◇ののちゃん サッカーした後、校庭(こうてい)を2周(しゅう)走ってきたよ。心臓がどきどきしちゃった。
◆藤原先生 心臓は体じゅうに酸素(さんそ)を含(ふく)んだ血液(けつえき)を送(おく)るポンプなの。運動(うんどう)をすると筋肉がたくさんの酸素を必要(ひつよう)とするから、一生懸命(いっしょうけんめい)働(はたら)くのよ。
◇ののちゃん ふーん。あれ、先生は脚(あし)を痛(いた)そうにしてるけど、どうしたの。
◆先生 きのう久(ひさ)しぶりに山登(やまのぼ)りに行ったから、きょうは筋肉痛なのよ。運動でできた筋肉の中の細(こま)かい傷(きず)が治(なお)るときにはれるから、次の日に痛くなるの。
◇ののちゃん 心臓はたくさん動いても次の日に痛くならないよ。
◆先生 筋肉の種類(しゅるい)が違(ちが)うのよ。腕(うで)や脚の筋肉のように、骨(ほね)や関節(かんせつ)のまわりにあって体を動かす時に使うものは「骨格筋(こっかくきん)」というの。自分(じぶん)が思(おも)った通りに動かせるわ。体重の半分ぐらいはこのタイプよ。でも、内臓(ないぞう)の筋肉は自分の意思(いし)で動かせないでしょ。胃(い)や腸(ちょう)や血管(けっかん)などには「平滑筋(へいかつきん)」というゆっくり動く筋肉があるのよ。
◇ののちゃん 心臓は?
◆先生 心臓だけは「心筋」という特別な筋肉でできているの。ずっと休みなく働き続(つづ)け、全体がひとかたまりのように同じリズムで動くから、ほかの内臓とは違うのよ。
◇ののちゃん 筋肉痛にならないのはどうしてなの。
◆先生 これで決まり、という説明はないわ。でも、筋肉痛のもとは、腕相撲(うでずもう)で負(ま)けそうなときのように、ぎゅっと縮んで力を出している筋肉が、別の力で無理(むり)やり引(ひ)き伸(の)ばされるときにできやすいの。ところが、心臓はぎゅっと縮(ちぢ)んで血液を送り出し、力を緩(ゆる)めてふくらむ、という動きを繰(く)り返(かえ)すだけ。無理やり引(ひ)っ張(ぱ)られることがないから、と考える専門家もいるわ。
◇ののちゃん 心臓は、ずっと動き続けて疲(つか)れないのかな。
◆先生 ふつうの筋肉は、激しい運動を続けると酸素が足りなくなって、「乳酸(にゅうさん)」という疲れのもとになるものがたまるわ。でも心臓の筋肉は、もともと酸素をたくさんためられるようになっているの。簡単(かんたん)には酸素不足にならないのよ。
◇ののちゃん 丈夫(じょうぶ)なんだね。じゃあ、心臓が痛くなることはないの。
◆先生 健康(けんこう)なら心配(しんぱい)ないわよ。ただ、心臓の筋肉に血液を送る血管が狭(せま)くなる病気(びょうき)になると、運動したときに酸素が足りなくなって乳酸などができ、心臓が痛くなるわ。病気が軽(かる)いうちは運動をやめると痛みもおさまるけど、ひどくなると心臓の筋肉の一部が死(し)んでしまうこともあるの。そうなると大変(たいへん)。もし心臓がおかしいと感(かん)じたら、お医者(いしゃ)さんにみてもらってね。
(取材協力=石井直方東京大教授、家田真樹慶応大助手ほか、構成=安田朋起)
(朝日新聞社発行 5月15日付be)
◇調べてみよう
(1)体を動かす筋肉は、全部で400個ほどあるよ。実際(じっさい)にさわったり動かしたりして、ついている位置(いち)や役割(やくわり)を調べてみよう。
(2)心臓はどんな動き方をして、血液を全身(ぜんしん)に送っているのだろうか。心臓の形をもとに考えてみよう。