてもらい、楽しい思いをたくさん作ってもらったように、たった10日間ほどだが、できる限りの恩返しを彼らにしたいと心から思った。

 食事のあと、彼らのために布団を三組敷いた。

 「わーい、ふかふかの日本の布団だー」

 アレックスは大喜びで布団に寝転がった。

 「ゆっくり休んでください、明日は近所を散歩して、スーパーマーケットに行ってみますか?」

 「わー、いいねえ、楽しみー、お休みなさーい」

 そう言うと彼らは、日本での初めての床についたのだった。

(次回に続く)

兵藤ゆき プロフィール

兵藤ゆき

兵藤ゆき(ひょうどう・ゆき)

名古屋市出身。血液型O型。東京・名古屋・大阪で深夜ラジオのパーソナリティーを皮切りに個性的なキャラクターでテレビ番組に登場し、その後エッセー、脚本、作詞、歌手、小説等ジャンルを超えて幅広く活躍。1996年に長男誕生後、ニューヨークにで11年余り生活。2007年に日本に帰国。

主な著書に、「子どもがのびのび育つ理由」(2008年4月 マガジンハウス)(対談集)「頑張りのつぼ」(05年7月 角川書店)…ニューヨークで活躍する日本人8人の方との書き下ろし対談集(宮本亜門・千住博・宮本やこ・野村尚宏・平久保仲人・河崎克彦・高橋克明・小池良介)、(翻訳本)「こどもを守る101の方法」(06年7月 ビジネス社)などがある。公式ブログは、「子育ての話を聞かせてください―I‘m proud of you―」

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