現在位置:asahi.com>教育>NIE>ののちゃんのDO科学> 記事 ![]() 樹液は何の役に立つの?栃木県・木佐美萌衣さん(高1)からの質問
◇ののちゃん 早(はや)く夏(なつ)にならないかなあ。今年(ことし)こそ、カブトムシを捕(つか)まえたいの。 ◆藤原先生 クヌギやコナラの木(き)を探(さが)すと見(み)つかるかもしれないわよ。カブトムシは、そういう木の樹液(じゅえき)が大好(だいす)きなの。樹液というのは、簡単(かんたん)にいえば木から出(で)る液体(えきたい)のことよ。 ◇ののちゃん カブトムシにえさをあげるなんて、木ってやさしいんだね。 ◆先生 木が樹液を出すのは昆虫(こんちゅう)にサービスするためじゃなくて、けがをした自分(じぶん)の体(からだ)を守(まも)るためらしいよ。昆虫が樹液に集(あつ)まっているところをよく見てごらん。きっと、木の幹(みき)がちょっと傷(きず)ついているはずよ。樹液に含(ふく)まれるテルペン類(るい)などの物質(ぶっしつ)には、木の傷口(きずぐち)をふさいだり、木に病気(びょうき)を起(お)こす菌(きん)をやっつけたりする効果(こうか)があるそうよ。 ◇ののちゃん 樹液はお薬(くすり)なんだね。苦(にが)くないのかなあ。 ◆先生 クヌギなどの樹液に含まれている多糖類(たとうるい)は、お砂糖(さとう)のなかまなので甘(あま)いのよ。カブトムシだけじゃなくて、クワガタムシやチョウ、ハチなど、いろんな虫(むし)が樹液の出ているところに集(あつ)まってくるわ。 ◇ののちゃん 丈夫(じょうぶ)そうに見える木が、なぜ傷つくの? ◆先生 昆虫が穴(あな)をあけることが、けっこう多(おお)いそうよ。カミキリムシやガのなかまなどが卵(たまご)を産(う)むの。強(つよ)い風(かぜ)で枝(えだ)が折(お)れたり、幹がこすれあったりして傷つくこともあるみたいね。 ◇ののちゃん そういえばマツの木を傷つけたら、ねばねばしたものが出てきた。 ◆先生 松(まつ)ヤニね。空気(くうき)にふれると粘(ねば)り気(け)が強(つよ)くなって、やがて固(かた)まるわ。松ヤニも樹液の一種(いっしゅ)だけど、固まると樹脂(じゅし)といわれるわ。松ヤニはいろんなところで利用(りよう)されているのよ。 ◇ののちゃん どんなふうに使(つか)われているの? ◆先生 野球選手(やきゅうせんしゅ)が使うロージンバッグという白(しろ)い袋(ふくろ)には、松ヤニの粉(こな)が含(ふく)まれていて手(て)のすべり止(ど)めになるの。松ヤニは紙(かみ)のにじみ止め剤(ざい)や塗料(とりょう)などにも使われているわ。 ◇ののちゃん ほかにも役(やく)にたつ樹液はあるのかな。 ◆先生 漆塗(うるしぬ)りのおはしやおわんは、ウルシの樹液でつくった塗料を使っているの。ゴムも最近(さいきん)は工場(こうじょう)でつくった合成(ごうせい)ゴムが多(おお)いけれど、むかしは、熱帯(ねったい)にあるゴムノキの樹液を集(あつ)めた天然(てんねん)ゴムが使われていたのよ。 ◇ののちゃん 樹液を飲(の)んだり、食(た)べたりできるの? ◆先生 春先(はるさき)に幹に穴(あな)をあけ、水(みず)の通(とお)り道(みち)に管(くだ)をさして集めるシラカバの樹液があるわ。糖類やミネラルが含まれ、飲みものとして売(う)られているの。北海道(ほっかいどう)では町(まち)おこしに使われているんだって。ほかにも、飲みものではないけれど、ブドウの樹液は化粧水(けしょうすい)などに使われているわ。 ◇ののちゃん そんなに役だってるなんてびっくり。 ◆先生 ホットケーキにメープルシロップをかけたことないかしら。春先(はるさき)にサトウカエデの樹液を集めて煮詰(につ)め、含まれている糖類を濃縮(のうしゅく)したものよ。カナダ産(さん)が有名(ゆうめい)ね。とっても甘くておいしいから大好(だいす)きだわ。 ◇ののちゃん あーっ、先生も虫さんたちと同じだあ。 (取材協力=森林総合研究所の大平辰朗樹木抽出成分研究室長と中牟田潔研究情報科長、構成=米山正寛)
(朝日新聞社発行 5月28日付be)
|