江戸川区立第六葛西小学校・児玉久美子さん
2010年9月13日
タラコの粒々を数える子どもたちを見守る児玉先生=東京都江戸川区、福岡亜純撮影
2かたまりのタラコを見せ、児玉先生が「何粒の卵があるか数えよう」と言うと、「えーっ」「5万個ぐらい?」。5年1組の理科の授業で歓声が上がった。
魚はたくさんの卵を産むが、成魚まで育つのはわずか。自然界のダイナミズムを学ぶため、数えて体感してもらおうというのだ。
「このタラコは、スケトウダラの卵巣です」。大画面に魚の写真を映して見せながら、「体長80センチくらいの魚。卵巣は二つなので、タラコの2かたまり分が1匹の産む卵の量です」と話した。
まず、効率よく卵の数を調べる方法を考えた。みんなは、1グラムあたりの数を数え、2かたまり分の重さ92・4グラムをかければ、全部の卵の数が出ると推測。1グラムのタラコをさらに小さく分けて、10班で分担した。「こんな小さな卵から魚が生まれるなんて」。子どもたちは目を凝らし、針で卵の粒々を数えていく。集計すると1グラム1495個。全体の重さをかけると、1匹のスケトウダラが産む卵は13万8138個に。「産んだらすごい数になるよ!」
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続きの授業では、魚によって産卵数が違うことを学び、なぜ違うのか討論で深めた。先生はいろいろな魚の体長、主な生息場所、平均的な産卵数などを説明した。
マンボウ(海) 約2億8千万
ブリ(海) 約150万
フナ(川・池) 約9万
アイナメ(海) 約6千
トゲウオ(小川) 約100
マンボウの体長は約3メートル。トゲウオ科の、たとえばイトヨは約8センチ。「トゲウオはマンボウみたいに大きくないから、あまり卵を産めないのでは」「トゲウオは卵巣が小さいと思う」。体の大きさに注目する子たちがいた。
次に出たのは「天敵説」。ある女の子は「もし、敵が少ないのにマンボウみたいに3億個も産んでいたら、海の中がマンボウだらけになってしまう」と言い、海は天敵が多く、生き残るのが大変だと推測した。産卵数の少ないトゲウオについては、「小川は敵が多くないのでは」「トゲで守られているからいっぱい産まなくてもいいのでは」などの見方が出た。
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意見を交わした後、先生は魚の親の育て方の説明をした。マンボウやブリは水中に産みっぱなし、アイナメの親は卵を守る、トゲウオの仲間の多くは巣を作って卵を産み、子育てをする。
さらに、卵の仕組みについても注目した。「マンボウやブリの卵はウキがあり、海面に浮かんでいるので空から見えてしまう。そうするとどう?」。先生が聞くと、「鳥に食べられてしまう」。
「フナやアイナメ、トゲウオの卵はねばねばして藻にくっつくので、藻のところで孵化(ふか)できます」と説明し、産卵数の違いは、環境や親の育て方、卵の仕組みなどが関係していることを確認した。
男の子が「人間もたくさんの精子がいても、卵にたどり着けるのは1匹だけ」とつぶやいた。
5年1組はこれまで、「動物のたんじょう」の単元でアジの解剖をし、卵巣や精巣を調べ、サケの産卵や受精、カエルや馬の交尾や受精についても学んできた。
つぶやきに、先生は「何億分の1の確率で、あなたが生まれたのよ」。(山根由起子)