2009年2月19日
「ハーイ、ゆきっ!」
ジーンたちの後を必死で追いかけている私の肩を誰かが叩いた。(前回参照)
振り向くと、そこにはジョージの顔があった。
よかったー、迷子になっちゃったかと思ったよ。
「ごめんね、かわいい料理があったんで見とれていたら、みんなを見失っちゃって」
どうやらジョージはおせち料理に見とれていたようだった。
と、のんびり話している場合ではない。
ジーンたちはどこだ?
いたいた、飲み物売り場で豆乳を選んでいた。
ほっと一安心。
それからみんなでお互いはぐれないように注意しながら、お菓子や果物、ハム、ソーセージなど、ジーンたち家族が好きなものをたくさん買って家に帰った。
次の日、大晦日は、アメ横(アメヤ横丁)と浅草に行くことにした。
これは、うちの夫の提案。
東京にいるなら、食品、服、雑貨などの安売りで有名な店が軒を連ねるアメ横に繰り出し、日本の商店街の活気を味わってもらい、その後、浅草、浅草寺に向かって日本の伝統的なたたずまいを堪能してもらおうというわけだ。
浅草では、これまた日本の年末の恒例、年越しそばも食べてもらうつもり。
せっかくニューヨーク(NY)から日本に遊びに来ているのだから、ジーンたちにはたっぷりと「日本」を味わってもらいたい。
まして年末年始は、日本が最も日本らしい雰囲気になる時期なので、どこに連れていってもきっと喜んでもらえるはず。
実は、夫も私もNYで暮らす前は東京に15年ほど住んでいたのだが、大晦日にアメ横や浅草に行ったことがなかった。
12歳の今になるまでほとんどNYで過ごしたうちの息子にいたっては、アメ横にも浅草にも一度も行ったことがなかった。
だから息子にも、「これが日本だ、僕らの国だ」と、楽しんでもらいたかった。
そんなわけで、私たちはウキウキ気分で上野駅に降り立った。
ところが、なんてこった!
駅から外に出て、ちょっと高い所からアメ横の商店街の入り口を見て驚いた。
あたりは真っ黒ではないか。
そこは、前日に行ったスーパーマーケットの倍ほども混んでいて、混み合う人々の頭で通りが真っ黒に見えるくらいだったのだ。
あんなところに突入したら、私だって迷子になってしまう。
が、ジーンたちはひるまなかった。
「いいこと、ちゃんと離れずにいるのよ」
「OK!」
ジョージもアレックスもお互いしっかり手をつなぎ、勇敢にも商店街の方に向かって歩き出すではないか。
そうか、昨日のスーパーマーケットで混み合う場所での行動に自信がついたのだな、よし、そっちがその気ならお付き合いしましょう、
私たちもジーンたちの後ろにピッタリくっついて歩きだした。
いよいよ商店街の入り口だ。
おー、近くに来るとやっぱりものすごく混んでいる。
が、みんなマナーをわきまえ整然と歩いていて、遠くから見ていた時より危険な感じはしない。
これなら大丈夫そうだ。
私たちは流れに身をまかせながら、にぎやかなアメ横を歩いた。
漢字がデザインされたTシャツがいっぱい吊るされた洋服屋さん、コーヒー、お菓子、韓国のりなどがものすごく安い値段で売られている店、数の子、いくら、カニ、のり巻、かまぼこ、豆腐なども、ものすごく安い。
あー、全部買って帰りたい、なんてみんなで言っているうちに、そろそろお腹もすいてきた。
今度は年越しそばを食べようと、私たちは浅草寺方面に向かうことにした。
(次回に続く)
名古屋市出身。血液型O型。東京・名古屋・大阪で深夜ラジオのパーソナリティーを皮切りに個性的なキャラクターでテレビ番組に登場し、その後エッセー、脚本、作詞、歌手、小説等ジャンルを超えて幅広く活躍。1996年に長男誕生後、ニューヨークにで11年余り生活。2007年に日本に帰国。
主な著書に、「子どもがのびのび育つ理由」(2008年4月 マガジンハウス)、(対談集)「頑張りのつぼ」(05年7月 角川書店)…ニューヨークで活躍する日本人8人の方との書き下ろし対談集(宮本亜門・千住博・宮本やこ・野村尚宏・平久保仲人・河崎克彦・高橋克明・小池良介)、(翻訳本)「こどもを守る101の方法」(06年7月 ビジネス社)などがある。公式ブログは、「子育ての話を聞かせてください―I‘m proud of you―」
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