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「禁煙治療」のイメージ |
1.喫煙問題は国際的な「社会問題」です
たばこの自動販売機は、未成年者の喫煙を助長していると批判されてきました。たばこを吸うことは、法律で20歳からとされていますが、簡単に手に入ることから、中高校生や小学生までもたばこに手を出してしまう人がいるのは、本当に残念なことです。
WHO(世界保健機関)による「たばこ規制枠組み条約」が、2005年2月に発効し、喫煙大国の日本は、喫煙防止教育はもちろんのこと、喫煙者を減らす取り組みを推進する責務を負ったことになります。たばこ業界も20歳以上の人だけに発行する「TOBACCO Card」を導入することで、未成年者の喫煙対策に乗り出そうとしています(注)。喫煙は、子どもたちだけの問題ではなく、大人も含めて考えるべき国際的な「社会問題」です。
(注)「たばこ自販機 未成年封じ」2005.10.28. 朝刊1面
2.ワークシートのポイント
(1)たばこがどれほど有害なものか
たばこには、発がん性の物質がなんと約60種類も含まれています。しかも、15歳までにたばこを吸い始めるかどうかで、肺がんの発生率は吸わない人の30倍にも達するそうです。その結果、たばこ1本で5分30秒、吸い続けると10年も寿命が短くなると考えられています (下記のDVD『今から始める喫煙防止教育』より)。
これまで、多くは未成年者の喫煙が問題視されてきましたが、たばこは大人をも含め人体に有害な薬物であることは医学的に明白です。どのような病気になったり、どのようながんにおかされたりするのか、具体的に調べてみましょう。
(参考)DVD『今から始める喫煙防止教育』 社団法人「日本循環器学会」
日本循環器学会の禁煙推進委員会が作り、全国の中学校に寄贈されたものですから、みなさんの学校にもあると思います。小学校は中学年用と高学年用、中・高校生用は一緒になっています。さらに、一般・大学生用もあり、年齢別の編集によって、とてもわかりやすい内容になっています。
(参考)たばこと健康(厚生労働省)http://www.health-net.or.jp/tobacco/front.html
このサイトは、DVDや参考図書が身近にない場合にとても参考になります。
(参考)『たばこは全身病 最新改訂版』少年写真新聞社
(参考)『たばこは全身病 卒煙編』少年写真新聞社
この2冊は学校の図書室にもあるかもしれません。探してみましょう。
(2)パッケージに書いてある警告文
パッケージに、「たばこは人を殺します」と名記している国もあります。さて、日本のたばこには、何と書いてあるでしょうか。国によって警告文に違いがあります。どのように書かれているか、(1)で示した、厚生労働省の「たばこと健康」のホームページを参考に調べてみましょう。
(3)公共の場や交通機関での禁煙・喫煙
「健康増進法」(2003年施行)によって、喫煙者の近くにいる人がその煙を吸ってしまう「受動喫煙」を防ぐことが定められました。公共の場(市役所、図書館、病院、学校など)や交通機関(電車、バス、飛行機など)では、禁煙区域や喫煙場所が決められています。それによって、たばこを吸わない人の健康を守る「分煙」対策がどうなっているか調べてみましょう。
(4)たばこをすすめられたら
一度誘いに乗ってしまうと、二度、三度と習慣化してしまいます。最初にどう断るかが大切です。[1]きっぱり・はっきり。あなたなら何と言いますか。[2]どのような理由で断りますか。[3]あいまいな態度はいけません。具体的に、どのような態度で「ノー」という意思を示しますか。
先日、日曜版のbe1面に「減らせなくて1日17本」(2005.11.20.)との記事が目に止まりました。ニコチンの持つ依存性のために、たばこから逃れられない人が多いことがわかります。最初が肝心。「たばこか、健康」のどちらをとるかです。強い意志をもって断りましょう。
3.発展学習として
「STOP SMOKING」
残念ながら、すでにニコチンの虜(とりこ)になってしまっている人がいたら、一刻も早くたばこをやめること。たばこは「百害あって、一利なし」です。言われなくても「そんなこと、わかっている」はず、ですよね。でも、ニコチン依存の状態から抜け出せないのは、一種の中毒状態なのです。「治療の対象になる病気」です。
「やめられない」のは意思が弱いから、などと自分を責めず、治療を受けることを勧めます。「禁煙外来」のある専門病院でなくても、「内科」「呼吸器科」などで受診できるようです。たばこによるニコチン依存症は、「ニコチンパッチ」などによる治療で完治する病気です。
なお、記事にもあるように、医療保険の適用は、2006年4月の実施が予定されています。
(藤沢市立大庭中学校・有馬 進一)