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社説 原子力白書 温暖化で舞い上がる時か

2007年03月21日

 次々に発覚するトラブル隠しやデータ改ざんの中で、06年版の原子力白書が発表された。

 「地球温暖化だ。さあ、原発の出番だぞ」。そんな掛け声が聞こえてきそうな威勢の良さである。現状認識が甘すぎるといわざるをえない。

 白書は、原子力政策の基本方針をつくる国の原子力委員会がまとめた。

 「地球温暖化」を大きく取り上げ、原発を問題解決の「中核的手段の一つとなり得る」と位置づけた。二酸化炭素をほとんど出さないというのが理由だ。

 2月に出された「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」作業部会の報告も素早く引用した。その温暖化予測をもとに「原発の優位」を強調している。

 だが、地球環境の保護を言うなら、放射能をまき散らしかねない原発の大事故を封じる手を打ってからだろう。

 トラブル隠しなどについては、北陸電力志賀原発1号機の臨界事故隠しを受けて、原子力委が白書とは別に緊急声明を出すにとどまった。白書づくりに間に合わなかったということか。

 しかし、去年を振り返ると、原発データに改ざんの疑いがある事例は、散発的に明らかになっていた。水力発電用のダムのデータ改ざんなども問題になり、電力会社への信頼は大きく揺らいでいた。

 ガス湯沸かし器の一酸化炭素中毒問題をきっかけに、事故情報をどう扱うかが、企業の社会的責任として大きく浮かび上がった年でもある。

 原子力安全・保安院は去年11月、電力業界に過去のデータを点検し、問題があれば正直に公表するよう指示した。その結果、いまトラブル隠しなどが相次いで明るみに出ているのである。

 原子力委は、少なくとも保安院が指示を出した時点で、どのようにして点検の結果を原発の信頼回復に生かすかを考えるべきだった。

 原子力委は緊急声明で、過ちや異常な事象が起これば原因を分析し、「教訓として世界の関係者と共有していくこと」の大切さを強調した。そう言うなら、今こそ具体的な手立てを提言すべきだ。

 たとえば、ヒヤリとした程度のトラブルの場合には、進んで公表すれば、とがめないというような制度を導入すべき時なのかもしれない。

 99年にあった志賀原発の臨界事故の発覚後、東北電力や中部電力、東京電力の4原発でも88〜00年の定期検査中に制御棒が抜ける事例があり、公表されていなかったことがわかった。これらは臨界に至らず、報告義務もなかった。

 いずれも沸騰水型炉で、制御棒を下から差し込む方式だ。先に起こったトラブルの情報が業界で共有されていれば、臨界事故は防げたかもしれない。公表がどれほど大切かを物語る結果となった。

 原子力は本当に温暖化対策の選択肢なのかどうか。それを見定めるのは、だれからも信頼される安全体制を確立してからのことだろう。

(2007年3月21日付け朝刊 3総合)

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