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ニューヨークからのご一行様(3)―お散歩に墓地

2009年1月23日

  • 筆者 兵藤ゆき

 次の日の朝9時、ニューヨーク(NY)からのご一行様(前回参照)のうち、息子のアレックスが一番先に起きてきた。

 「よく眠れた?」

 アレックスにそう聞くと、

 「うん、とってもよく眠れたよ。飛行機の中ではちょっとしか眠れなかったってこともあるかもしれないけど、人生の中で一番よく眠れたんじゃないかな」

 アレックスはうれしそうにそう答えた。

 「それはよかった、よく眠れたら今日一日楽しく過ごせるもんね」

 「うん」

 私たちがそんな話をしていると、お父さんのジョージも起きて来た。

 「布団は最高だね、気持ちよく眠れたよ、ゆき、ありがとう」

 ジョージもそう言ってくれた。

 あとはお母さんのジーンだ。

 「ジーンはまだ寝ているの?」

 と私が言うが早いか、

 「私はもうだいぶ前に起きてたけど、荷物の整理をしてたの。私もよく眠れたから、今日は楽しめるわよ」

 ジーンもニコニコ顔でやって来た。

 よし、それなら大丈夫だ。

 みんなでちょっと遅い朝ごはんを食べて、お昼前に私たちは家を出た。

 まずは近所のお散歩。

 ジョージは写真が趣味。NYでもさまざまな写真を撮り、コラージュにして家に飾ってあったりする。

 お散歩をしていても、見るものすべてがジョージのアーティスト精神をくすぐるようで、あっちで立ち止まりパチッ、こっちで立ち止まりパチッ。電信柱も自動販売機も犬も猫もパチッ。写真を撮っているジョージは楽しくて仕方ない様子。

 自動販売機はNYの街角では見かけないものなので、アレックスやジーンもジュースやお茶をうれしそうに買っていた。

 ちょっと行くと、大きな公園の横にこじんまりとした墓地がある。

 バラの花や緑の木々がきれいに手入れされたその墓地は、ちょっと見ただけでは墓地と認識しにくい。

 入口には墓参の人たちのための休憩所があり、そこもしゃれた喫茶店のように見える。

 「そこの喫茶店でお茶でもする?」

 ジーンが言った。

 「いやいや、あれは喫茶店じゃなくて墓地なんだよ」

 そう言うと、

 「えー、きれいねえ、ちょっと中を見たりできるのかしら?」

 どうなんだろう、休憩室で墓参の人たちにお茶を出していた人に聞いてみた。

 「どうぞどうぞ、ゆっくりしていってください」

 いつもはひっそりしている墓地なのだが、年末だからだろうか、にぎわっていた。

 墓石も、縦長、平ら、球形などの形があり、愛、信頼、永遠などさまざまな言葉が刻まれていた。

 「きれいだなあ、写真はだめだよねえ」

 ジョージはカメラを見ながら残念そうな顔をしていた。

 さっきのお茶を出していた人に聞いたら、遠くからで、墓標が誰のものかわからないならいいとのこと。

 ジョージにそれを伝えると、うれしそうに遠くからシャッターを押していた。

 ジーンは感動し、こんなふうにきれいに保たれている墓地は、日本人の先祖に対しての尊敬の念と愛が感じられるとしみじみ言っていた。

 私たちまでお茶をいただいて、ちょっとゆっくりさせてもらい、墓地をあとにした。

 そして電車に乗って隣町の大手スーパーマーケットに出かけていった。

 まずはお昼ご飯。

 私たちは地下にある食堂街に行くことにした。

 と、

「わー、なんてこった!」

 アレックスが目を真ん丸くして叫んだ。

(次回に続く)

兵藤ゆき プロフィール

兵藤ゆき

兵藤ゆき(ひょうどう・ゆき)

名古屋市出身。血液型O型。東京・名古屋・大阪で深夜ラジオのパーソナリティーを皮切りに個性的なキャラクターでテレビ番組に登場し、その後エッセー、脚本、作詞、歌手、小説等ジャンルを超えて幅広く活躍。1996年に長男誕生後、ニューヨークにで11年余り生活。2007年に日本に帰国。

主な著書に、「子どもがのびのび育つ理由」(2008年4月 マガジンハウス)(対談集)「頑張りのつぼ」(05年7月 角川書店)…ニューヨークで活躍する日本人8人の方との書き下ろし対談集(宮本亜門・千住博・宮本やこ・野村尚宏・平久保仲人・河崎克彦・高橋克明・小池良介)、(翻訳本)「こどもを守る101の方法」(06年7月 ビジネス社)などがある。公式ブログは、「子育ての話を聞かせてください―I‘m proud of you―」

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