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〈ののちゃんの自由研究〉
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対立乗り越え新たな一歩 モンテネグロ 平和的に独立


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●紛争重ねた旧ユーゴ完全に解体

 モンテネグロは5月21日、国民に直接「独立するかどうか」を聞く国民投票(こくみんとうひょう)を実施しました。その結果、独立支持が55.5%に達し、セルビアと分離(ぶんり)して独立することが決まりました。セルビアとモンテネグロは、かつてクロアチア、スロベニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マケドニアの各共和国とともに旧ユーゴスラビア連邦の一員でした。各国が独立を果たす中、2カ国だけが残った形になっていました。

●国民投票通じ選択

 両国は92年に新たなユーゴ連邦をつくり、03年には緩(ゆる)やかな国家連合(こっかれんごう)「セルビア・モンテネグロ」を形成(けいせい)していました。欧米(おうべい)と協調(きょうちょう)しながら経済発展(けいざいはってん)を目指そうとするモンテネグロは、連邦時代から独立志向(どくりつしこう)を持っていましたが、セルビア側や国内のセルビア人などの反対で独立が先延ばしにされていました。

 今回の独立は国民投票という平和的な形で達成されましたが、旧ユーゴの歴史の中で独立は一般的に、隣人同士(りんじんどうし)が殺し合う虐殺(ぎゃくさつ)や迫害(はくがい)を伴(ともな)いがちでした。

 旧ユーゴの位置(いち)する欧州(おうしゅう)南東のバルカン半島地域では、様々な民族や言語、宗教が入り組んでいて、しばしば対立が起き、「欧州の火薬庫(かやくこ)」と呼ばれていました。第2次世界大戦後、独自(どくじ)の社会主義路線(しゃかいしゅぎろせん)を目指したチトー大統領(だいとうりょう)の下で民族主義(みんぞくしゅぎ)が抑えられていたものの、チトー大統領の死去、冷戦(れいせん)の崩壊(ほうかい)などで民族主義が再燃しました。

 スロベニアとクロアチアが91年に独立を宣言(せんげん)したことで旧ユーゴは解体(かいたい)へと向かい、それと同時に民族間の争いが拡大していきました。スロベニアには、セルビア人が多数派(たすうは)を占める連邦軍が独立を阻止(そし)しようと侵攻しました。クロアチアでも国内のセルビア人が武装蜂起(ぶそうほうき)し、呼応(こおう)するように連邦軍が武力介入(ぶりょくかいにゅう)して4年も内戦状態(ないせんじょうたい)になりました。

●内戦が招いた虐殺

 特に悲惨(ひさん)な内戦を経験したのはボスニア・ヘルツェゴビナでした。言語や文化面であまり違いのないセルビア人、クロアチア人、モスレム人がそれぞれの民族主義を主張し、入り乱れて争いました。東部のスレブレニツァという町では、セルビア人勢力によってモスレム人の住民ら7000人以上が殺され、「第2次大戦後の欧州で最悪の虐殺」として衝撃(しょうげき)を与えました。3年半の内戦で死者20万人、250万人以上の難民(なんみん)・避難民(ひなんみん)が出たとされ、今なお深い傷を残しています。

 こうした紛争の背後にいたのは、連邦内で当時強権(きょうけん)を振るっていた元大統領のミロシェビッチ氏でした。ミロシェビッチ氏はセルビア民族主義をあおり、民族間の紛争を助長していきました。その後、国際法廷で集団虐殺や非人道行為(ひじんどうこうい)の実行命令(じっこうめいれい)などの罪に問(と)われましたが、獄中(ごくちゅう)で今年3月に急死(きゅうし)しました。

●それでも残る火種

 国際社会(こくさいしゃかい)が懸念(けねん)する「火種(ひだね)」はまだ、セルビア国内のコソボ自治州にあります。この地では、90年代後半に独立を巡り、8割以上を占めるアルバニア系住民と、州内では少数派(しょうすうは)のセルビア人との間で対立が激化(げきか)し、武力衝突(ぶりょくしょうとつ)に発展しました。コソボに介入した連邦軍やセルビア治安部隊に対して、欧米は撤退(てったい)を要求(ようきゅう)しました。しかし、当時のミロシェビッチ大統領が拒否したため、北大西洋条約機構(きたたいせいようじょうやくきこう)(NATO)が2カ月以上にわたってユーゴを空爆(くうばく)しました。

 現在、コソボは国連の暫定統治下(ざんていとうちか)に置かれていますが、独立志向が強く、モンテネグロの独立に「自分たちこそ」と思っても不思議ではありません。今回の独立がコソボやバルカン半島の民族主義に与える影響が心配されています。

 (杉山正)

朝日新聞サービス

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