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2012年3月30日19時32分
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ことば「わかる力」育む 2012年第1回語彙・読解力検定

写真:教育評論家・尾木直樹さん:教育評論家・尾木直樹さん=郭允撮影拡大教育評論家・尾木直樹さん=郭允撮影

語力検定 ロゴ:  

 すべての学びは「ことばの力」から――。朝日新聞社とベネッセコーポレーションが共同で6月に行う2012年度第1回「語彙(ごい)・読解力検定」の申し込み受け付けが始まった。新たに「3級」がスタート。学習の基礎となる知識や教養の習得に必要な、ことばの力を測る級だ。3級新設に合わせて検定会場も、全国に広がる。新年度を前に、教育評論家の尾木直樹さんから、ことばの力が自然に養える勉強法について聞いた。

 記事を貼り心の動きを文字に
 学び「遅すぎることはないの」

 「尾木ママ」の愛称で親しまれる尾木さんは、元は中学や高校で国語を教えていた。ことばや文字への関心は、子どもの頃から強かったという。

 「小学校や中学校の図書室の本はだいたい読んでいた。高校生の時は学校が終わると、県立図書館に直行して夜9時の閉館までいました。必然的に、文字が好きになりましたね」

 高校時代にのめり込んだのは、文学と哲学。全集を買うほど好きだった三木清の「人生論ノート」の影響が、特に大きかった。本のカバーを自作したり、オリジナルの蔵書印を作ったりと、まるで大人の愛書家のようだったという。

 「昔の青年には読書しかなかったんですよ。いろんな情報や、考える素材を持つ手だてはね」

 現代の若者を取り巻く環境は、一昔前とは大きく変わった。インターネットの普及は、情報量を急速に増やした。その一方では、学力低下が叫ばれている。だが、尾木さんによると、1960年代よりも今の子どもたちのほうが、漢字や計算問題の正答率は高く、学力そのものは実は落ちていないのだという。

 「今の子どもは、その学力を使いこなす力がないんです。文字の意味や成り立ち、そこに含まれる文字の生き物としての感情をつかまえられない。例えば大学生に『平均を出せ』と言えばみんなできる。でも、平均の意味を聞くと意外とわからない。ここが致命的な弱点。大事なのは、『できる力』よりも『わかる力』なのよ」

 だからこそ、言語能力を身につけることが重要になる。人間は、何かを考えるにしても、感情をコントロールするにしても、声に出す出さないは別として、ことばを使っている。「語彙が豊富ならば、豊かな思考や表現だってできます

 では、子どもがことばの力をつけるにはどうしたらいいのか。尾木さんが、公立中の教員時代に試みたのが、「書きなれノート」だ。「なれ」は、「慣れ」を意味する。

 生徒は毎日、好きな新聞記事をひとつ選び、大学ノートに貼り付けて提出する。その際、共感したりおもしろいと感じたりした所に「○」、反発を覚えた所に「×」、内容がわからない所には「?」をつける。尾木さんは、それらにコメントを添えて返した。

 それを続けると、生徒に「表現したい」欲求がわき上がってくる。その頃を見計らい、「『すごーい』でもいいので、どう心が動いたのかを書くように」と指示した。すると今度は、「すごーい」では飽き足らない生徒が、4行、5行とことばを書き始める。ついには、ノート1ページに自分の見解を書く生徒まで出てきた。

 「記事を選ぶために新聞をめくることも大事。いろんな知識が頭に入ってくるから。最初は天気図ばかり貼ってきた男の子も、『天気が良くなってきたね』などとコメントしているうちに、文化欄の記事を貼るようになってきましたよ」

 文字を読む。心が動く。その際の感情を、ことばで表現する。「書きなれノート」は、この三つの力を自然と養うという。「大学生でも、やれば変わりますよ。言語の教育に、遅すぎることはないの」

 尾木さんは最近では、子育て中の親にアドバイスする機会も増えた。子育てのカギは、「どうしたの?」と尋ねることだという。

 「お兄ちゃんが、妹を蹴ったとします。『何やっているの!』と怒鳴るのではなく、『どうしたの?』と聞けば、『ハチがとまりそうになったから、払おうと足を出したら当たっちゃった』と言うかもしれない。そこに共感してほめてあげれば、子どもは豊かに育っていきます

 「どうしたの?」に答えることで、子どもは、自分の行動を客観的にとらえられる。説明する力も身につき、自分の落ち度も見えてくる。

 人間関係の基礎は「ことば」。それは、相手が誰であっても変わらない。尾木さんは、どうしたら「ことば」が伝わるか、常に気にかけている。

 「私も“尾木ママ”になる前は、頭で考えて組み立てたことを文字にして、皆さんに伝えていました。でも今は、赤ちゃんとお母さんがへその緒でつながっているように、聴衆と心でつながることを意識しています」

 おぎ・なおき 教育評論家、法政大教授。1947年滋賀県生まれ。中学・高校で22年間教員を務めた後、臨床教育研究所「虹」を設立。近著に「尾木ママの共感・子育てアドバイス」

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