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金箔は食べても大丈夫? |
◇ののちゃん 先生はお酒(さけ)に何(なに)かを混(ま)ぜて飲(の)む?
◆藤原先生 私はお酒には何も足(た)さないのが一番(ばん)、好(す)きよ。どうして?
◇ののちゃん お父さんが家(いえ)で飲んでいたお酒に金箔(きんぱく)が入っていたの。キラキラしてきれいなんだけど、飲んでも大丈夫(だいじょうぶ)なのかな。
◆先生 ふつうは金属(きんぞく)そのものを食(た)べることはないから気(き)になったのね。でも、金はとても柔(やわ)らかくてのびやすく、約4グラムの塊(かたまり)からたたみ1畳分(じょうぶん)ぐらいの金箔ができるの。厚(あつ)さは1ミリの1万分の1。台所(だいどころ)で使うアルミ箔(はく)の100分の1ぐらいね。お酒に入れる金箔も、ふつうは1升(しょう)(1.8リットル)あたり80分の1グラムほど。見た目の華(はな)やかさほど量(りょう)は多(おお)くないのよ。
◇ののちゃん 少(すこ)しでも体(からだ)の中に入ると悪(わる)いんじゃないの。
◆先生 金は金属のなかでも特(とく)に変化(へんか)しにくく、長(なが)い間(あいだ)放(ほう)っておいてもさびないし、ふつうの薬剤(やくざい)では溶(と)けないわ。だから、金箔が体(からだ)の中で溶(と)けたり消化(しょうか)されたりすることはないでしょうね。そのまま体の外(そと)に出ていくから、体に悪いこともよいこともないはずよ。
◇ののちゃん じゃあ、どんなにたくさん食べてもいいの?
◆先生 日本では昔(むかし)から金箔をお酒や料理(りょうり)の飾(かざ)りに使(つか)ってきたけど、体に悪い影響(えいきょう)が出た例(れい)は知られていないそうよ。法律(ほうりつ)でも食品添加物(しょくひんてんかぶつ)として使ってよいと認(みと)められているの。ただ、それは「いままでのような使い方ならば」というのが前提(ぜんてい)よ。金箔はたまに少しだけ口に入れるものだから、一日にどれだけなら食べてもよい、という量はきちんと調べられていないの。どんなものでも食べ過(す)ぎは体によくないわ。
◇ののちゃん お酒に入っているぐらいなら、気にしなくていいんだね。
◆先生 金箔屋さんも、食べる金箔は、混ざりものがないように特に気をつかっていて、工芸用(こうげいよう)の金箔とは別(べつ)に作っているのよ。ところで、金を使ったお薬(くすり)があること知ってる?
◇ののちゃん 何それ?
◆先生 金を特殊(とくしゅ)な薬剤で溶かして反応(はんのう)させた化合物(かごうぶつ)のなかには、関節(かんせつ)が痛(いた)くなるリウマチという病気(びょうき)の薬になるものがあるの。注射(ちゅうしゃ)薬や飲み薬として、実際(じっさい)の治療(ちりょう)に使われているわ。
◇ののちゃん へえ。金の薬なんて、高くて効きそうだね。
◆先生 そもそも、人間(にんげん)が生きていくのに欠(か)かせない金属もあるのよ。たとえば体重(たいじゅう)70キロの人の体内(たいない)には、約(やく)6グラムの鉄(てつ)と約2グラムの亜鉛(あえん)が化合物の形(かたち)で含(ふく)まれていて、足(た)りなくなっても、多すぎても体の具合(ぐあい)が悪くなるわ。
◇ののちゃん ほどほどが肝心(かんじん)なんだね。
(取材協力=桜井弘・京都薬科大教授、堀金箔粉ほか、構成=安田朋起)
(朝日新聞社発行 6月23日付be)
◇調べてみよう
(1)金は、飾(かざ)りのほかに、身(み)の回(まわ)りのどんなものに使われているかな。
(2)食器や腕時計など、金属を口の中に入れたり、身につけたりすることは意外(いがい)と多い。何にどんな金属が使われているだろうか。