2009年3月26日
学校が春休みになった息子と、近所をお散歩。
きれいに手入れされた家々の庭に、急にピンク、黄色、赤などの色とりどりの花が咲き始めていた。
あら、これ、桜の木だったんだ…。
と、今まで気にとめていなかった木に、ほころび始めた桜の花をたくさん見つけ、二人で声を上げたりした。
もうそこここに春がやって来ている。
去年の6月中旬から10月下旬まで、20回シリーズで連載していた、「犬と少年」のお兄ちゃんと弟くんにも、春がやって来た。
お兄ちゃんは、将来獣医さんになりたいし、犬の訓練も続けたいと言っていた。
高校生になったら、お兄ちゃん家のラブラドール犬(くう、かい)、その犬種の故郷であり動物愛護の先進国でもあるイギリスに留学し、イギリス式の犬の訓練も勉強したいとも言っていた。そのためにはどんな学校がいいかお兄ちゃんはいろいろ調べて、地元の中高一貫の私学を受験したのだった。
そして、見事桜の花が咲いた。
「合格通知を手にした時には、やったー!と大声で叫びました」
お兄ちゃんは嬉しそうにそう話してくれた。
お兄ちゃんのお父さんは、
「合否は半々かもしれないという学校だったんですが、どうしてもそこに行きたいと、彼は最後まであきらめずに本当によく頑張ったと思います。親のこっちがあせって、大丈夫かと心配して余計なことを言ってしまったり、本人もストレスが溜まったりして親子げんかもしましたが、そんなときにくうやかいがいてくれたおかげで大ごとにならずに済んだかなと思います、犬たちに感謝ですね」と言っていた。
続いて弟くん。
お兄ちゃんの受験が終わったら、訓練所に預かってもらっていたモニカを正式に自分の犬として譲り受けることになっていた。
そのために弟くんは、お小遣いや、お年玉、お手伝いをしてもらったお金も貯めていたし、くうやかいの世話も一生懸命やっていた。
お兄ちゃんの合格通知が届いた2日後、その日はモニカの誕生日だった。
モニカへの絶好のバースデープレゼントということで、弟くん家族はモニカを訓練所まで迎えに行くことにした。
所長さんに連れられてやって来たモニカは、弟くんたちの顔を見ると、それはそれは大喜び。
「大事に育ててね」
「はいっ!」
所長さんからモニカを手渡されると、弟くんは大きな声で返事をした。
こうしてモニカは、無事に弟くんの犬になったのだった。
「モニカが来て、うちには正式に3匹の犬が一緒に暮らすことになったんですが、最初はこっちの方がうまくペースをつかめなかったんですよ。でも、モニカはご飯を食べる場所もぜんぜん迷わないし、くうやかいたちとも普通にじゃれあうし、寝るときはちゃんと弟くんのベッドのところに行くし、まるでずっと家にいたような感じだったんですよ」
とお母さんは言っていた。
さて、3月に入ってすぐにお兄ちゃんは、かいと一緒に岐阜県大野町で行われた「全日本服従訓練競技大会・アマII部」に出場した。
受験終了後の初めての大会だったが、大人ばかりの中で大健闘し、優勝こそ逃したが100点満点中93.7点という好成績を上げた。
弟くんもこの大会の小学生以下の部にモニカと一緒に出場。1位との差が0.1点の99.5点で惜しくも2位だったが、その1週間後、三重県桑名市で行われた、「中部ラブラドール訓練チャンピオン決定競技会・4部GIアマの部」では、大人ばかりの中で95.9点を獲得し、見事優勝。
お兄ちゃんも弟くんも春を迎えて、それぞれ新たな道を歩み始めたのである。
名古屋市出身。血液型O型。東京・名古屋・大阪で深夜ラジオのパーソナリティーを皮切りに個性的なキャラクターでテレビ番組に登場し、その後エッセー、脚本、作詞、歌手、小説等ジャンルを超えて幅広く活躍。1996年に長男誕生後、ニューヨークで11年余り生活。2007年に日本に帰国。
主な著書に、「子どもがのびのび育つ理由」(2008年4月 マガジンハウス)、(対談集)「頑張りのつぼ」(05年7月 角川書店)…ニューヨークで活躍する日本人8人の方との書き下ろし対談集(宮本亜門・千住博・宮本やこ・野村尚宏・平久保仲人・河崎克彦・高橋克明・小池良介)、(翻訳本)「こどもを守る101の方法」(06年7月 ビジネス社)などがある。公式ブログは、「子育ての話を聞かせてください―I‘m proud of you―」
ここから広告です
広告終わり