現在位置:
  1. asahi.com
  2. ライフ
  3. 教育
  4. わが校イチ押し
  5. 記事

「学び」と「実践」融合、グローバル社会に対応できる人材育成

京都外国語大学国際教養学科

2009年7月30日

写真二言語同時学習を受ける学生ら写真DVDなどを利用して自習する学生ら写真新学科長に就任するクレイグ・スミス教授写真堀川徹志学長(右から2人目)ら幹部

 英米語学科やブラジルポルトガル語学科といった言語を中心とする教育を掲げる京都外国語大学が来春、9番目の学科として国際教養学科を新設する。世界がグローバル化するなか、幅広い視野を持った新たな国際人を育成しようと、これまでの語学教育をベースに実践にも重点を置いた教育を目指す。インタビューには、堀川徹志学長や新学科長に就任予定のクレイグ・スミス教授はもちろん、久保哲男副学長、辻淺夫学生部長、志田裕朗教務部長ら幹部が勢ぞろいし、新学科にかける熱い思いを語ってくれた。

 ――新学科開設のねらいを教えてください。

 「世の中がグローバル化するなか、いま世界で起こっていることを幅広い視野から見つめ理解し、対応できる人材の育成が必要だと考えます。そうした教育を施すためには、京都外大が持つ語学教育を基盤に、より実践的かつ専門的に学べる横断的な性格の学科が必要だと思い、国際教養学科の新設を決めました」

 「新学科の定員は60人とし、少人数できめ細かな対応を考えています。英語を基軸に高い語学力を身につけるとともに、『国際地域』『国際関係』『国際ビジネス』という3つの領域のなかから、体験学習を売り物に、『学び』と『実践』を融合した教育を行いたいと思っています」

 ――かなりの英語力を求めているようですが、授業は英語が主体となるのですか。

 「英語は必須とするので、イメージ的には半分はそうなるのかな、と思っています。企業の海外駐在員が必要とされるTOEICで730点以上を取れるような運用能力を身につけさせたいですね。従って、入学時と学年ごとにTOEICを受けることを義務付け、習熟度に合わせたクラス編成を考えています。授業についていけない学生に補習授業を実施するのはもちろんのことですが、高いレベルの学生にも特別講義を準備して満足度を上げたいと考えています」

 ――実践にも重点を置いた体験学習を採り入れるということですが、具体的には。

 「国際地域、国際関係、国際ビジネスという3分野をコースではなく領域とし、学生には横断的に履修できるプログラムにしています。そのなかで、海外留学はもちろん、海外の団体やNPOと組んだ国際ボランティア活動やフィールドワーク、企業と組んだ外国でのインターンシップ、京都という歴史的な蓄積を持つ都市ならではの地域活動などに、学生の参加を促し、その活動について積極的に単位を認定したいと考えています」

 「こうした活動にはすでに取り組んでいて、学生が主体的に取り組める仕組みを全学的に作っています。たとえば、学生らが取り組むプロジェクトを募集し、資金的な援助をする『ピカ☆イチプロジェクト』があります。募集するのも選ぶのも学生の代表が行っています」

 「米国に本部を置く海外建築のボランティア団体に10年ほど前から参加しています。今年2月には、学生らがフィリピンに行き、災害で被害に遭った地域を訪れ、公民館を建設してきました」

 「インターンシップでは、近畿日本ツーリストと協定を結び、今年度はグアムの現地事務所で実習を受けてきました。もちろん、学生には事前にビジネスマナーやホテル実務、ツアープランニングなどの講座への参加を義務付けて勉強してもらいました」

 「新学科では、高い語学力の養成はもちろんですが、こうした学生の取り組みの“貯金”を国際教養学科の教育のなかに採り入れ、京都外大の新しい魅力にしたいですね」

 ――英語だけではなく他言語の教育にも、もちろん外大らしさが出ているのですね。

 「その通りです。チームティーチングによる二言語同時学習という外国語教育の新手法を編み出しました。これは文科省から2006年度の特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)に選定されました。京都外大は8つの学科、17言語を教えていますが、二言語同時学習では英語を基軸にもう一つの言語を学びます。英語を専門とする教員と別の言語を専門とする教員計2人で、同一の教材を使って授業を進めるチームティーチングで実施されます。この手法を用いると、学生は双方の専門家から、両言語の相違点や類似点、共通点を明確に学び、両方の高度な言語運用能力を獲得しやすくなります。教室もeラーニングやインターネット、DVDなどのマルチメディアを活用できるCALL教室を使って効率よく学習できる環境をつくっています。同時に、ネーティブの外国人留学生にアシスタントとして授業に参加してもらい、発音はもちろん言語圏の文化にいたるまで解説してもらうなど学習支援をお願いしています。新学科でもこの手法を採用し、英語はもちろん、スペイン語やフランス語、中国語、ポルトガル語など10言語から一つを選び身につけられるようにしたいと思っています」

 ――初代の学科長にはスミス先生が就任されますね。

 「体験学習につながる前述の国際貢献活動について、学生を指導し、育ててきてくれたのがスミス先生です。彼は学生の意欲を引き出すのがとても上手です。彼の研究室には、数々の学生の荷物が置かれ倉庫のようですし、絶えず学生が集まっています。授業はもちろん、休み時間でも一番学生と接しているが彼だと思います。いまは英米語学科の教員ですが、国際教養学科初代学科長は彼しかないと思い、白羽の矢を立てました。彼はカナダ人ですが、京都外大初の外国人学科長でもあります」

 ――学科長就任を打診された時はどんな気持ちでしたか、またどんな学生を育てたいですか。

(スミス氏)「本当に驚きました。サンキューというのが精いっぱいでした。好奇心のある人、思いやりのある人、責任感のある人、コミュニケーション力のある人、多彩な学生がいます。そんな彼らが『世界市民になれる人』になって欲しい。『言語力×国際力×アクション=人間力』の公式のように『+』ではなく『×』にできる人を育てていきたい」

京都外国語大学国際教養学科(京都市右京区西院笠目町6)
ホームページ http://www.kufs.ac.jp/kufs_new/global/

取材してみて一言

上島誠司

「学生よ、外国に出よ、大志を抱け」は死語なのか
 筆者は大阪外大(現大阪大学外国語学部)の出身だ。京都外大は同じ関西にある外大として当時、交流もあり、学生時代、何度か訪ねたことがあった。今回、二十数年ぶりに訪れてみて、まず感じたのが女子学生の多さだった。「7割以上が女子学生ですね。どこの外大も同様の傾向です」(堀川学長)。私が学生時代はまだ男女半々だった。地方の秀才がいる一方、帰国子女も多く、発想が外国人、という友人も多数いておもしろかった。

 外大生の海外志向が薄れているそうだ。「ハングリー精神がなくなったというか、自発的に海外に行く、という学生が本当に少なくなった。昔は海外に行きたいから、外大進学を希望したものですが」と、堀川学長も嘆く。筆者が学生時代、みんな、せめて夏休みの短期留学には参加したい、とアルバイトに精を出したものだ。「海外雄飛を夢見る」などというのは今では死語なのか、話を聞いていて複雑な気持ちになった。ただ、京都外大の学生は年間200人ほどの学生が海外に勉強しに行くので、学生数4500人の割には多いのかもしれない。

 外大生に限らず最近の学生は内向き志向が多く、海外旅行に行くことすら考えていないようだ。別の総合大学の教授が嘆いていた。学生にゼミ旅行を企画させたら、行き先に国内の温泉を提案してきたという。「定年退職者の旅行じゃないよ。若いのだから、もっと別の行き先があるんじゃないのか、といってもきょとんとしていました」。

 来年度開設される国際教養学科は、こうした学生気質にある意味、活をいれる仕掛けをつくろうとしているのかもしれないし、外大生気質をよみがえらせる仕掛けをねらったのかもしれない。私が学生なら、うらやましい限りのプログラムだ。留学だけとってみても、当時は1年以上留学すれば、休学するのが当たり前だった。海外の大学の単位が認定されるなどという制度は少なかったように記憶している。

 国際化が進み、日本にいても外国人を日常的に見かけるようになったとはいえ、やはり現地に行ってみないと分からないことは多い。それを見てみたいと思うのは自然なことだと思う。「何でもみてやろう」。こんな言葉を胸に大きなリュックを担いで世界を回ったのは、つい昨日のことのように思うのだが、もはや時代遅れなのだろうか。(アサヒ・コム教育チーム 上島誠司)

 このコラムは、おもしろい授業やユニークな行事、新しい学部や学科の内容など、各学校が取り組んでいる教育実践の具体的な中身を取り上げ、読者のみなさんに学校選びの参考にしていただけることを目指しています。小学校や中学校、高校、大学をはじめ、専門学校など教育に取り組むすべての学校を対象に、その取り組みの中心人物(学長や学部長、校長、プロジェクトリーダーなど担当の先生)にインタビューし、その学校の一押しの教育内容を紹介してもらいます。
 読者のみなさんのなかで「この学校のこんな取り組みを紹介してみては」というご提案などありましたら、教えてください。よろしくお願いします。

検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内

[PR]注目情報

ここから広告です

広告終わり

ジャンル別の最新情報はこちら
  • 大学
  • 中学・高校
  • 通信制高校