指回し体操を披露する栗田昌裕氏=東京都文京区、東川哲也撮影
哲学者カントは「手は外部の脳」と言ったという。手には、感覚神経と運動神経が集中している。その手の訓練は、脳の訓練と同じ。「指回し体操」は、そんな発想から生まれた。
まず、両方の指の先端同士をくっつける。親指は親指と、人さし指は人さし指と。指の関節は伸ばさず、曲線になるように柔らかく曲げる。両手でドーム形を作る感じだ。そして親指だけ離し、2本の指がぶつからないように、30秒間回す。人さし指、中指と、それぞれ30秒ずつ。回す向きは、どちらでも構わない。
「指回し体操」の基本は、これだけ。簡単さからテレビ番組などでも紹介された。
考案したのは、東京都の内科医栗田昌裕さん(57)。栗田さんは、主宰する「SRS研究所」(東京都文京区)で速読法を教えている。20年前、速読が苦手な人は手先が不器用ではないか、と感じたからだ。「目の力と手の力、そして脳の力は連動しています」
ポイントは、指と指がぶつからないようにすること。これが意外に難しい。特に薬指は、慣れないと指がつりそうになる。回す指だけでなく、全体のドーム形を崩さないように同時に気をつかうことも、脳を刺激するという。
栗田さんは91年から、指回し体操を教えた2万人からデータをとり、独自に効果を確かめている。体操の前後では、迷路の早抜け(認知機能)、計算力、読書速度が1〜3割上がったとしている。「うまく回るかどうかで、体調のチェックにもなります」と話す。
指体操は、このほかにもたくさんある。自分にあった方法を見つけ、ストレス解消、リフレッシュにつなげよう。(原田朱美)
●足指バージョンも
指の体操は、名古屋市が市民向けにつくった「なごや健康体操」に盛り込まれるなど広く取り入れられるようになった。脳卒中などのリハビリのほか、ピアノやギターの技能向上のために考案されたものもある。ソロバンなど道具を使う例や、足指バージョンも。
「指回し体操」の詳細は、栗田さんの著書「脳と体に効く指回し教室」(廣済堂出版)などで紹介されている。
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